医療情報室レポート
No.207

2015年12月18日発行
福岡市医師会医療情報室
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特集:平成27年をふりかえって

 平成27年は、4月から各都道府県における地域医療構想の策定が開始され、10月からは、医療事故の原因を分析し再発防止につなげるための医療事故調査制度が始まるなど、医療界においては、新たな制度が動き出す年となった。また、世界的な話題としては、この10月に北里大学の大村智教授がノーベル生理学・医学賞を受賞するなど、喜ばしい話題もあったが、12月に化学及血清療法研究所(化血研)によるワクチンの不正製造問題が発覚し、医療関係者の間に大きな衝撃が走った。
 一方、医師会関係では、日本医師会による医師会組織強化に向けた具体的方策の一つとして、研修医の医師会費無料化が実施されたことを受け、今後、学術専門集団たる医師会の組織拡大に大きな期待が寄せられている。
 今回は、毎年恒例の特集である今年一年の出来事をまとめ、“平成27年をふりかえって”みた。

●平成26年の主な出来事

医師会関係 厚生・行政関係 トピックス


・日医会員数16万6,121人(2014.12.1付)、前年比166人増、過去最高の会員総数となる
・第51回九州首市医師会連絡協議会(長崎市)
・市医、「多職種連携情報共有システムモデル 事業」開始
・厚労省、2014年人口動態推計の年間推計を公表。出生数100万1千人で前年比2万9千人減の過去最少に
・2014年の医療機関の倒産件数は29件。前年比7件減
・2014年の全国の自殺者数は2万5,374人、前年より1,909人(7.0%)少なく5年連続減少
・阪神・淡路大震災から20年
・2014年の交通事故による死者は4,113人、14年連続で減少。高齢者割合は過去最高53.3%
・大相撲横綱白鵬が歴代最多33回目の優勝
・第152回直木賞に西加奈子氏の『サラバ!』、  第152回芥川賞に小野正嗣氏の『九年前の祈り』 が選出される
 2

・日医、日本医学会、全国医学部長病院長会 議の連名により「国家戦略特区による医学部 新設に反対する声明」を塩崎厚労大臣、下村文科大臣に提出 ・厚労省、「2013年社会福祉施設等調査の結果」公表。有料老人ホーム(サービス付き高齢者向け住宅以外)の施設数は8502施設で、前年から983施設増加 ・過激派組織ISILによる日本人拘束事件発生
・三陸沖で東北地方太平洋沖地震の大規模余震 が立て続けに発生、マグニチュード6.9、最大震度4


・市医、「第4回慢性腎臓病(CKD)市民公開講座」 開催
・市医看護専門学校、平成26年度准看護師資格試験及び看護師国家試験に全員合格。 4年ぶりW合格率100%を達成
・第109回医師国家試験合格者発表。合格者 8,258人、合格率は前回から0.6ポイント増の91.2%
・消防庁が2014年の救急出動状況を公表。 前年比6万件増の598万2,849件となり過去最多に
・厚労省、「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」報告書公表
・総務省、新たな「公立病院改革ガイドライン」公表
・地下鉄サリン事件から20年
・北陸新幹線の長野から金沢間が開業


・市医看護専門学校、看護師養成3年課程 (全日制)の第1看護学科を新設
・市医臨床検査センター、(株)エスアールエルとの業務提携開始
・市医、地域包括支援センターを19カ所か30カ所に受託拡大
・市医、本部事務局に「医療介護推進室」を新設
・各都道府県で「地域医療構想」の策定が開始
・介護報酬改定、改定率−2.27%となり、2006年以来9年ぶりのマイナス改定
・福岡統一地方選挙、福岡県知事に現職の小川洋氏が再選
・総務省、平成26年10月現在の人口推計を公 表。日本の総人口は1億2,708万3千人で、前年比21万5千人減となり、4年連続減少
・ネパールでマグニチュード7.8の地震発生、 首都カトマンズなどで死者数千人以上
・JR福知山線脱線事故から10年


