医療情報室レポート
No.214

2016年12月16日発行
福岡市医師会医療情報室
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特集:平成28年をふりかえって

 平成28年は、イギリスのEU離脱問題やアメリカ大統領選のトランプ候補の勝利、また国内においては小池百合子東京都知事の誕生、築地市場の豊洲市場への移転延期発表など、世間の予想を超える出来事が相次いだ一年だった。また、災害については、2回の震度7を引き起こした「熊本地震」や、かつてない異例の進路を辿った「台風10号」などにより多くの人命や家財が奪われたが、いずれも、これまでの自然に対する通説を覆すような事象だったといえる。 
 一方、明るいニュースに目を向けてみると、8月に開催されたリオデジャネイロ五輪で、日本は史上最多の41個のメダルを獲得、また、ノーベル生理学・医学賞を大隅良典氏が受賞したことで、日本人の受賞が3年連続となるなど、未来への希望が持てるような話題もあった。
 今回は、毎年恒例の特集である今年1年の出来事をまとめ、“平成28年をふりかえって”みた。

●平成28年の主な出来事

医師会関係 厚生・行政関係 トピックス


・日医会員数16万7,029人(2015.12.1付)、前年比908人増、過去最高を更新
・日医、「第4回赤ひげ大賞」表彰式開催
・市医、次期役員等選挙を実施
・「南区医師会40周年記念式典・祝賀会」開催
・社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)始まる
・厚労省、人口動態推計(2015)を公表。出生数100万8千人で前年比4千人増となり、5年ぶりに増加
・厚労省、血液製剤等の不正製造問題で化血研に110日間の業務停止命令
・2015年の医療機関の倒産件数は25件。前年比4件減で減少傾向が続く
・2015年の全国の自殺者数は2万3,971人、前年より1,456人(5.7%)少なく6年連続減少
・第154回直木賞に青山文平氏の「つまをめとらば」、 第154回芥川賞に滝口悠生氏の「死んでいない者」、 本谷有希子氏の「異類婚姻譚」が選出される
・奄美大島で115年ぶりに降雪を観測
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・日医、日本航空と提携し「JAL DOCTOR登録制度」を開始 ・厚労省、高齢者虐待等の調査結果を公表。2014年度の介護従事者等による虐待が過去最多の300件となる ・WHO、ジカ熱の流行について緊急事態を宣言
・環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加12ヵ国が署名
・マイナス金利導入


・市医、「第5回慢性腎臓病(CKD)市民公開講座」を天神スカイホールにて開催。参加者382名 ・第110回医師国家試験合格者は8,630人。合格率は前回から0.3ポイント増の91.5%
・2015年の救急出動状況、前年比約6万件増の605万1,168件となり過去最多
・安全保障関連法が施行、日本が直接攻撃されなくても集団的自衛権による武力行使が可能となる
・東日本大震災から5年
・ベルギーブリュッセル空港で爆発テロが発生
・北海道新幹線が開業


・日医、「平成28年熊本地震」の発生を受けてJMATの派遣を開始
・日医、新キャラクターの募集開始
・「日医かかりつけ医機能研修制度」開始
・市医、福岡県医師会診療情報ネットワーク(とびうめネット救急医療支援システム)へ参画
・福岡市急患診療センター・急患診療所診療体制変更。 センターは土曜日の小児科診療開始時間を19時から17時へ変更、博多・城南・西診療所は 小児科標榜廃止し内科のみ標榜に変更
・診療報酬改定、改定率本体0.49%、薬価等-1.33%、全体で-0.84% ・熊本地方で震度7の地震が2度にわたり発生
・エクアドルでM7.8の地震発生
・改正電気事業法が施行、電力完全自由化


・「日医かかりつけ医機能研修制度」平成28年度応用研修会開催
・政府、「2016年版高齢社会白書」閣議決定。65歳以上高齢者人口は、3,392万人(全人口の26.7%)で過去最高 ・「パナマ文書」公開
・第42回先進国首脳会議(伊勢志摩サミット)開催
・バラク・オバマ米大統領が広島を訪問

・日医、全国規模の地域医療ネットワーク等の構築を目指す「日医IT化宣言2016」を発表
・日医、第3期横倉 義武執行部スタート
・県医、第4期松田 峻一良執行部スタート
・市医、第9回定例代議員会開催。長柄 均新会長による執行部がスタート
・安倍首相、消費税8%から10%への引き上げを平成29年4月から31年10月に2年半再延期することを表明
・選挙権年齢を18歳以上とする公職選挙法が施行
・JTBで個人情報約800万件が流出
・北海道南部の内浦湾付近を震源とする地震が発生。函館市で震度6弱を観測
・国民投票51.9%でイギリスEU離脱を選択


・日医、産業医・学校医等の日医医師賠償責任保険の補償を拡充
・市医、会員数2,500名を突破
・2015年の日本人平均寿命は男性80.79歳、女性87.05歳でともに過去最高を更新
・日本専門医機構、新専門医制度の実施を延期し、平成30年4月からのスタートに方針を転換
・第24回参議院選挙実施。日本医師連盟組織内候補の自見はなこ氏が自民党比例代表獲得議席19議席中党内9位で当選を果たす
・第155回直木賞に荻原浩氏の「海の見える理髪店」 、第155回芥川賞に村田沙耶香氏の「コンビニ人間」 が選出される
・国立西洋美術館が世界遺産登録決定
・天皇陛下が生前退位の意向をにじませる「お気持ち」を公表
・相模原障害者施設殺傷事件発生
・東京都知事選挙で小池百合子氏当選


