TPPは、もともとは2006年5月にシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4ヵ国で発効されたP4協定(環太平洋戦略的経済連携協定)が源(原協定)とされている。その後、アジア太平洋地域のより高い貿易の自由化を目標に拡大交渉が始まり、現在11ヵ国が2013年中のTPP締結に向けた交渉を行っており、日本は7月の会合から交渉のテーブルに加わるとみられている。しかし、これまでの議論停滞から一転し、安倍首相の表明から一気にTPP交渉へ参加することとなった日本であるが、最も注目された日米事前協議の内容については日本が大きく譲歩したとの見方が多く、また両国が公表する合意内容に食い違いが見られるなど、今後の展開に大きな不安要素を残している。 |
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(首相官邸:安倍内閣総理大臣記者会見資料(H25.3.15)より) |
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各国との事前協議の中身 |
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4月12日に合意した日米事前協議は、TPPの輪郭において示された包括的で高い水準の協定を達成することを確認するとともに、TPP交渉と並行して、2国間の非関税措置に関する交渉を進めるとなっている。なお、日本が求めていたコメや麦など重要5品目の関税撤廃の例外に関しては、日本政府が発表した合意概要では日本には一定の農産物、米国には一定の工業製品というように、両国ともに貿易上の重要項目が存在しているとしているが、米国政府の発表にはその旨が記載されていないなど、両国の発表内容に食い違いも見られる。また、合意内容には含まれていないが、米国の要求に沿う形で「かんぽ生命の新事業への参入を当面認めないこと」を麻生財務相が表明するなど、事前協議は日本側が譲歩した形になったともいえる。このような交渉条件を示しているのは米国だけではなく、オーストラリアやニュージーランドは全ての品目の関税撤廃、カナダはそれに加え米国と同様に自動車の関税撤廃の先送りを要求している。 |
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日本が求めるTPPにおける聖域 |
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政府はコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖などの甘味資源作物の5品目を交渉の例外品目である「聖域」とし、関税を維持するとしている。しかし先にも触れたが、日本の交渉参加に難色を示していたオーストラリアやニュージーランドについては、“関税ゼロ”のTPPの原則を日本が了承したとして交渉参加への理解を得たとも言われており、今後、日本の聖域が守られることに疑問を呈する声も多い。
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