医療情報室レポート
 

bX3  
 

2006年 1月27日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

印刷用

特集:介護保険と医療保険−その3−

 昨年末、政府・与党は平成18年度診療報酬改定における改定率を3.16%(本体部分1.36%、薬価1.8%)引き下げることを決めた。下げ幅は過去最大、平成14年度改定の際のマイナス2.7%を大きく上回ることになった。また、同時に行われる介護報酬の改定率についても0.5%の引き下げとなった。介護保険においては昨年10月に食費・居住費を自己負担化されたことも合わせ引き下げ率の合計は合計2.4%となっている。
 今回のレポートでは介護保険の改定内容について「平成18年度介護報酬改訂に関する審議報告」及び 厚労省が自民党社会保障制度委員会の介護委員会で説明した内容(枠内太字)から、医療保険の改定内容については、1月18日の中医協総会で平成18年度診療報酬改訂の骨子から纏めてみた。
  

介護保険

 介護予防
介護予防通所介護、通所リハ・・・目標の達成度が高い事業所に「事業所評価加算」導入
介護予防訪問介護・・・現行の身体介護・生活援助の区分を一本化、月単位の定額報酬に
 地域密着型サービス
グループホーム…健康管理・医療連携体制の強化、空き居室を活用した短期利用の導入等の見直し
認知症対応型通所介護…グループホーム等の共用スペース活用等
 居宅介護支援・介護予防支援
要介護度別の設定と初回時の評価
退院、退所時の医療機関・施設と在宅との連携を評価
居宅介護支援で中重度者等に対応している事業所に「特定事業所加算」創設
 訪問看護
短時間訪問の評価、緊急時訪問看護加算、ターミナルケア加算、特別管理加算の見直し等
 訪問介護
ヘルパーのうち介護福祉士の割合が一定以上や、要介護4,5の利用者が一定割合以上等の事業所を特定事業所として2段階で加算評価
 訪問リハビリテーション
短期・集中的なサービス提供を評価するため利用期間に応じた評価
言語聴覚療法、嚥下訓練の評価
 居宅療養管理指導
医師等のサービス担当者会議への参加、文書での情報提供の徹底
管理栄養士による栄養ケア・マネジメントの評価等の評価
 通所系介護サービス
現行の時間単位の体系を維持
機能訓練・リハについてプロセスを重視した評価
栄養改善、口腔機能の向上、若年認知症ケア等への取り組みを評価
医療機関や訪問看護サービス等との連携体制を強化した通所サービスの提供の評価
 介護老人福祉施設
夜間の看護体制強化や看取りに関する体制の整備、多職種協働のチームによるターミナルケアの評価
「計画的な定期利用」等施設の利用形態の多様化
 介護老人保健施設
「試行的退所」や在宅復帰支援を行う小規模の老人保健施設の評価
リハビリテーションは在宅復帰・在宅生活支援のためプロセス評価に重点を置き再編
短期・集中型のリハ、認知症高齢者への早期リハの評価
 介護療養型医療施設
療養病床における介護保険と医療保険の機能分担
「在宅復帰・在宅生活支援重視型の施設」や「生活重視型の施設」等への移行
生活環境や在宅支援機能を充実した体制について一定の期限を定め評価
重度療養管理加算の見直し
療養環境減算の減算率を拡大
一定の療養環境を満たさない施設は、施設の移行に関する計画を求めた上、原則1年後に現行の経過措置廃止
老人保健施設や有料老人ホーム等への転換を見越した措置として、医師・看護職員配置を緩和した「経過型介護療養型医療施設サービス費」を創設

医療保険

<主な引き下げ項目>
 初診料
病院は引き上げ、診療所は引き下げ(病診の点数を統一化)
 再診料
病院は引き下げ、診療所はそれ以上に引き下げ(病診の点数格差を是正)
 外来診療料
引き下げ、包括範囲からヘモグロビンA1C測定を除外
 診療情報提供料
現行体系を大幅に簡素化し全体として引き下げ
 生活習慣病指導管理料
院内処方は引き下げ、院外処方はそれ以上に引き下げ

