○医師臨床研修制度の創設からこれまで 医師臨床研修制度は、いわゆるインターン制度の廃止とともに、1968年(昭和43)年に創設された制度で、医師国家資格を取得した医師は、2年間の臨床研修を通じて、「基本的な診療能力」を養うことが基本理念として掲げられた。しかし実際には、当時の臨床研修は大部分が大学病院で行われ、プライマリ・ケアの初診症例の確保が困難なうえに、臨床研修自体も「努力義務」の扱いに留まっていたことなどから、2004年(平成16)に臨床研修制度の仕組みが大幅に見直され医師国家資格を取得した医師は、2年以上の臨床研修(初期臨床研修)が義務化されるとともに、研修先の病院を自由に選べるようになり、研修医と研修病院の希望から最適な組み合わせを実現するマッチングシステムも導入された。 |
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○研修医の偏在化 しかし、2004年の制度改正を機に、地域病院の医師不足が指摘されるようになる。それまで、大学病院は地域の医療機関に医局所属の医師を派遣し(図1)、地域間の医師数の調整を行ってきたが、研修医が研修先の病院を自由に選択できるようになったことで、医局の研修希望者が減少し、従来通りの派遣が困難となった。なお、日医が2008年(平成20)に実施した医師偏在・医師不足に関する緊急アンケート調査によると、全国の約6割の医局が新制度の導入を機に医師派遣の中止・休止を実施したとの結果が出ている。 |
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○厚生労働省の対策 マッチングシステムの導入後、研修医の研修施設への募集定員が研修希望者の1.3倍を越える規模まで拡大し、研修医が一部地域に集中したことから、厚生労働省は2010年(平成22)より各都道府県別の募集定員上限を設定し、2015年(平成27)には1.22倍まで縮小した。 しかし、図2からも分かるように研修医採用率は、一部の都道府県での平均採用率が高く、未だに都道府県間で差が大きい。なお、この偏在を解消するため、医師臨床研修制度は、「募集定員の倍率を下げるための定員上限を設定」、「国が一定の基準等を示した上で、臨床研修病院の指定・募集定員設定を各都道府県が状況に応じて行える仕組み等の構築」といった見直しを2020年に予定している。 |
図1 |
図2 |
○旧専門医制度から新専門医制度へ 医師は、2年間の初期臨床研修を受けた後、各分野の専門医資格の取得を目指すことが多い。従来の専門医制度は、各分野の学会が独自に認定することで専門医資格を取得する仕組みとなっていたが、中には比較的容易に認定される資格もあり、専門医の質のばらつきが問題となっていた。さらに、2002年(平成14)より専門医資格の広告掲載が可能となったことで、専門医資格の種類が102種類にまで細分化され、国民にとって分かりにくいという問題点も指摘されていた。そこで厚生労働省は、2011年から「専門医の在り方」について検討を重ねた結果、乱立する専門医資格の認定基準を統一するために、第三者機関である「日本専門医機構」を新たに設立し、2017年度から新制度をスタートすることを決定した。 ○新専門医制度の開始に「待った」 しかし、新専門医制度の開始は一年先送りされ、2018年(平成30年)からのスタートとなった。専門医の資格を取得するには「専攻医(旧:後期研修医)」として、大学病院などの基幹病院やその連携病院で3年以上の研修を受ける必要がある。だが、専攻医は、研修を指導する医師(指導医)や設備が充実している都市圏の大学病院等に集中し、研修終了後もそのまま都心部に定着しかねないため、日医や各病院団体が、医師の地域偏在を今以上に悪化させる可能性があるとして、拙速な新制度導入を避け、地域医療に支障が出ないように制度を見直すよう求めたためである。 実際に、日本専門医機構が調べた今年度の専攻医の採用数をみると、全体の21.7%に当たる1,825人が東京都内の医療機関に集中しており、次いで大阪・神奈川・福岡と大都市圏に偏っている結果となっている。 |
医療情報室の目
★医師養成課程を通じた医師偏在対策
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