A. |
それに加えて年金保険料の未納があるんですね。たしか国民年金保険料の未納率が40%を超えていると聞いたことがある。国民の半数近くが保険料を納めていないってことですか。破綻はすぐ目の前ですね。 |
B. |
いや、そうじゃない。正確には、国民年金制度の中の「第1号被保険者」と呼ばれる人たちの4割が保険料を収めてないということなんだ。 |
A. |
“第1号被保険者”…。ああ、自営業者や学生さんのことですね。 |
B. |
そう。「国民年金」は基礎年金とも呼ばれてて日本に居住する全ての人が加入することになってるけど、これは「第1号被保険者」、「第2号」、「第3号」と3つに分類される。「第1号被保険者」は自営業者や学生さんで、基本的には国民年金にしか加入していない。第2号被保険者は会社員や公務員で、「国民年金」と同時に、「厚生年金」若しくは「共済年金」に加入している。第3号被保険者はその配偶者だね。保険料については、「第2号被保険者」の会社員・公務員は「国民年金」の保険料も含めて給料から天引きされるため、基本的に国民年金の“未納者”はいないはずなんだ。また、「第3号被保険者」である配偶者はもともと保険料を納める必要がない。つまり、国民年金の保険料を収めてない4割というのは、それ以外の“第1号被保険者”が大半で未納者は300万人程度といわれている。国民年金の加入者は約7,000万人といわれてるので、全体で見れば実質の保険料未納者は5%程度なんだよ。 |
A. |
でも5%とはいえ、その未納分の積み重ねの影響は大きいですよね。 |
B. |
ただ、年金制度に関しては、不足分は積立金で賄っているし、保険料の未納者は将来年金を受け取れないようになっているので、長い目で見れば影響は少ないと考えられているね。でも、これが逆に年金以外の制度に大きな影響を及ぼしている。 |
A. |
どういうことですか? |
B. |
年金を受けられず、一定水準の生活が出来ないとなると生活保護に頼る人が増える恐れがあるんだ。国は2004年に年金制度の大きな改正を行い、「100年安心プラン」とも謳われているけれども、無年金者の“しわ寄せ”が生活保護におよぶことまでは考慮していないといえるね。 |
A. |
そういえば叔父も将来生活保護を受ければいいやって言ってました。 |
B. |
生活保護制度では最低限の生活が出来ない人のために「生活保護費」が支給される。支給額は住んでる地域や年代により調整されるわけだけど、例えば東京都在住の高齢者単身世帯では、月額8万円以上の生活保護費に加え、必要に応じて住宅扶助や医療扶助も受けられる。一方、国民年金の支給額は全国一律で、満額受給者でも月額6万6千円程度。つまり、40年もの間まじめに年金の保険料を支払ってきた人より、生活保護を受けた人の方がより多くの生活費を得てしまうんだ。 |
A. |
これでは年金保険料の未納者は減りそうにないですね。年金の保険料をきちんと支払ってきた人が、万が一、生活保護を受けるような状態になっても、支払った分を上乗せするような仕組みを設けるなど、不公平感がないような制度改革が必要ですね。 |
B. |
それも1つの考えだね。他に未納者を無くす方法としては、年金制度を現在の“社会保険方式”から“税方式”に移行する方法もある。 |
A. |
等しく負担する税である消費税を年金の財源に充てれば未納問題は解決しますね。 |
B. |
ただこの方法にも課題はある。現在被保険者である現役世代の今までの納付実績を反映させて年金給付額を決定するならば多額の追加財源が必要になること。また、既に保険料を全額納め終え年金受給を受けている世代に、更なる負担を強いることになるんだよ。 |
A. |
難しいですね。 |
B. |
このようにいろいろな問題がある現行の年金制度は、破綻に向かう、若しくは既に破綻していると考えている人がいるのが現状なんだ。年金の受給者や現役世代など全ての人が納得する方法は難しいだろうけど、より良き制度改革が望まれているということだね。 |