医療情報室レポート
 

bP28  
 

2009年 1月 30日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特 集 :公益法人制度改革の基礎知識
 
 
昨年12月より始動した公益法人制度改革の最大の論点は、公益を認定する基準であり、それに基づ
いた税制上の優遇措置であると言われているが、法人格を有する本会としては、今回の制度改革につ
いて、正しい知識と理解を深めて対応して行かなければならない。

 公益法人による非効率な補助金の運用や官僚・政治家との癒着などが指摘される中で、行政改革の議論が盛んに行われてきた。また、非営利で法人格を有する団体(非営利法人)の中でも公益性が認定されているか否かで課税の基本税率が異なることに対し、法人間での税制面における不公平を解消すべきとの声も上がっていた。それらの問題を解消すべく、民間非営利団体活動の発展を促進し、公益法人制度の様々な問題に対応するため、平成18年6月、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」が公布され、公益法人制度の改革が進められることとなった。
 昨年4月に内閣府より運用に関するガイドラインが発表され、同年12月に前述の「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」が施行された。今回の制度改革の対象となるのは、旧民法第34条に基づき設立された法人、いわゆる「狭義の公益法人」である社団法人と財団法人であり、学校法人・宗教法人・医療法人・NPO法人など、特別法に基づいて設立された「広義の公益法人」は対象外である。そのため、既存の社団法人・財団法人は、平成25年11月30日までに一般社団法人・一般財団法人または公益社団法人・公益財団法人へ移行しなければならない。
 今回は、そもそも「法人」とは何であるのか、「公益法人制度改革」とはいったいどのような改革なのか、制度の内容や基礎知識をまとめた。

法人とは?
法人の定義
 法人は組織である。法人とは法律によって権利能力(※1)
を認められた団体である。自然人(個人)でなくて、法律上
の権利・義務の主体とされているものを言う。
 社会において法的活動を営むものは、自然人だけではない。一定の目的のために結合した人の団体(社団)や一定の目的のために捧げられた財産の集合(財団)も法的活動を営む。このように法人とは、社団または財団に権利能力を付与し、権利・義務の主体となることを認めたものを言う。
(※1) 法律上、権利義務の主体となることのできる地位または資格。法的人格ともいう。近代法において権利能力を有するものは、自然人(個人)と法人である。
法人のうち営利を目的とするものを営利法人と呼び、そうでないものを非営利法人と呼ぶ。営利とは、法人が外部的経済活動によって得た利益(剰余金)を構成員(社員)へ分配することを意味する。
非営利法人は、昨年12月の法改正により、既存の社団法人・財団法人が一般社団法人・一般財団法人と社団法人・財団法人に分類された。さらに、一般社団法人・一般財団法人のうち、公益性の認定を受けた法人を公益社団法人・公益財団法人と言う。
公益法人制度改革とは?
背  景
公益法人制度は、明治29年の民法制定以来、100年以上抜本的な見直しがされておらず、時代の変化に対応することが出来なくなってきた。
従来、公益法人の設立には、旧民法第34条(新制度において廃止)により国・地方公共団体等の行政機関の許可が必要であり、公益性の認可の基準はその裁量に委ねられてきたため、公益性の認可の基準が不透明であった。
(※2) 公益法人とは、一般的に社団法人・財団法人をさすが、公益を目的とする法人の一つとして、特別法に基づいて設立される法人も含めて公益法人ということがある。それらの法人を「広義の公益法人」と呼び、社団法人・財団法人は「狭義の公益法人」と呼ぶ。
(学校法人、社会福祉法人、宗教法人、医療法人、更生保護法人、
特定非営利活動法人【NPO法人】など)
☆ 既存の社団法人・財団法人は現在、特例民法法人とされ、非営
  利目的の公益法人に分類されている。(@)
☆ 既存の社団法人・財団法人は、平成25年11月30日までに公
  益社団法人・公益財団法人(A)または一般社団法人・一般財
  団法人(B)のいずれかに移行しなければならない。期限までに
  申請を行わなかったり、申請を行ったが認定されなかった場合
  は、解散したと見なされる。
目  的
民間非営利部門の活動の健全な発展を促進し、民による公益の増進に寄与するとともに、主務官庁の裁量権に基づく許可の不
明瞭性等の従来の公益法人制度の問題点を解決すること。(内閣府公益認定等委員会「民による公益の増進を目指して」より)
内容・ポイント
 今回の「公益法人制度改革」により、剰余金を分配しない社団法人、財団法人について、公益性の有無に関わらず登記のみで法人格が取得可能な制度に改正された。
 そのうち、公益目的事業を主目的とする法人を「公益法人」と認定し、国・地方公共団体等の行政機関の監督の下、一定の税優遇措置等を講じる制度改革である。
公益法人を設立するにあたり…
これまでは
@ 主務官庁に公益性を認められた法人しか法人格を取得するこ
  とができなかった
A 法人運営について法律上詳細な規定がなく、主務官庁が立入
  検査を含め監督していた
B 法人設立、運営のための要件は、各主務官庁の裁量権に委ね
  られており、主務官庁ごとにばらつきがあった
特例民法法人について
現 在(平成20年12月1日より)
○ 既存の公益法人は、平成20年12月1日の時点で自動
  的に特例民法法人となる。(現在、福岡市医師会は
  特例民法法人に分類される。)
@ 要件を満たせば、登記のみで一般社団法人、一般財団法人を
  設立可能に!

