○地域包括支援センターの機能強化 |
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『地域包括ケア』という語は、“地域において医療・介護・福祉等が総合的に提供される概念”として従来から広く使われており必ずしも新しいキーワードではない。
『地域包括ケア』という言葉の始まりは、昭和50年代、広島県御調町(現尾道市)にある公立みつぎ総合病院の医師が構築した御調町独自の包括ケアシステムの中で用いられたのが最初といわれている。
その後、平成18年の介護保険法改正に伴う「地域包括支援センター」の創設に際し、今後目標とするべき政策概念として広く使われるようになり、平成20年度老人保健健康増進等事業における「地域包括ケア研究会」報告書により、現在の『地域包括ケアシステム』の仕組みが明確に定義された。 |
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平成18年の介護保険法改正に基づき設置された地域包括支援センターは、包括的な地域支援事業を実施する中核機関として、概ね人口2〜3万人を目安とした地域毎に、全ての市町村(4,224ヵ所)に整備されている。
主たる業務は、1)高齢者本人や家族に対する「総合相談支援事業」、2)虐待防止等の「権利擁護」、3)ケアマネジャーに対する指導・助言・ネットワーク構築支援等の「包括的・継続的ケアマネジメント」、4)要支援者に対するケアプラン作成等の「介護予防ケアマネジメント」等であるが、今後は、日常生活圏域において、各々のセンターが地域包括ケアの中心的役割を担うことが期待されている。しかし、地域包括ケアシステムへの対応にあたっては、センター数の拡充や人員体制の強化、業務内容の適正化、また認知度の向上など整理すべき課題は多いとみられる。 |
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○「地域ケア会議」の活性化 |
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厚労省が昨年6月に行った調査によれば、多職種が集い利用者支援を検討する「地域ケア会議」を開催している自治体は8割に満たず、会議の内容も支援困難事例等の問題解決や地域課題の把握程度に留まっており、また参加者も介護関係者に偏っているとされている。しかし昨年4月に改定された地域支援事業実施要項等の中で、今後の「地域ケア会議」の役割として、行政職員、地域包括支援センター職員、ケアマネジャー、介護事業者、医療関係者、民生委員等が参集し、個別に利用者のQOL向上や自立支援に資するケアマネジメントの実現等を図る場とすること等が明文化されている。 |
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○マンパワーの確保 |
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離職率が高く、低賃金であるといわれる介護職員の処遇改善を目的に、平成21年4月の介護報酬改定では3%のプラス改定となり、同年10月からは処遇改善交付金(介護職員1人当たり月額平均1.5万円)の交付が行われるなどの対応がされてきた。介護職員の数は平成12年度の55万人から22年度には133万人と増えてはきたが、同年度の離職率は17.8%で、製造業や金融業など16大産業平均の14.5%を未だ上回っている。前述の処遇改善交付金は平成23年度に廃止されたため、それに代わる手当として平成24年4月の介護報酬改定において介護職員処遇改善加算が設けられたが、2025年に必要とされる介護職員数は約240万人ともいわれており、労働人口が減少しつつあるわが国においてさらなる人材確保を行うためには、より一層の環境改善が必要である。 |
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○高齢者住まいの整備 |
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図3:「高齢者向け住宅」と施設の整備状況の比較 |
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今後の高齢者の増加、高齢者の単身者や夫婦のみの世帯の増加を踏まえると、高齢者を支援するサービスを提供する住まいの確保が必要となる。地域包括ケアシステムの柱の一つとして位置づけられている「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、かつて「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」などと呼ばれた3つの類型が法改正により一本化され、2011年10月から新たにスタートした制度である。政府は多額の補助や税制上の補助を行い、10年間で60万戸の整備を目標としており、2012年末現在での登録数は約8万9,000戸となっている。高齢者住まいの確保の足掛かりができたともいえるが、一方で、これらの住まいを利用できるのはある程度の資産を持つ世帯に限られ、低所得者の高齢者には十分対応できていないこと、さらには特別養護老人ホームなどで認められている住所地特例制度(他の市町村の高齢者が施設に入居しても介護保険等の保険給付は入居前の市町村が負担する)が適用されないことから入居先の市町村の介護保険財政が圧迫される恐れがあるなどの課題が指摘されている。 |
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○平成24年度診療報酬・介護報酬同時改定における見直し |
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昨年4月に実施された同時改定は、地域包括ケア体制の構築を見据えた様々な見直しが行われており、本格的に「在宅(地域)へのシフト」に舵を切った内容といえる。在宅医療に関しては、特に「強化型在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院」が創設されるなど、地域医療機関の連携や、看取り・24時間対応の充実を促す内容となっている。一方、介護報酬については、24時間かつ臨時的な対応を可能とする「定期巡回・臨時対応サービス」を創設し、訪問介護と訪問看護の密接な連携による訪問対応の拡充を図るとともに、従来からある小規模多機能型居宅介護と訪問看護を一つの事業所で提供可能とした「複合型サービス」が創られるなど、特に、中重度の介護利用者のニーズに対応できるサービスの構築を可能とする内容となっている。 |
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