医療情報室レポート
 

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2006年 2月24日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:医療制度改革の方向

 政府は2月10日の閣議で「医療制度改革関連法案」を決定、国会へ提出している。
 法案は健康保険法等の改正に関する「健康保険法等の一部を改正する法律案」と、医療法等の改正に関する「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案」からなる。
 健康保険法の主な改正内容は、医療費抑制の為、高齢者を中心とした患者負担の引き上げ、入院日数の短縮や生活習慣病予防対策の実施等、医療法改正の内容は医療計画制度の見直しや情報提供体制の見直し、医療法人制度改革等となっている。今回は、現在、衆議院で審議中の「医療制度改革関連法案」から主な内容を纏めた。



健康保険法等改正案

  健康保険法等改正案は、医療費適正化の総合的な推進、新たな高齢者医療制度の創設、保険者の再編・統合等となっており、 その中から療養病床の取り扱いについて纏めた。

  1.療養型病床の再編

  厚労省の調査
    厚労省では療養病床について大規模な調査を実施、医師による治療が「殆ど必要ない」とする患者が約半数、「週1回程度」の患者が約3割として所謂「社会的入院」の解消を目指すとしている。

  現状数と病床の削減
    現在、療養病床は38万床(医療型25万床、介護型13万床)。
厚労省は、療養病床は医療型15万床へ削減、介護療養型医療施設は平成23年度末で廃止、残りの23万床は老健や居住系サービス、在宅へ転換するとしている。

  経過措置
    療養病床から老健施設などへの変換には、人員配置や設備基準等緩和した経過的類型が設けられる。
 医療保険・・・介護保険移行準備病棟
 介護保険・・・経過型介護療養型医療施設
 (共に医師2 看護8対1 介護4対1)

  問題点(日医等による指摘)
  議論が拙速
  医療機能の分化・連携や早期の在宅移行を推進する問題と介護療養型医療施設の廃止は直接結びつかない。
  見直しが財政的見地、医療の必要性が高い患者をも排除


  2.その他主な改正内容

 
平成18年10月〜
  現役並み所得の70歳以上の窓口負担を2割から3割へ
  療養病床(医療保険)入院の70歳以上入院患者の食住費を全額自己負担へ
  特定療養費を廃止、評価療養、選定療養からなる「保険外併用療養費」を新設
  国保の保険財政共同安定化事業創設
  「地域型健保組合」の経過措置
 
平成20年4月〜
  医療費適正化
  新高齢者医療制度の創設
  40歳以上の被保険者等に健診及び保健指導の実施を保険者に義務付け
  70〜74歳迄の高齢者の患者負担を1割から2割へ
  療養病床(医療保険)食住費自己負担を65歳以上に拡大
  乳幼児の自己負担(2割負担)の対象年齢を3歳未満から義務教育就学前まで拡大
  療養病床を対象とした病床転換助成事業創設

医療法等改正案

1.患者等への医療に関する情報提供の推進

    患者等が医療に関する情報を十分に得られ、適切な医療を選択できるよう支援する。

  都道府県が医療機関等に関する情報を集約し、分かりやすく住民に情報提供し、住民からの相談等に適切に応じる仕組みの制度化
  入退院時における治療計画等の文書による説明の位置付け
  広告規制の見直しによる広告できる事項の拡大

2.医療計画制度の見直し等を通じた医療機能の分化・連携の推進

    医療計画制度を見直し、地域連携クリティカルパスの普及等を通じ、医療機能の分化・連携を推進。早期在宅への復帰を図る。

  医療計画に脳卒中、がん、小児救急医療等、事業別の具体的な医療連携体制を位置付け
  医療計画に分かりやすい指標と数値目標を明示、事後評価できる仕組み
  退院時調整等在宅医療の推進のための規定整備
  3.地域や診療科による医師不足問題への対応

    僻地等の特定地域、小児科、産科などの特定の診療科における医師不足の深刻化に対応し、医師等医療従事者の確保策を強化する。

  都道府県の「医療対策協議会」を制度化し、関係者協議による対策を推進
  医療従事者への地域医療確保への協力の位置付け

4.医療安全の確保

  医療安全支援センターの制度化、医療安全確保の体制確保の義務付け等
  行政処分を受けた医師、歯科医師、薬剤師及び看護師等に対する再教育の義務化、行政処分の類型の見直し等

5.医療法人制度改革

    医業経営の透明性や効率性の向上を目指す。
公立病院等が担ってきた分野を扱う医療法人制度を創設する。

  解散時の残余財産の帰属先の制限等医療法人の非営利性の徹底
  医療計画に位置付けられた僻地医療、小児救急医療等を担うべき新たな医療法人類型(「社会医療法人」)の創設等

  6.その他

  施設規制法の性格が強い現行の医療法を、患者の視点に立ったものとなるよう、目的規定及び全体的な構造の見直し
  有床診療所に対する規制の見直しその他所要の改正

  7.施行期日

  平成19年4月1日を基本
  有床診療所の見直しは平成19年1月1日
  薬剤師、看護師等の再教育の義務化、行政処分の類型の見直し等は平成20年4月1日

 

<医療情報室の目>
★介護型医療施設の廃止
 介護型療養病床の廃止で最も問題となるのは入所者の受け入れ先である。厚労省は、医療保険、介護保険の療養病床合計38万床から23万床を廃止して、医療保険15万床のみを残すとしている。 患者の受け入れ先とされるのは「老人保健施設」(15〜17万床)、「居住系サービス、在宅」(6〜8万床)へと分けられている。 在宅における対応については今回の改定で新設される「在宅療養支援診療所」も含まれているが、承認要件が厳しく、 6年後に数万人規模の受入体制が出来ているか極めて不透明である。
★医政への関心
 昨今の医療制度改革で常に強調されているのは、今回の健康保険法や医療法の改正案を含め、医療費抑制の為の改革 内容である。患者への負担増、医療機関への負担増と劣悪な医療環境が作られてきた背景には、医療関係者の「医療行政」への無関心も 一因ではないかと思われる。この状況を改善する為には、我々医療界の見解を国政に伝える為にも「医療 行政」への関心を持ち続けることが不可欠ではないかと考える。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 立石 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 津 田 泰 夫(広報担当)・入 江 尚(情報担当)・大 木 實(渉外担当)・原 村 耕 治(地域ケア担当)


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