消費税は法人税などと比べて景気に左右されにくく税収として安定しているが、低所得者ほど負担が大きい“逆進性”の問題が常に指摘されている。今回の増税では「軽減税率制度」をはじめその他対策(下表参照)が採られてはいるが、品目によって税率が異なることや同時に「キャッシュレス決済に対するポイント還元制度」の対象となる場合もあり、消費者にとって混乱は避けられない。 なお、「軽減税率制度」については期限は設けられておらず、政府内では仮に消費税率を10%超へ引き上げる場合でも、8%の税率は据え置くべきとの意見もあり、今後の見通しは不透明だ。 |
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■平成28年度補填状況調査 さらに平成28年度のサンプル調査でも右表のように補填率が100%を下回る結果となっており、日本医師会の中川俊男副会長は同分科会で補填不足の状態が4年以上経過していること、昨年分かれば平成30年の診療報酬改定で何らかの対応ができたのではと指摘し、分科会の検証の場としての信頼性と存在意義への疑義をも示している。 |
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○病院への補填、ばらつきの是正へ 以上のとおり、平成26年度診療報酬改定への対応には全体の補填不足と特に病院間でのばらつきが大きいことから、入院基本料や特定入院料等を分類し、診療報酬にきめ細やかな配分を行い、改善を図ることになった。 平成30年12月に自民党・公明党が公表した「平成31年税制改正大綱」を受け、診療報酬での精緻な補填と設備投資への支援措置に、日医は「現時点において全体で医療に係る消費税問題が解決」との見解を示したが、病院団体は一定の評価を与えつつも、根本的な解決に至っておらず今後も引き続き議論が必要であることを訴えている。 その後の予算案をめぐる大臣折衝では、今回の増税(消費税10%)に伴う診療報酬の改定率が本体+0.41%と決定され、具体的な財源の配分方法を中医協で検討した結果、ばらつきが大きかった補填分(消費税5%→8%)を一度リセットし、増税に伴う改定分として、病院で約3,000億円、診療所で約1,000億円が配分されることとなった。 |
「控除対象外消費税問題」に対しては前回増税時と同様、診療報酬に補填されたが、無論、この問題は医療機関によって金額が異なるために正確に補填することは不可能である。この方法に限界があることは以前より指摘されてきたが、医療界では次のように引き続き問題解決に向けた動きを続けている。 @三師会、四病院団体協議会は新たな仕組みを提言 平成30年8月、三師会※1と四病院団体協議会※2は、控除対象外消費税問題の解消に向けた医療界全体の要望として、「控除対象外消費税問題解消のための新たな税制上の仕組みについての提言−消費税10%への引き上げに向けて−」を取りまとめた。(提言された仕組みは次のとおり。)〇診療報酬への補填を維持した上で、個別の医療機関等ごとに診療報酬本体に含まれる消費税補填相当額と、 個別の医療機関等が負担した控除対象外仕入れ税額を比較し、申告により補填の過不足に対応 〇診療報酬への補填については、消費税10%への引き上げ時に医療機関等種類別の補填のばらつきを 丁寧に検証・是正し、その後 の診療報酬改定でも必要に応じて検証・是正を行う 〇適用対象は、消費税および所得税について実額計算で申告を行っている医療機関等の開設者 A四病院団体協議会が原則課税を求める方針へ転換 令和元年8月、四病院団体協議会は社会保険診療等の非課税を見直し、原則課税を求める方針を明記した「2020年度税制改正要望書等」を厚生労働省に提出。@の要望では、医療界で一致した要望として非課税のままで新たな仕組みの創設を求めたが、「平成31年度税制改正大綱」で診療報酬の配点方法を精緻化することで医療機関の補填のばらつきの是正を求める方針などが提示されたため、「非課税での対応案では個々の医療機関の仕入れ税額が考慮されておらず、税負担の不公平性を解消できない」として、原則課税へ方針を切り替えている。 ※1三師会…日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会 ※2四病院団体協議会…日本病院会、日本精神科病院協会、日本医療法人協会、全日本病院協会 |
医療情報室の目
★消費税だけに頼らない医療全体のあるべき姿を
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