・日医、日本医学会、全国医学部長病院長会 議の連名により「国家戦略特区による医学部 新設」について緊急声明を発表
・厚生労働科学研究費補助金事業「診療行為 に関連した死亡の調査の手法に関する研究班」報告書を全日病ホームページ上に公表 ・小笠原諸島西方沖を震源とするマグニチュー ド8.1、最大震度5強の地震発生
・鹿児島県の口永良部島で爆発的噴火、警戒 レベルを5に引き上げ

・日医、研修医の会費減免(無料化)を公表
・日医、「医師主導による医療機器の開発・  事業化支援事業」開始
・選挙権の年齢を『18歳以上』に引き下げる 「改正公職選挙法」が成立
・厚労省、2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)発表。介護人材不足は37万7千人
・政府の「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」が2025年の必要病床数推計を盛り込んだ一次報告書取りまとめ
・政府、「骨太の方針2015」と「日本再興戦略改定2015」、「規制改革実施計画」を閣議決定
・日本年金機構で外部からの不正アクセスによ り個人情報約125万件が流出
・韓国で中東呼吸器症候群(MERS)の感染が拡大
・九州に梅雨前線が停滞し大雨が続き、鹿児島 で観測史上最大の月間雨量を観測


・「第47回九州地区医師会立共同利用施設連絡協議会」開催(長崎市)
・日医、「医療事故調査制度費用保険」創設
・日医、「医療分野等ID導入に関する検討委員会」 中間報告公表
・2014年の日本人女性の平均寿命が86.83歳で3年連続長寿世界一となる。男性は80.50歳でともに過去最高を更新 ・明治産業革命遺産三池炭鉱、軍艦島などが世界文化遺産に登録
・第153回直木賞に東山彰良の『流(りゅう)』、 第153回芥川賞に羽田圭介氏の『スクラップ・ アンド・ビルド』と又吉直樹氏の『火花』が選出される
・サッカー女子ワールドカップがカナダで開催。 日本(なでしこジャパン)は準優勝


・「第46回中・四・九地区医師会看護学校協議会」 開催(別府市)
・福岡市三師会、福岡市長へ要望書提出
・65歳以上で一定以上の所得者に介護保険の自己負担割合を1割から2割に引き上げ
・厚労省、「2014年度介護給付費実態調査」 の結果を発表。1年間に介護・介護予防サービスの利用者数は588万3千人で過去最高
・日本航空123便墜落事故から30年
・広島・長崎原爆投下、終戦から70年
・気象庁、鹿児島県の桜島で火山性地震が相次ぎ、警戒レベル4へ引き上げを発表
・鹿児島県川内市の九州電力・川内原子力発電所1号機が、新規制基準後初めて再稼働


