医療情報室レポート
No.222

2018年1月26日発行
福岡市医師会医療情報室
TEL852-1505・FAX852-1510
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特集:『医療広告』改正の概要とポイント
   〜 医療機関のウェブサイト(ホームページ)も“広告”に! 〜

  昨今、美容医療サービスを中心に、インターネットでの情報提供等を契機として消費者トラブルが発生するなど、医療広告のあり方に関する問題が指摘されている。これらの問題を背景に、昨年6月の医療法改正において「医療機関のウェブサイト」等も規制の対象に加え、不適切な情報提供を行っている医療機関には中止・是正命令及び罰則を科すことなどが決まった。
 これらの改正を踏まえ、昨年11月に、厚生労働省の「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」が、新たな省令と医療広告ガイドラインの案をとりまとめており、今月行われているパブリックコメントの結果等を経て、今年6月1日までに施行される予定である。
 今回の医療情報室レポートでは、現時点で示されている新ガイドラインの概要や留意すべきポイント等を紹介し、今後の医療広告のあり方について考えてみたい。

●医療広告規制の現状とこれから

○「医療広告ガイドライン」と「医療機関ホームページガイドライン」

  医療は、人の生命・身体に直接関わる極めて専門性の高いサービスであるため、「医療広告ガイドライン」によって、医療機関等が提供する 広告を厳格に規定している。一方、医療機関等が開設する「ウェブサイト」については、医療広告とは見なされず、別途、「医療機関ホーム ページガイドライン」においてルールが定められているが、これは、今回の医療広告をめぐる法改正により廃止されることとなっている。
 ガイドライン(現行)  概 要  規制の対象
   広告可能事項、広告禁止事項、広告規制の対象範囲などを具体的に定めたガイドライン。医療法に基いた内容であるため、本ガイドラインに違反した場合、罰則が科せられる。
 
   医療機関が提供するウェブサイトにおいて、患者に誤解を与えたり、不正確な情報等を提供しないように定めた「指針」。本ガイドラインに従わなくても罰則は科せられないが、今回の医療法改正によりウェブサイトも医療広告の規制対象となることが決まったため、本ガイドラインは今年6月の改正法の施行までに廃止されることが決定している。
なお、インターネット上のバナー広告や検索結果に連動するスポンサー表示等は、@誘引性、A特定性、B認知性の3要件に該当する場合は、規制対象となる。
 
  

●医療広告に関する法改正のポイント

○ウェブサイトやメールマガジン等も規制の対象に
 医療広告とは、@誘引性、A特定性、B認知性の3要件を満たすものとして定義されているが、ウェブサイトに関しては、「自らサイトを探す」という能動的な行動が伴い「認知性」の要件が当てはまらないため「広告」としては扱われていない。
 しかし昨今、ウェブサイトの虚偽・誇大表現等による患者トラブル等が多発していることなどから、今回の改正で、「認知性」の要件が外され、ウェブサイト等も規制の対象に加えられることとなった。(右図)
 
<新たな規制対象として加えられるもの>

 「ウェブサイト」、「メールマガジン」
 「患者等からの申し込みによる詳細なパンフレット」など
 
 
○「広告可能事項」の限定解除
 当初、ウェブサイト等も現行の「医療広告」のような厳格な扱いにするとの議論があったが、そのような措置にした場合、治療に必要な情報までもが遮断され、患者の意思決定が阻害されてしまう。そのため、患者が自ら情報を入手するウェブサイト等の情報については、医療機関の問合せ先を明確にしておくなど一定の要件を満たしている場合は、「広告可能事項」の限定を解除できることとされている。
 

●広告禁止事項の新たな取扱い

○「客観的事実」が証明できない事項の取扱いについて
 例えば、国内未承認の治療薬の効果など「客観的事実」が証明できない事項については、広告禁止事項には規定しない(=省令に規定しない)が、患者の受診を不当にあおるものは、虚偽・誇大に該当するものであることをガイドラインで示す。

○患者体験談、術前術後(ビフォーアフター)写真
 著しい誤認を生じさせることにより、患者の適切な医療の選択を阻害するおそれがあるため、誘引性があるものは原則として広告禁止。ただし、写真やイラストのみをならべ説明が不十分な場合なものは禁止する一方、術前術後の写真に「詳細な説明を加えたもの」は禁止しない。

○比較優良の考え方の明確化
「日本一」などの最上級を意味する表現は、引き続き禁止するが、それ以外の比較優良表現については、必ずしも客観的な事実の記載を妨げるものではないことを明確化する。ただし、その場合は、求められれば裏付けとなる根拠を示し、客観的に実証できること。
 

●医療機関ネット・パトロールの開始

 
  昨年8月から、医療機関ウェブサイトの虚偽・誇大広告等の取り締まりに向けて、インターネット上でパトロールが行われている。このネット・パトロールは、厚生労働省から委託を受けた日本消費者協会が、不適切な表示や表現を掲載している医療機関等のウェブサイトを常時監視するものであるが、一般からの通報も受け付けており、事業の開始から約1ヵ月間で、279件の不適切と思われる事例が把握されている。問題があった医療機関には、自治体等と連携し個別に改善を求めることとなっているが、改正法の施行後は監視体制が強化される可能性も否めないため、早急に、新省令・新ガイドラインに沿った対応を進めておく必要があるだろう。
 なお、現在、ネットパトロールの事務局になりすました迷惑メールや問い合わせが、医療機関に送られている事例が判明しており、同事務局や厚生労働省、日本消費者協会が、直接、医療機関にメールやメッセージを送ることはないとして注意を呼びかけている。
 

医療情報室の目

★新法の施行に備え、いま一度ウェブサイトの確認を。
 

 これまで、ウェブサイトによる広告は、一般人が認知できる状態である「認知性」を有していないため「広告」に該当しないものとして扱われてきた。しかし、いまやインターネットは、テレビやラジオ等のメディア以上に生活の中に浸透しており、私たちは、高度な検索機能を活用して目的とする情報に瞬時にたどり着くことができる。昨年9月、健康保険組合連合会が公表した「医療に関する国民意識調査」の結果によれば、医療機関を選ぶ際にインターネットの情報を調べる人は45%にのぼり、そのうち半数が、当該医療機関のウェブサイトを確認するということである。さらに、昨年8月から、医療機関のウェブサイトを監視する「ネットパトロール」事業が始まった。本事業では、ウェブサイトに不適切な表示や表現を見つけた国民からの通報も受け付けており、開始から1ヵ月間で、特に美容医療の分野において279件の事例が審査されたそうであるが、新法が施行された後はウェブサイトも罰則の対象となるため、医療機関においては、早急に、新省令・新ガイドラインに沿って、薬機法違反、虚偽・誇大表示、不適切表示等がないように対応を進めていく必要があるだろう。
 いずれにしても、医療機関のウェブサイト上で提供される情報は、患者の意思決定の支援に役立つ反面、誤った情報や誇張した表現を提供すれば、患者とのトラブルや医療機関に対する不信感を招くことになりかねない。ウェブサイトの管理を業者に委託している医療機関も少なくないと思われるが、まずは、今回の改正法の内容を十分把握し、6月からの施行に備えるとともに、今後も、医療広告をめぐる議論や規制の動向に目を向けておかなければならない。

編 集  福岡市医師会:担当理事 庄司 哲也(情報企画担当)・岡本 育(広報担当)・一宮 仁(地域医療担当)
 ※ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡ください。
(事務局担当 情報企画課 柚木(ユノキ))
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