平成26年、日医総研が行った「日本の医療に関する意識調査」の中で、『健康のことをなんでも相談でき、身近で頼りになる“かかりつけ医”を持っていますか。』という問いに対し、1,122名の回答者のうち全体の53.7%が『持っている』との回答を示した。 “かかりつけ医”の定義が明確でない我が国の現状に照らせば、これは一見、有意な結果といえそうだが、世代別の分析結果(右図)をみれば、その回答は医療機関に罹りがちな高齢者に偏っていることがわかる。 また、そもそも日本の医療は、教育システムからして何らかの専門領域の取得が中心となっているため、あらゆる愁訴や相談に対し100%対応できる“かかりつけ医”というのは数少ないはずである。 しかし一方で、「日本の医療に関する意識調査」では国民が“かかりつけ医”に望むこととして、『専門医への速やかな紹介』、『紹介先への適時適切な情報提供』といったゲートキーパーとしての役割のほか、『どんな病気でもまずは診療できる』といった幅広い診療能力に期待するという項目が上位にのぼっている。 今年4月に始まった「日医かかりつけ医機能研修制度」(詳細は後述)は、これらの国民の期待に応えられる“かかりつけ医”として必要な機能を修得するシステムであり、これからの医療・介護提供体制において、地域住民の安心を支えるための制度だといえる。 |
○診療報酬改定による主治医機能の評価 国は、2014年の診療報酬改定において、複数の慢性疾患をもつ患者に、継続的な健康管理や服薬管理等を行う主治医機能を評価する「地域包括診療料(加算)」を創設し、2016年度の改定では“かかりつけ医”の普及をさらに後押しするため、同地域包括診療料(加算)の施設基準を緩和し、認知症地域包括診療加算など新たな項目を盛り込んだ。 しかし、これらの施設基準の算定には、常勤医を複数人確保することや、24時間の患者対応や薬局との連携といった厳しい要件が課せられているため、届け出る医療機関がなかなか広がらないというのが実態のようである。 ○「総合診療専門医」の創設(2018年度予定) 国は、専門医制度を見直し2018年度から新たな制度を開始し、19番目の基本領域に「総合診療専門医」を加える予定である。さらに、新しく始まる専門医制度では、現在、各学会が独自に行っている専門医の認定や養成プログラム評価を、新たに設置された第三者機関である「日本専門医機構」にて行うとしており、今後、「専門医」に対する客観的な基準が公的な形で担保されるものと期待されている。 |
○福岡県医師会認定総合医(新かかりつけ医)制度との関係 福岡県医師会では、全国に先駆けて「新かかりつけ医宣言」を行い、2013年度(平成25年度)から福岡県医師会認定総合医(新かかりつけ医)制度を行っている。これは、日本医師会生涯教育講座の受講を必修とし、地域保健医療活動への従事などを要件とするもので、福岡県医師会が審査を行い認定証を発行するという独自の制度である。 今回始まった「日医かかりつけ医機能研修制度」とは基本的に別制度ではあるが、福岡県の医師については、「福岡県医師会認定総合医制度」の申請(認定)を前提に「日医かかりつけ医機能研修制度」の申し込みを受け付けることとなっているので注意されたい。 |
医療情報室の目
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