「地域医療連携推進法人制度」の枠組みが最初に示されたのは、平成25年8月に、社会保障制度改革国民会議がまとめた報告書の中で、「非営利を前提とする“ホールディングカンパニー型(持ち株会社型)”のような法人間の合併等を速やかに行える仕組みが必要…」と記されことが始まりとされている。 その後、平成26年1月に開催されたダボス会議で、安倍総理が「日本にもメイヨー・クリニック※のような、ホールディングカンパニー型の大型医療法人ができてしかるべき」と発言。政府は「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」の創設を日本再興戦略に盛り込むなど、当初は成長戦略を強く意識した形で制度の検討がはじまった。 しかし、制度の具体的設計を引き渡された「医療法人の事業展開等に関する検討会」では、“非営利性”の担保を確保すべきとの視点から議論が交わされ、次第に地域医療を立て直すための手段としての役割が強調されていった。 制度の名称をめぐっても、検討会の座長自らが「非営利ホールディングカンパニー」という名称への違和感を示したため、いくつかの案を経て、最終的には「地域医療連携推進法人」に落ちつき、平成27年2月に「地域医療連携推進法人制度(仮称)の創設及び医療法人制度の見直しについて」が取りまとめられ、大方の方針が示された。 |
平成27年2月に「医療法人の事業展開等に関する検討会」が公表した「取りまとめ」では、地域医療連携推進法人制度の概要が示され“非営利性”を担保するための様々な方策が設けられている。ここでは“非営利性の確保”という点に注目しながら制度のポイントを紹介する。 |
|
○参加法人の要件と地域医療連携推進法人の“法人格”について 地域医療連携推進法人に参加できる法人(社員)は、医療機関等を開設する医療法人など複数の非営利法人(医療法人、公益法人、社会 福祉法人、学校法人、国立大学法人、独立行政法人、自治体など)のほか、地域包括ケア推進に資する介護事業等を行う非営利法人も可能とされているが、医療系法人が2つ以上あることが最低条件とされており、例えば、1つの医療法人と1つの社会福祉法人の組合せでは認められない。 また、地域医療連携推進法人の法人格は、医療法人ではなく「一般社団法人」とされた。これは、医療法人に限らず複数の非営利法人の連携を目的とするための措置と考えられるが、法人の理事長は医師でなくても可能であるため、非営利性の担保という点では、若干の懸念材料といえるのかもしれない。ただし、法人の設立にあたっては、医療法上の非営利性を確保するための基準を満たしている必要があり、各都道府県医療審議会の意見に沿って、都道府県知事の認定を受けなければならないとされている。 |
|
○非営利性の確保に向けたガバナンス 検討会が公表した「取りまとめ」では、非営利性を担保するため、以下のようなガバナンスが設けられている。 ただし、議決権については、1社員1議決権以外の在り方を定款で定めることも可能とされ、新型法人に委ねられている。 ・営利法人役職員を役員にしないこと ・剰余金の配当は禁止 ・「地域医療連携推進協議会」の意見を尊重すること ・社員の議決権は各1個(1社員1議決権) (ただし、不当に差別的取扱いをしないことを条件に定款で定めることが可能) ・都道府県が都道府県医療審議会の意見に沿って法人の認定および重要事項の認可・監督等を行う |
|
医療情報室の目
|