INFORMATION No.20016−1
平成20年12月

●  クォンティフェロンTB−2G (QFT−2G)

  人が結核菌に感染すると、体内のTリンパ球がその情報を記憶して再び結核菌あるいは結核菌と同様な抗原が体内に侵入した時に、インターフェロンγという物質を産生します。
クォンティフェロンTB−2G(QFT−2G)は、結核に特異的なESAT−6 、CFP−10という蛋白を抗原として全血中のエフェクターTリンパ球(感作白血球)を刺激し、その結果放出されるインターフェロンγを定量する検査です。
これまで、結核を発病していない人において、結核菌に感染したことを検出する方法としてはツベルクリン反応(以下、ツ反)が長年用いられてきました。

この方法は、BCG未接種者においては感度、特異度ともに高く基本的には優れていますが、ツ反に用いるPPDの成分がBCGにも含まれているため、BCG接種を受けた人はツ反に反応してしまい、その反応がBCG接種によるものか、最近受けた結核菌感染によるものかが区別できないという問題がありました。

一方、QFTに用いられる ESAT−6 、CFP−10は、結核菌群と一部の非結核性抗酸菌には存在していますが、BCGには存在しないため、ツ反に見られたBCGの影響は受けません。

また、非結核性抗酸菌症中もっとも多い原因菌種であるMAC( M.avium,M.intracellulare )にもこれらの抗原は存在していないため、QFTでは反応しません。

QFTの感度は 89.0%、特異度は98.1%と報告されており、QFTはBCGの影響を受けず感度よく結核菌感染の有無を診断できる検査といえます。

QFT の有用性

◆ 潜在性結核感染症の診断補助

•  接触者健診
結核患者が発生し、その接触者に感染が疑われる場合、その中から「潜在性結核感染者」を発見し、その治療により結核発病への進展を防止する目的で行われます。

平成19年4月1日に施行された改正感染症法により潜在性結核感染症(=結核の無症状病原体保有者と診断され、かつ結核医療を必要とする場合)が結核の届出の対象となりました。

また、平成 19年6月7日付け健感発第0607001号によりその検査方法としてQFTが追加されています。

•  医療関係者の結核管理
従来の二段階ツ反検査と患者接触時のツ反検査では正確に感染を判断できないため、QFT検査が推奨されます。

◆ 活動性結核の診断補助

X線所見や喀痰塗抹標本で結核を確定できず、他の臨床所見等で結核を疑う場合の補助診断にも有用です。

QFT検査における注意・補足事項

•  QFT検査で陽性となっても、過去の感染か最近の感染かの区別はできません。また、活動性結核を診断することはできないため、補助診断としてご利用ください。
•  免疫抑制状態ではT細胞がインターフェロンγを産生する能力が低く、「判定不可」となる可能性があります。
また、 80〜90歳以上の超高齢者では、全般的な免疫応答性が低下しているためQFT陽性率が下がることがあります。
•  小児に対しては十分なエビデンスがないため、日本結核病学会予防委員会指針では以下のような取扱いになっています 。
5歳以下・・・QFT検査の適応から除外されている。ツ反を優先する。
12歳未満・・・全般に応答は成人よりも低めに出ることを念頭において、結果を慎重に解釈する必要がある。
•  感染曝露後QFTが陽転するまでの期間については、8〜10週間程度と推定されることから、接触者健診については原則として感染性結核患者との最終接触から8週間以上経過後に検査します。
•  QFTは非結核性抗酸菌症で最も多いMAC感染では陽性になりませんが、 M.kansasii 、M.marinum など一部の非結核性抗酸菌およびハンセン病の原因菌である M.leprae では結核菌と同様の反応を示します。
•  QFTはリウマチ治療薬「レミケード」、「エンブレル」投与前の結核菌感染の有無の確認においても有用です。

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