・「第46回中・四・九地区医師会看護学校
 協議会」 開催(別府市)
・福岡市三師会、福岡市長へ要望書提出
・第3次安倍再改造内閣が発足
・厚労省、「平成26年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況」を公表。特定健診実施率48.6%、特定保健指導実施率17.8%となり、 いずれも前年度より向上
・厚労省、「平成27年度介護給付費実態調査結果」を公表。介護サービスの年間累計受給者数は6,193万人で過去最高
・リオデジャネイロオリンピック開幕、日本は過去最多となる41個のメダルを獲得
・台風第10号が過去にない異例の進路を辿り、東北や北海道に甚大な被害をもたらす
・国民の祝日「山の日」が施行


・市医、「第5回地域包括ケア推進のための市民向け講演会」をアクロス福岡にて開催。参加者534名
・厚労省、「平成26年度国民医療費の概況」を公表。40兆8,071億円で前年度比7,461億円、1.9%増。 過去最高を更新
・厚労省、「2015年医療施設調査・病院報告の概況」を公表。医療施設数は、病院13施設減の
8,480施設、無床診療所928施設増の9万3,034施設、有床診療所394施設減の7,961施設
・リオデジャネイロパラリンピック開幕、日本は24個のメダルを獲得
・豊洲市場の“盛り土”問題発覚
・男子プロバスケットボール“Bリーグ”が開幕
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・世界医師会、次期会長に横倉義武日医会長を選出
・「第55回十四大都市医師会連絡協議会」開催(名古屋市)
・市医、「第53回九州首市医師会連絡協議会」主催。同協議会において「災害時における相互支援に関する協定書」を締結
・B型肝炎ワクチンの定期接種開始
・医療事故調査制度施行から1年、初年度の調査対象届出件数は388件で想定の半数以下となる
・厚労省、世界初となる「過労死白書」をまとめ、閣議決定される
・ノーベル生理学・医学賞に大隅良典氏が選出される
・鳥取県中部を震源とするM6.6の地震が発生。最大震度は6弱
・熊本県の阿蘇山中岳第1火口で36年ぶり爆発的噴火が発生
・化血研、日本脳炎ワクチンで新たな不正製造発覚
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・「第2回世界獣医師会-世界医師会“One Health”に関する国際会議」開催(北九州市)。人と動物の共通感染症対策において、医師と獣医師の連携強化を図る「福岡宣言」を採択
・九州医師会連合会、国民皆保険の堅持など政府への要求8項目を決議 
・市医、「第40回ふくおか市民糖尿病教室」開催。参加者242名
・市医、「第9回福岡市救急医療市民公開シンポジウム」をエルガーラホールにて開催。参加者227名
・市医、臨時代議員会において成人病センターの事業譲渡を決議
・改正年金機能強化法成立。平成29年8月から年金受給資格期間を25年から10年に短縮
・厚労省、「データヘルス・予防サービス見本市2016」開催(福岡市)
・第3回「福岡マラソン2016」開催
・福岡市博多区博多駅前の地下鉄七隈線延伸工事現場で陥没事故発生
・福島県沖を震源とするM7.4の地震が発生し、福島県、茨城県、栃木県で震度5弱を観測
・ルイ・ヴィトン・アメリカズカップ゚・ワールドシリーズ福岡大会開催
・アメリカ合衆国大統領選挙、共和党・ドナルド・トランプが民主党・ヒラリー・クリントンを退け、当選
・ブラジルサッカーチーム「シャペコエンセ」チャーター機墜落
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・市医、福岡県弁護士会と連名で福岡市長へ成年後見制度に関する共同提言書提出 ・福岡県知事、「福岡県地域医療構想(案)」について福岡県医療審議会へ諮問 ・流行語大賞発表。「神ってる」に決定
・2016年「今年の漢字」は「金」に決定
・韓国、朴槿恵大統領の弾劾を可決
・山口県長門市にて、安倍首相とプーチンロシア大統領による日露首脳会談開催
・安倍首相、歴史上初めてハワイ真珠湾を公式慰霊訪問(予定)

医療情報室の目

   冒頭でも述べたとおり、今年は世間の予想を覆すような様々な出来事が相次ぎ、波乱に満ちた一年だったといえる。
 医療界においては、今年は診療報酬改定が実施された年だったが、改定の内容については、地域医療構想と地域包括ケアシステムの構築を後押しするためのメリハリの効いた評価と見直しが施され、とりわけ“サプライズ”と捉えられるような内容はなかった。しかし、政府の施策に目を向けてみると、来年4月としていた消費税率10%への引き上げが先送りされ社会保障費の財源確保が困難となるなど、社会保障・医療政策の先行きは不透明感を増している。
 いずれにしても、再来年は診療報酬と介護報酬の同時改定や、第7次医療計画および介護保険事業計画の同時スタートなどが控えているため、その布石となる2017年は、医療界にとって重要な年となることは間違いないだろう。
 来年の干支は「丁酉(ひのととり)」。十二支の「酉」は、物事が極限まで熟す、あるいは極まった状態を指すそうであるが、これらの施策の方向性も、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目前にほぼ固まるはずである。
 2017年、私たち医療機関は、医療・介護をめぐるあらゆる施策を注視し、地域の医療ニーズや自院を取り巻く環境変化を分析し、自院が果たすべき機能と立ち位置をしっかりと見極めていく必要があるだろう。

編 集 福岡市医師会:担当理事 庄司 哲也(情報企画担当)・岡本 育(広報担当)・一宮 仁(地域医療担当)
※ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡下さい。
(事務局担当 情報企画課 柚木(ユノキ))
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