介護ロボット実用化に向けた課題と今後必要となる取り組み |
・機器の開発・実用化を促す実証環境が未整備である → 開発メーカーと介護現場との連携による実証試験等への相互協力 ・機器の安全・信頼性の向上 → 対人安全性基準、試験方法及び認証手法の確立 ・現場での操作・運用方法に対する不安 → 研修会の開催などによる教育サポート体制の強化 ・価格が高く、導入に踏み切れない → 低コスト化や導入に際しての公的支援 ・評価手法が未整備である → 評価手法の確立 |
ダヴィンチ | |
特 徴 | 医師が直接患者に触れず、患部の3D画像を見ながら遠隔操作でアーム を動かす |
導入費用等 | 約3億円、維持費年間約2,500万円 |
導入数 | 約200台 |
保険適用 | 日本では前立腺がんのみ(H24.4〜) |
患者負担額 (保険適用無い場合) |
約200〜300万円 |
メリット | ・3次元の立体画像を見ることができるため、より正確に 患部を捉えることができる。また、手ぶれを防ぎ、大き な動作で細かな操作ができるため、より微細な器官の剥離や縫合などの作業精度が期待できる。 ・身体に小さな穴を開けて行うため、傷口が小さく、開腹 手術に比べて、手術後の疼痛の軽減や合併症リスクが回避できる。また、出血・痛みが少量で回復が早く、早期退院・早期社会復帰が可能となる。 |
デメリット | ・高額かつ装置が大型で準備に時間がかかり、メンテナンスが大変である。 ・開腹手術と異なり身体に開ける穴が小さいことで、視野が狭く、器具の操作が難しいため修得に時間が掛かる。 ・我が国では、前立腺がんのみ保険適用のため胃や大腸等の場合は、患者は全額自己負担となる。 |
九州大学大学院医学研究院先端医療医学講座 九州大学先端医療イノベーションセンター 橋爪 誠 教授のコメント |
九大では、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を米国より輸入し、2000年より臨床応用を開始しましたが、今や全国で200台近く設置されています。現在、前立腺切除術しか保険適応が認められていませんが、胃切除術、子宮切除術、腎部分切除術などの先進医療申請が進んでいます。1990年代初頭より低侵襲治療として世界的に普及した内視鏡外科手術ですが、技術的課題であった手の動きの制限を7自由度にし、3次元内視鏡で観察しながら手術できるようにしたことで夢のロボット手術が実現しました。現在の問題点は、コストパフォーマンスが良くないことと、手術の手順は従来の内視鏡手術と同じであるということです。 そこで、ロボット技術と情報通信技術(ICT)とを融合させた超低侵襲なインテリジェント治療器の開発が期待されます。九大では世界細径の内視鏡ロボット鉗子の開発に成功し、「多次元計算解剖学」との融合を目指しています。我が国は、内視鏡治療では世界トップの臨床力(医学)があり、産業用ロボットも世界トップの技術力(工学)があります。国や自治体の強力な支援の下、産学連携の基盤をもっと盤石なものにすることで、今こそわが国発の超低侵襲治療機器を海外へ輸出できるよう一致団結して推進していくべきです。超高齢社会であるわが国は介護やリハビリ支援ロボットも世界のモデル事業として世界中から大きな期待が寄せられています。特に国際先端医療特区として国内外を対象とした先端医療の実施や、臨床試験実施施設の充実、知財やプログラムマネージャーなどの専門職や複合領域の学生の人材育成、グローバルネットワークの形成など医療機器研究開発拠点を中心とした重点的な推進が望まれます。 |
医療情報室の目
|