医療情報室レポート
 

bP07  
 

2007年 4月 27日
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:後期高齢者医療制度


 後期高齢者医療制度の診療報酬体系について定額制 ・人頭払い、かかりつけ医への患者登録制によるフリーアクセスの制限等の議論を巡って憶測が飛び交っているが、これらは未だ決定事項ではない。
 厚労省は現在「後期高齢者の診療報酬体系の骨子」の策定に向けパブリックコメントを募集中で、患者の自己負担と給付費のみ決定している段階である。

 平成18年6月に成立した医療制度改革関連法の中の「高齢者医療確保法」により、平成20年4月から、現行の老人保健制度に替わって、75歳以上の後期高齢者を対象とする独立した医療制度が新設される。
 この新たな「後期高齢者医療制度」は、「後期高齢者の心身の特性等にふさわしい診療報酬体系を構築する」として、来春の施行に向けて、現在、 厚労省の社会保障審議会医療部会で、日医を始めとする関係団体・機関、学識経験者等の委員による検討が続いている。日本医師会は、厚労省の 原案に対しては、財政主導の姿勢を批判する一方、「施設から在宅へ」の方向性は間違っていないとしつつも、それ以外の選択肢も必要などの基本 見解を明らかにした。
 厚生労働省は、3月29日に開かれた「第7回社会保障審議会・後期高齢者の医療の在り方に関する特別部会」で「後期高齢者医療の在り方に関する基本的考え方(案)」を示し、今後、これを基に「後期高齢者の診療報酬体系の骨子」をまとめる予定である。
 1年後に施行が迫った「後期高齢者医療制度」とはどういう制度なのか、現時点での概要と日本医師会の主張等をまとめた。
  


●後期高齢者医療制度とは?

  平成20年4月から新設される75歳以上の後期高齢者を対象にした独立の医療保険制度。
  厚生労働省は、新制度により「後期高齢者の心身の特性等にふさわしい医療」を提供するとしている。
  本制度施行に伴い、現行の老人保健制度は廃止される。
  平成20年度の医療費見込みは、給付費10.3兆円、患者負担1.1兆円


●現行制度との違いは?


▲日本医師会はどう考えている?

  日医は平成18年10月に「高齢者の診療報酬体系検討委員会」を設置し、 そこでの検討を踏まえ、今年2月に後期高齢者医療制度に対する基本的な考え方をまとめた。

☆保険と保障
 保険とは掛け金を支払い、 損失が生じた場合に契約によって金銭が支払われる仕組み。生命保険、損害保険、健康保険などが一般的。国が行う保険の 事を「社会保険」というが、日本の社会保険は「医療保険」「年金」「介護保険」「労働者災害補償保険(労災)」「雇用保険」の 5つから成り立っている。日本においては、生命保険、損害保険は企業が運営し、上記の5つの保険は国が運営する役割分担 がなされている。
 一方、保障とは日本国憲法第25条に記された「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(生存権)」に基づき、国が国民に 約束している権利である。日本の社会保障制度は社会保障制度審議会の分類によれば、社会保険、公的扶助(生活保護)、 社会福祉(老人福祉、児童福祉など)、公衆衛生及び医療(感染症対策、上下水道整備など)、老人保健の5本の柱から成って いるとされ、広義ではこれらに恩給と戦争犠牲者援護を加えている。
☆フリーアクセス
 日本の医療制度の特徴の 一つにフリーアクセスが挙げられる。一般的には、保険証さえあればどの医療機関でも受診ができ、保険診療が受けられる ことを意味することが多い。一方、このフリーアクセスが大病院への患者の集中を招き、軽症患者も大病院に殺到し、病院の医師の 過重労働の原因ともなっているといわれる。
 他方、フリーアクセスとは「医療システムへのフリーアクセスを意味するものであり、どの医療機関でも良いというわけではない」、 という意見もある。
 この意見に従えば、病院の外来へは紹介状がないと保険での受診ができないという仕組みになったとしても「フリーアクセス」は 守られているということになる。

<医療情報室の目>
   「後期高齢者の心身の特性等にふさわしい診療報酬体系を構築する」と謳って後期高齢者医療制度が来年スタートする。
 後期高齢者の心身の特性とは、「老化に伴う生理機能の低下」「治療の長期化」「複数疾患への罹患」などなど。
 では、この特性にふさわしい診療報酬体系とは何なのか。「適正化」の名の下に、医療費抑制の「つけ」を一部負担や保険料増という形で、 お年寄りに押しつけることではあるまい。
 75歳以上の後期高齢者は、発病率、病院の受診回数、医療費などすべてが一挙に高くなるので、保険原理ではなく保障原理で対応する ことが合理的であるし、公費負担を中心に据えた制度こそ、真に「心身の特性にふさわしい」制度と云えるのだ。
 始めに「医療費削減ありき」の財政中心の思想が優先される限り、地域別保険料や特例診療報酬などの、個人間・地域間の格差を助長するような 発想が生まれ、一方で個々のお年寄りの生活状況へのきめ細かい目配りが欠落したまま、後期高齢者は在宅医療に誘導すればいいという流れが 定着してしまう。療養病床の削減が良い例だ。
 高齢者人口が増加すれば、慢性疾患に対応する医療療養病床の必要性は増す一方なのに、一挙に15万床に減らしてしまうことは、医療難民と 介護難民を意図的に生み出す暴挙としか言えない。現在、在宅での医療が困難な75歳以上の世帯が急速に増加しているという。
 日医は、後期高齢者は在宅医療という限定された議論ではなく、老々介護や独居という個々のお年寄りの事情に十分配慮した制度設計をすべきと しているが、人あっての制度であり、経済優先は許されないということを政府は肝に銘じてほしい。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
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担当理事 原  祐 一(広報担当)・原 村 耕 治(地域ケア担当)


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