○創設の背景と歴史 現在、我が国の国民健康保険は全国1,717の市町村が運営し、国民の4分の1にあたる約3,500万人が加入している。 国民健康保険は、もともとは農村社会の不況対策として始まったが、当時、国民の約3分の1にあたる3,000万人が保険を有していなかったため、これらの無保険者を救済するために全国の市町村に国保の設立が義務づけられ、1961年に完全普及を果たした(国民皆保険の達成)。 ○構造的な課題 しかし、創設から50年余りが経過し、様々な課題が顕在化している。 現在、市町村国保の加入者は、職業構成の変化とともに年金受給者や非正規雇用者の割合が増加しており、それに伴って保険料収納率も低下している。(図1、図2)その結果、約6割の市町村が、一般会計すなわち税金から繰り入れをして赤字を埋めており(法定外繰入金)、単年度の国保の繰り入れ総額は3,500億円にまで上っている。 また、全市町村のうち約1/4は、加入者数が3,000人にも満たない小規模保険者であるため、高齢化や産業構造の変化等の影響を受けやすいうえに、財政的なリスクを分散しにくいという問題を抱えている。 さらに、医療費や保険料の同一都道府県内の市町村間格差も従来から指摘されている課題で、一人あたり保険料の格差が最も大きいとされている長野県では、その差は3.7倍にも及ぶ。 このように、市町村国保は、保険者が市町村単位であるという特徴ゆえに、構造的な課題を抱えている。 |
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前述の市町村国保が抱える構造的問題を解決するため、平成27年5月に成立した医療制度改革関連法において、平成30年度(2018)から、都道府県が市町村と共同で国民健康保険を運営する新たな体制に移行することが決定した。具体的な制度改定の内容については、2016年4月28日に、国からガイドライン及び策定要領が示されたが、大きなポイントは、都道府県が国保運営の責任者となって、安定的な財政運営や効率的な事業運営等の舵取りを担い、各市町村は、都道府県が示した方針に沿って、これまで通り、保険料の賦課・徴収や資格管理等の実務作業を行うという点である。 |
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@公費による財政支援の拡充 平成27年度から低所得者対策として毎年1,700億円を投入。平成30年度からは、財政調整機能の強化等を図るため、さらに1,700億円を積み増し3,400億円を投入する。(一人あたり約1万円の財政改善効果を見込む) A運営の在り方の見直し ・都道府県が、財政運営の責任主体となり、市町村ごとの標 準保険料率を算定、公表する。 ・市町村は、資格管理、保険給付、保険料率の決定、賦課・ 徴収、保健事業等、地域におけるきめ細かい事業を引き 続き担う。 B新たな国保財政の仕組み ・都道府県が、保険給付に必要な費用を全額、市町村に支 払う。 ・市町村は、都道府県が決定した納付金を都道府県に納付 する。 C保険者努力支援制度の創設 ・平成30年度から、国における保険者に対する予防・健康づ くり等のインセンティブの見直しの一つとして開始される。 |
医療情報室の目
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