医療情報室レポート
 

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2005年 6月 24日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:中医協改革

 中医協(中央社会保険医療協議会)改革が大詰めを迎えている。中医協の在り方について、見直しの議論が高まったのは、平成16年春に診療側代表(歯科)と保険者代表の中医協委員が起こした贈収賄事件が発端である。
 昨年12月、厚生労働省には「中医協の在り方に関する有識者会議」が設置され、本年3月より会合を開始。
 同会議では委員の任期や診療報酬の決定に至る手続きの透明化、国民の声を反映する仕組みについて検討され、今年の秋までに改革内容について結論を出す予定である。6月1日の第5回会合では、委員の任期については、最長6年、また、診療報酬の決定については、諮問後即日答申の形は改められるとされた。
 今回は我々医療従事者に直接的に影響する診療報酬の決定に、大きく関わっている「中医協改革」についてまとめてみた。



中医協とは

 
中央社会保険医療協議会。1950年に発足した厚生労働相の諮問機関。
2年毎の医療費全体の改定率及び、診療報酬(治療、検査、薬剤など)の改定内容について審議している。
診療報酬改訂内容は支払側と診療側が交渉、意見の対立を公益委員が調整し決定している。


 
中央社会保険医療協議会委員名簿
(平成17年4月26日現在)
代表区分 氏名 現役職名
健康保険、船員保険及び国民健康保険の保険者並びに被保険者、事業主及び船舶所有者を代表する委員 青柳 親房 社会保険庁運営部長
対馬 忠明 健康保険組合連合会専務理事
小島  茂 日本労働組合総連合会生活福祉局長
勝村 久司 日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員
宗岡広太郎 株式会社日立製作所取締役監査委員
大内 教正 全日本海員組合中央執行委員
飯塚  孜 国際エネルギー輸送株式会社代表取締役社長
松浦 稔明 香川県国民健康保険団体連合会監事
医師、歯科医師及び薬剤師を代表する委員 櫻井 秀也 日本医師会副会長
松原 謙二 日本医師会常任理事
青木 重孝 日本医師会常任理事
野中  博 日本医師会常任理事
佐々 英達 日本医師会(全日本病院協会会長)
黒崎 紀正 日本歯科医学会副会長
登利 俊彦 日本歯科医師会常務理事
漆畑  稔 日本薬剤師会副会長
公益を代表する委員 ◎星野 進保 総合研究開発機構客員研究員
村田 幸子 ジャーナリスト
土田 武史 早稲田大学商学部教授
遠藤 久夫 学習院大学経済学部教授
専門委員 針ヶ谷照夫 群馬県板倉町長
大島 伸一 国立長寿医療センター総長
向田 孝義 アステラス製薬株式会社常務執行役員
奥田 秀毅 塩野義製薬株式会社常務取締役
内匠屋 理 株式会社クラヤ三星堂代表取締役会長
山崎 正俊 旭化成メディカル株式会社顧問
田中 凡實 株式会社田中三誠堂代表取締役社長
廣瀬 光雄 有限会社マベリックジャパン代表取締役社長
岡谷 恵子 日本看護協会専務理事
※◎:会長(平成17年6月11日付辞任)


有識者会議における検討

 ★「中医協の在り方に関する有識者会議」
H17/6/1標記第5回会合にて検討された3項目及びその結果は次のとおり。
 
「委員の任期」
最長6年、再任は2回まで。

診療報酬の決定手続きの
透明化と事後評価

@
審議課程の一層の透明化は進めるべきであるが、
例外的に非公式の協議も認める。

     
A
診療報酬改訂の試問を受け、即日答申する形は改める。
慎重に協議して答申する。

国民の声を反映する仕組み
国民の意見を聞く機会を設定することに異論なし。
「国民」とはどのような立場かを明確にすべき。


 
第4回会議における議論のまとめ
診療報酬改訂に関する企画・立案の在り方との関係を含めた中医協の機能・役割の在り方について
基本的な医療政策の審議については、厚生労働大臣の下における他の諮問機関(具体的な候補としては、社会保障審議会の医療保険部会および医療部会)に委ね、そこで診療報酬改訂に係る基本方針を定める。

改定率については、制度的には予算編成課程を通じて内閣が決める問題であるということを明確に確認する。中医協においても、医療経済実態調査などを踏まえて議論を行い、その結果を厚生労働大臣に意見として進言することがあり得る。

診療報酬改訂については、予算編成課程を通じて内閣において決定された改定率及び厚生労働大臣の下における他の諮問機関において策定された基本方針に基づき、中医協において審議を行う。
公益機能の強化について
三者構成は基本的に維持する。

公益委員の数は現在よりも増やす。

診療報酬改訂の結果の検証の機能を公益委員に担わせる。
病院等多様な医療関係者の意見を反映できる委員構成の在り方について
三者構成の下での各側委員については、出来る限り明確な考え方に基づき、構成されるべきである。

支払側委員については、社会保険庁の在り方の見直しや船員保険の位置付けといった観点を総合的に勘案しつつ、委員構成の見直しを行うべきである。その際、医療保険における都道府県の役割についても、十分検討するべきである。

診療側委員については、国民の目に見える形で病院の意見を反映できる医師の参画を推進し、委員構成の見直しを行うべきである。

推薦制は、三者構成と密接に関連する制度ではあるが、推薦制に基づく現状には問題がある為、その改善について、その存廃も含めて十分検討するべきである。
※太字は福岡市医師会による

骨太方針2005

 ★「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」
H17/6/21内閣府にて閣議決定された基本方針には次の内容が掲載されている。
 
中医協改革
@ 公益機能を強化し、病院等多様な医療関係者の意見を審議に反映させるため、公益委員の人数など委員構成を見直す。
A 診療報酬改定に係る基本的な医療政策の審議は厚生労働大臣の下における他の諮問機関にゆだねた上で、中医協はこの基本的な医療政策や内閣において決められた改定率を前提として個別診療報酬点数の改正案を審議することとし、その機能・役割を明確化する。
B 診療報酬改定の結果を検証する機能を公益委員に担わせる。

 

<医療情報室の目>
★見直しの議論の中で
 中医協の見直し議論が始まったのは、贈収賄事件がきっかけであるが、報道の中には「事件の背景には中医協の委員構成や運営など構造的問題にある」「中医協委員が診療報酬に関係する全ての決定権を握っている」との論調がみられた。
 しかし、診療報酬の改定率について厚労省は「診療報酬改定、政府の予算編成に当たって大きな影響を持つものなので、中医協での審議結果を踏まえて最終的には政府の責任において決定されるもの」との認識を示しており(4/28厚生労働委員会 西島英利参議院議員の質問に対する答弁)、事件の原因は(当時の)委員個人の問題にあると考えられる。

 今後の医療界には、次年度の診療報酬・介護報酬の同時改定、医療費伸び率管理制度の導入、高齢者医療制度の設立、保険者の統合問題など様々な問題が山積している。医療現場の意見を代表するのは日本医師会であることに異論はなく、改革後の中医協に専門的な意見は不可欠である。
 また、国民の意見を反映するためには、更なる議論が必要であるが、今後の中医協には、我々医療関係者にも難解で複雑化した診療報酬体系の見直しと、公正で国民に理解しやすい審議の透明性の確保が必要である。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 立石 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 津 田 泰 夫(広報担当)・入 江 尚(情報担当)・大 木 實(渉外担当)・原 村 耕 治(地域ケア担当)


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