<廃止される項目>
 手術に係る施設基準
年間手術症例数による加算は一旦廃止
 紹介患者加算
廃止
 紹介率を基準とした入院基本料等加算
廃止

<新たに設けられる項目>
 在宅医療
在宅療養支援診療所(仮称)を創設
 ニコチン依存症への禁煙指導
新設 ニコチン依存症患者で禁煙希望の者へ一定期間禁煙指導
 がん診療連携
新設 他の医療機関からの紹介による悪性腫瘍の患者を入院治療した場合加算
 ハイリスク分娩の管理
新設
 精神医療
発達障害児、引きこもり、不登校等の患者へ心身医学療法を行った場合の加算を新設
 臓器移植
心臓移植、脳死肺移植、脳死肝臓移植及び膵臓移植を保険適用、脳死判定・医学管理に評価新設

<重点的に配分される項目>
 在宅医療
在宅療養支援診療所(仮称)で退院時の指導や24時間体制は評価引き上げ、連携先の医療機関等からの緊急往診・訪問看護に対し加算
訪問看護の重症者管理加算・住宅移行管理加算は患者の重症度等により引き上げ
在宅患者訪問診療料、在宅患者訪問看護・指導料、訪問看護療養費におけるターミナルケアに係る評価で、要件の改めととも在宅療養支援診療所(仮称)が関与する場合に評価引き上げ
 小児医療
乳幼児加算、時間外・休日・深夜加算の簡素化
小児入院医療管理料の引き上げ
地域連携小児夜間・休日診療料・・・中核的な役割を担う病院に係る評価を引き上げ
 医療安全対策
急性期入院医療で医療安全管理者の設置による加算、褥瘡管理による加算を新設
 麻酔管理料、病理診断料
引き上げ

<その他>
 診療報酬体系の簡素化
老人診療報酬点数表を医科診療報酬へ原則一本化
 医療費の領収書発行
医療費内容の領収書義務化の方向
 患者の視点の重視
セカンドオピニオンにおける情報提供を評価 等
 理学療法、作業療法、言語聴覚療法
脳血管疾患等リハ、運動器リハ、呼吸器リハ、心大血管疾患リハの4つの疾患別の評価体系に改正、集団療法に係る評価は廃止
 一般病棟入院基本料等
看護職員配置1.4対1、2対1、2.5対1、3対1の4区分で評価
 有床診療所入院基本料
48時間超入院禁止の医療法規定は廃止の方向を踏まえ、看護職員配置による区分を簡素化、入院期間に応じた加算に係る入院後早期の評価引き上げ、長期入院は引き下げ
 コンタクトレンズに係る診療
コンタクトレンズ処方後、疾病が疑われない眼科学的検査は保険給付外 等

 

<医療情報室の目>
★初診料・再診料の格差是正
  現在、中医協では上記項目の具体的な内容について検討中である。新たな項目として禁煙指導に関する点数や在宅療養支援診療所、領収書の発行、セカンドオピニオンに関する項目などが追加されている。今回改定の医科1.50%の引き下げ枠の中で新たな内容の項目が設けられていることは、既存の点数が大幅に引き下げ、又は削除されることを意味している。
  特に初診料・再診料については、診療所と病院の点数格差を初診料は統一化(現行:診療所274点、病院255点)、再診料は格差是正(現行:診療所73点、病院58点)することが方針として決まっており、具体的な数字は未だ不明ではあるが、医療機関の医業経営に益々深刻な損害をもたらすことは確かである。
  尚、紹介状のない患者が200床以上の病院を受診した場合に初診料を大幅に引き下げる方針については、支払い側、診療側委員双方の反発が強いため見送られることが決まっている。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 立石 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 津 田 泰 夫(広報担当)・入 江 尚(情報担当)・大 木 實(渉外担当)・原 村 耕 治(地域ケア担当)


  医療情報室レボートに戻ります。

  福岡市医師会Topページに戻ります。