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平成8年12月に議員立法として提出され、平成9年10月に施行された。この法律案に関する決議に対しては、共産党を除く全政党が党議拘束(※1参照)を外した。その理由としては、人の死を定義するという議員個人の宗教観・死生観に関わる議案であることが上げられている。尚、共産党は採決を棄権した。 |
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「臓器の機能に障害がある者に対し臓器の機能の回復又は付与を目的として行われる臓器の移植術に使用されるための臓器を死体から摘出すること、臓器売買等を禁止すること等につき必要な事項を規定することにより、移植医療の適正な実施に資することを目的とする。」(第1条抜粋) |
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「死亡した者が生存中に臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないときは、この法律に基づき、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む)から摘出することができる。」(第6条抜粋) |
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臓器提供の意思が有効な年齢については、法文に規定されていないが、臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)で、臓器提供に係る意思表示の有効性について、民法上の遺言可能年齢などを参考として15歳以上としており、実質的には15歳未満の臓器提供は不可能とされている。 |
※1 議会などで採決される案件に対し、政党としての意見を賛成か
反対か事前に決定しておいて、所属議員の投票行動を拘束す
ること。ひとつの政党が結束して行動するための手段として用
いられており、政党は党議拘束に反する行動に対して除名な
どの処分を下す。 |
現行法における臓器移植が可能となる要件
T.脳死は「人の死」か?
→臓器提供する場合にのみ限定
U.臓器提供が可能な条件
→本人の書面による意思表示と家族の承諾
V.臓器提供が可能な年齢
→意思表示が有効な15歳以上のみ
W.脳死判定について
→自発呼吸・瞳孔の大きさ・脳波などで判断
X.親族への優先提供は?
→認めない |
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この法律は、当初は施行後3年で見直すこととなっていたが、10年以上が経過したにもかかわらず、改正されないままだった。平成17年頃から有志議員らにより法律改正に向けての動きがあり、改正案として4案(いわゆるA・B・C・D案)が衆議院に提出された。 |
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小児においては、現行法では、15歳未満の臓器提供が不可能である為、海外に渡航し臓器移植を行っているのが現状である。しかし、移植費用・待機期間の滞在費など数千万円かかるとも言われており、現行法が諸外国と比較して、脳死の場合の臓器提供に関して厳しい制約を設けていることが移植実績が増えない理由であるとの意見もあった。 |
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平成20年の国際移植学会における「イスタンブール宣言」や、本年5月のWHO(世界保健機関)総会において、臓器売買・渡航移植を原則禁止することが提言されたことにより、我が国においても現行法改正の機運が高まった。 |
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本年6月に衆議院でA案が可決され参議院に審議が移った。そこで改正に慎重な参議院議員らによりE案が、さらに、A案の「脳死を人の死」とすることへの抵抗感から否決されることを避ける為、修正A案(A’案) が提出されたが、参議院においてもA案が可決され、1年後の平成22年には改正法が施行される見通しとなった。 |
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臓器・組織の機能が低下し再生不可能の状態になり、移植でしか治すことが出来なくなった際に行う医療のことで、臓器移植と組織移植に大きく分けられる。
臓器の提供は、生きている人(血縁者・配偶者など)から提供される生体移植と死亡した人から提供される死体移植の二つの方法がある。死体移植のうち、腎臓などは心停止後でも移植可能であるが、心臓・肝臓・肺・膵臓・小腸などは、脳死でしか提供できないとされている。
移植医療は、臓器提供者(ドナー:donor)の善意に支えられて行われているのが現状である。 |
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