医療情報室レポート
 

bP08  
 

2007年 5月 25日
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:医療費の「過払い・未払い」


 ★医療費の過払いや未払いの問題がクローズアップされ、社会的な関心を呼んでいる。医療費過払いの総額は、
  政府管掌保険と船員保険では、平成15年からの3年間で少なくとも1億円、国民健康保険 では、年間数億円
  規模に上ると見られている。一方、医療費未払いの総額も年間数百億円規模と莫大で、これは医療機関の経営
  難に追い討ちをかけ、破綻に追い込みかねない大きな火種となっている。

 保険者が医療機関に支払った額を被保険者に通知する医療費通知は、被保険者に医療保険制度に対する意識を深めさせ、
コスト意識を喚起させることが本来の役目だが、保険者側からすれば医療機関の架空請求等に対して心理的な抑止効果も期
待している側面がある。
 診療報酬の審査により医療費に減額があった場合には、保険者より医療費の過払いを知らせる減額通知を附記することとな
っているが、昨年、政府管掌保険と船員保険において45都道府県の社会保険事務局で減額通知を怠っていたことが判明した。
市町村が運営する国民健康保険においても、全国の約4割に当たる784市町村で同様のケースが明らかになった。
 これに対し、厚生労働省は減額通知の更なる徹底を要請している。
 医療費削減政策により、医療機関の経営は厳しさを増す一方だが、支出削減の努力を続ける医療機関にとって、ここに来て
患者側の医療費の未払いも、見過ごす事の出来ない問題となってきた。
今回は、いわゆる医療費の「過払い・未払い」問題を解説する。
  


●医療費の過払いとは?

●医療費の未払いとは?


<医療情報室の目>
 社会保険庁が医療費の過払い通知を怠っていたニュースは、診療報酬審査についての丁寧な背景説明が不足した一面的な報道もあって、一般の国民には、医療機関の不正請求の結果「過払い」が生じたと受け取られているところがある。
 診療報酬の審査で減点査定の対象となるのは、記号・番号の誤りや病名の記載漏れといったケアレスミスが大半なのに、医療機関が故意に高い点数で算定した診療費用を窓口で患者さんに請求した結果が過払いなのだという誤った認識を生んでいる。こうした誤解を正さない国や一部報道機関の姿勢には猛省を求めたい。また、患者が払い過ぎた部分については、医療機関に返還を求めることが出来るとしている点についても、薬品や医療材料など、治療の過程で現物給付したものに対する評価の視点が欠落している。患者さんに「金は返すから、治療に使った薬や医療材料は返して下さい」と言えというのだろうか。
 一方、医療費の「未払い」問題は、かねてから指摘されているが、格差社会を背景とする低所得者層の増加や国民一般のモラル低下、更には医療制度改革に伴う患者自己負担額の増加等の影響でますます深刻化している。この問題は、医療機関の経営難にも直結する、我々医療関係者にとって本当に切実な問題である。
 医療費の「過払い・未払い」は、医療保険制度上の双子の問題と言ってもいい。敢えて言えば、医療機関は窓口負担を徴収せず、医療費を全額保険者に請求できるような制度になればこの問題は解決するのである。
 医療制度を論じるのは政治の役目だが、そこに医療人の視点を加えていくためには、我々医師会員が日常的に政治への関心と参加の姿勢を明らかにして、声を上げ続けていくことが求められている。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 工藤 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 原  祐 一(広報担当)・原 村 耕 治(地域ケア担当)


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