A 一般社団法人、一般財団法人のうち、基準を満たしている法
  人は、公益社団法人、公益財団法人となることが可能に!

B 基準を満たしているかの判断は、民間有識者から構成される
  国の公益認定等委員会、都道府県の合議制の機関が行う!
○ 特例民法法人は、移行認定の基準に適合するよう定款
   変更などの準備を進め、平成25年11月30日までに
   公益社団法人・公益財団法人または一般社団法人・一
   般財団法人への移行申請を行う必要がある。
特例民法法人は次の法人形態への移行まで…
・ これまでどおりの名称が使用できる(「社団法人〜」、
  「財団法人〜」のままで良い)
・ 引き続き、従来の主務官庁により監督され、同等の税制
  措置が行われる
○ 新制度移行後は、適正な運営を確保するために法人の
  監督について、国・地方公共団体等の行政機関の監督
  を受ける。(運営・事業活動について報告の徴収、立入
  検査の実施)
○ 法令に違反する疑いがある場合は、勧告・命令・公益
  認定の取消があり、取消の場合、公益目的事業財産の
  残額を1か月以内に公益的団体などに贈与しなければ
  ならない。
<医療情報室の目>
 従来の公益法人は民法により設立されていたが、公益法人に関する規定は60条にも満たないものであった。また、設立手続きや公益性の認定についても曖昧な部分が多かったが、新制度では法人の設立と公益性の判断が分離され、それにより公益性の判断基準がより明確になり透明性が増すとされている。
 公益法人制度が議論される際に、営利企業と非営利法人の税制面の不公平が多く取り沙汰される。しかし、非営利法人は利益を分配しないため法人税の根拠がない。したがって、税制面の優遇措置はあって然るべきで、営利企業においても、特有の優遇税制や補助制度が整備されており、また利潤を最大化し分配するため、資金調達が非営利法人と比較して容易である。営利企業は、利己的な動機により経済活動を活性化させる一方、非営利法人は利他的な動機により社会を安定させる効果があり、それぞれ我が国の社会・経済システムの中で相互補完的な役割を担っている。
 一般社団法人・一般財団法人と公益社団法人・公益財団法人は、運営・税務面等において相違があり、一方の形態が他方より優れているということは断定できないが、日本医師会は、医師会組織が円滑に「公益社団法人」としての法人格が取得できるよう、迅速な情報提供と全国の医師会との連携に努め、関係省庁との連絡・調整を重ねている。本会も発足100年以上の歴史を重ね、政令市医師会として学術の振興、保健・医療・福祉の向上に関する事業や公益的な役割を担ってきたが、今回の制度改正に伴い、「公益社団法人」への移行準備を進めている。本会は様々な現業部門を抱えており、今後の事業展開を検討する上で数々の制約が付随するため、移行は主体的かつ慎重に検討する必要があり、福岡市医師会平成20年度事業計画において「医師会組織に求められる公益性を見極め組織改革に取り組む」と明記し、また「公益法人対策室」、「公益法人改革検討会議」を設置して移行形態の検討及び情報収集に努めている。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 工藤 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 原  祐 一(広報担当)・竹中 賢治(地域医療担当)・徳永 尚登(地域ケア担当)


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