・市医、「第4回地域包括ケア推進のための市民向け講演会」開催
・「改正マイナンバー法」成立、2018年度から特定健診や予防接種の履歴管理など利用範囲の拡大が盛り込まれる
・参院本会議において安全保障関連法案 (集団的自衛権の限定的な行使容認を含む安全保障関連法案)が可決成立
・記録的豪雨により、茨城県常総市の鬼怒川 および宮城県大崎市の渋井川堤防が決壊し、 甚大な被害が発生
・気象庁、阿蘇山中岳第1火口における噴火の発生を発表(警戒レベル3)
・ラグビーワールドカップがイングランドで開催。日本は大会史上初の予選グループ3勝を上げるが、予選敗退
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・市医、「第8回福岡市救急医療市民公開シンポジウム」開催
・「東区医師会40周年記念祝賀会」開催
・「中央区医師会40周年記念祝賀会」開催
・厚労省「平成25年度国民医療費概況」公表。 初めて40兆円を突破
・「医療事故調査制度」開始
・「マイナンバー通知カード」郵送開始
・「特定行為に係る看護師の研修制度」開始
・第3次安倍改造内閣が発足
・「第1回福岡県地域医療構想策定会議」開催
・沖縄県知事、米軍普天間飛行場移設先の名護市辺野古沿岸部埋め立て承認の取り消しを正式決定
・ノーベル賞、物理学賞に梶田隆章氏、生理学・医学賞に大村智氏が選出される
・プロ野球福岡ソフトバンクホークス2年連続日本シリーズ優勝
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・第52回九州首市医師会連絡協議会開催 (鹿児島市)
・「博多区医師会40周年記念祝賀会」開催
・「福岡市在宅医療医会」発足
・市医、「第39回ふくおか市民糖尿病教室」開催
・厚労省、「2014年医療施設調査・病院報告の概況」を公表。全病床の平均在院日数が前年比0.7日減となり初めて30日を割る病床数は、病院が前年比5,511床減、一般診療所は8,978床減医療施設数は、病院が前年比47施設減の8,493施設、一般診療所は67施設減の10万461施設
・国家戦略特区における国際医療福祉大学 (千葉県成田市)の医学部新設が正式決定
・「第1回福岡・糸島医療圏地域医療構想調整会議」開催
・第2回「福岡マラソン2015」開催
・日本郵政・かんぽ生命・ゆうちょ銀行の日本郵政グループ3社が東京証券取引所の一部に上場
・パリで同時多発テロ事件発生
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・「第54回十四大都市医師会連絡協議会」開催(川崎市)
・日医、地域医療・介護のICT化促進を目指す 新会社「日本医師会ORCA管理機構」を設立
・県医、「国民医療を守るための福岡総決起 大会」開催
・「ストレスチェック制度」開始
・厚労省「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会」報告書公表
・流行語大賞発表。「トリプルスリー」、「爆買い」に決定
・アビスパ福岡5季ぶりとなるJ1リーグ昇格決定
・フィギュアスケートGPファイナルがバルセロナで 開催。羽生結弦が世界歴代最高記録を更新し、 男子史上初の3連覇達成
・バドミントンスーパーシリーズ・ファイナルがUAE ドバイで開催。シングルスで男子が桃田賢斗、 女子は奥原希望が優勝し、日本勢初制覇
・化学及血清療法研究所(化血研)によるワクチン の不正製造問題が発覚

医療情報室の目

  ★抑制ありきの社会保障費の削減は避けるべきである
 今年6月に政府は「骨太の方針2015」を閣議決定し、経済再生と財政再建に向けた新たな指標となる「新・3本の矢」を示した。今回の「矢」の特徴は、“夢を紡ぐ子育て支援”、“安心につながる社会保障”を推進することで、労働力の向上などを図り経済成長につなげるというものである。これまで社会保障に目を向けていないなどの批判が少なくなかったアベノミクスにおいて、これらの点が明確に示されたことは一定の評価がなされるものといえそうだが、その財源の確保が大きな課題とされている。「骨太の方針2015」では、社会保障を抑制するため、2016年度から2018年度までの社会保障費の伸びを、過去3年間と同規模となる1.5兆円程度に抑えるという目安を計画の中に盛り込んでいる。しかし、過去3年間の社会保障費の伸びが1.5兆円にとどまった背景には、医療提供側の身を切るような努力も隠されており、これからますます進む高齢化を見据えれば、「抑制ありき」の社会保障費の削減は避けるべきである。国民が納得できるだけの社会保障の質を保ちながら、どこまで社会保障費の抑制を進めることができるか、今後の議論や方策を注視していかなければならない。
 来年の干支は「丙申(ひのえさる)」である。「申」は、物事が成熟するまでの伸びる様を表すといわれているが、我々医療者は、制度構築の最中にある地域医療構想や地域包括ケアといった医療大変革への対応力、行動力を身につけるための重要な年となるだろう。

編 集 福岡市医師会:担当理事 今任信彦(情報企画担当)・松尾圭三(広報担当)・西 秀博(地域医療担当)
※ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡下さい。
(事務局担当 情報企画課 柚木(ユノキ))
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