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米国連邦政府は、原則として個人の生活に干渉しないとい
う自己責任の精神と、連邦制で各州の権限が強いことが、
社会保障制度のあり方に大きな影響を及ぼしている。 |
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医療保障、高齢者の所得保障において、民間部門の果たす
役割が大きく、州政府が政策運営の中心的役割を果たすも
のが多い。また、公的な医療保障の対象は高齢者、障害
者、低所得者等に限定されている。(メディケア、メディ
ケイド等) |
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医療保険制度の最大の特徴として、他の先進国と異なり、
全国民を対象とした医療保障、公的皆保険制度が存在し
ない為、民間医療保険に加入するのが主流で、国民の6
割がこの民間医療保険でカバーされている。 |
メディケア(Medicare)
1965年に創設され、65歳以上の者、障害年金受給者、
慢性腎臓患者等を対象に約4,300万人(2006年)が加入
している。対象人口の9割以上が加入しており、ほぼ皆
保険が実現している。2005年における支出は4,013億ドル
(38.1兆円)である。
メディケイド(Medicaid)
メディケアとともに1965年に創設され、低所得者を対象に
約5,000万人(2006年)が加入している。2006年における
支出は3,086億ドル(36.1兆円)である。実施主体が州単位
である為、受給要件、給付内容は州毎に異なる。
民間医療保険
メディケア、メディケイドの対象とならない米国人は自己
負担で民間医療保険に加入する。大企業は、福利厚生と
して従業員に民間医療保険を提供し、保険料の一部を負担
している場合もあるが、雇用主が医療保険を提供することは
義務ではない為、企業によっては保険を提供しない場合も
ある。
無保険者
メディケア、メディケイドの対象とならず、民間医療保険にも
加入しない(できない)米国人は無保険者となる。加入しない
(できない)理由として、金銭的な理由や持病・既往症により
加入を断られる場合等があげられる。人種別に見るとヒス
パニック系が多く、年齢別に見ると18〜24歳の若年層が
多い。また、米国市民権を持っていない不法労働者も多い。 |
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○ いかなる医療保険の適用も受けていない、いわゆる無保険者が
人口の15.8%の約4,700万人(2006年)に達し、国民の7人に
1人が無保険者という事態の改善は現オバマ政権の大きな課題で
ある。
○ メディケイドは、我が国の生活保護よりも受給基準が厳しいこと
が多い。メディケイドの対象外とされたワーキングプア層は、
民間医療保険にも加入できず無保険者となっている。
○ 無保険者の診療費は全額自己負担となるが、ER(Emergency
Room :緊急救命室)では、法律上患者の診療を拒否できない為、
ERをかかり つけ医として頼る無保険者が多い。当然ながら、
無保険者は診療費の支 払い能力が乏しく、診療費は州税や
医療保険会社等が拠出するフリーケ アプログラムという基金で
賄われており、この状況は救急医療現場の混 雑に拍車をかけ
るとともに医療費を増大させる一因となっている。 |
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各種保険の適用拡大・促進の為の措置として「児童の医療保険
プログラム」が、1997年クリントン大統領によって提案された。児
童のうち、7分の1にあたる約1,100万人が無保険状態にあったが、
各州政府が新たに援助を行う為、240億ドル(2.2兆円)を計上した。
これは、1965年のメディケイド創設以来、最大規模の医療保険に
関する支出となった。ほぼすべての州において実施され、250万人
以上の児童に医療保険が拡大された。 |
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