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2004年10月29日
福岡市医師会医療情報室
TEL852-1501・FAX852-1510
特集:医療安全対策その2
−福岡市医師会成人病センターの取り組み−
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医療安全対策には、医療機関に於いて「人」「もの」「施設・組織」を軸として考え、実践していくことが必要である。
福岡市医師会成人病センターでは、財)日本医療機能評価機構により行われている病院機能評価を受けており、評価の中には医療安全対策への取り組みについての項目も含まれ、様々な安全対策を講じている。
病院では既に医療安全対策が義務化され、各病院においてはそれぞれ安全対策を進めている所であると思われるが、今回のレポートでは、医療安全対策特集の2回目として、本会成人病センターにおける独自の安全対策の取り組みについて紹介したい。
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福岡市医師会成人病センターでは、平成12年8月に医療事故予防対策委員会を立ち上げ、全職員を対象に「ヒヤリ・ハットアンケート」を実施した。これは過去に一度でもヒヤリ・ハットを経験したり見たりした事例があるか、また、その場所や内容について尋ねるものであった。委員会では、これらの資料を分析して「医療事故予防対策マニュアル」にまとめ、具体的なケースを挙げて全職員に配布した。また、原因を検討する過程で集約された5つのキーワードも作成した。
委員会は平成14年6月に「医療安全管理対策委員会」に改称され、現在毎月1回各部門から提出されたインシデントレポートを分析するとともに、その都度改善策を検討し実施している。また、併せて重要な事例については委員全員による現場検証を行い、なぜ危険な事例が引き起こされるのかを多数の目で検証し防止策につなげている。
重要なことは、これらの一連の活動を「犯人探し」ではなく「システム改善のチャンス」と捉えて取り組んでいる点である。
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福岡市医師会成人病センター
医療事故予防5つのキーワード
1.フルネーム!
2.耳でも確認!
3.互いに声出し!
4.いつもの観察!
5.身の回りから!
ヒヤリ、ハット事例の多かったものに対する予防のための5つのキーワードを作りました。
常にこれらを意識して業務に臨みましょう。
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1. |
患者さんの取り違いの無いようフルネームで名前を確認しましょう
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2. |
注射、投薬、輸血の内容を耳でも確認しましょう
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3. |
指示・指示受けは誤りの無いように声を出して確認しあいましょう
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4. |
いつもと変わったことがないか、患者さんの観察を怠らないようしましょう
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5. |
事故を防ぐ環境づくりを心がけましょう。
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福岡市医師会成人病センター医療安全管理対策委員会
これまでの主な改善策の評価について(H16.9.7) |
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項 目 |
期待する効果 |
評価(H15.12.2現在) |
評価(H16.9.7現在) |
1 |
同姓同名シール |
患者取違いの予防 |
ある程度効果あり、使用中 |
効果あり、ドックは完全実施 |
2 |
同姓同名印の作成 |
カルテ以外での患者取違い予防 |
あまり使われていない |
同左、有効であり今後奨励する。 |
3 |
フルネーム生年月日での本人確認ポスター |
患者取違い予防 |
有効・日常的に使用 |
窓口で効果的、継続奨励する。 |
4 |
シグマート、パンプ(外装同じピンク) 薬剤保管方法の変更(病棟) |
薬剤取違い防止 |
効果的、以降取違い無し |
効果的、継続中 |
5 |
薬剤棚の整理(薬局) |
薬剤取違い予防 |
効果大、以後ほぼ誤認無し |
効果大、継続して実施する。 |
6 |
外来処方箋の様式変更 |
複写文字欠落防止 |
効果大、以降誤認無し
印刷ズレの問題が新たに発生するも、書式変更し完全に対処できた。 |
効果大、継続中 |
7 |
循環器室カーボンマットの使用方法変更 |
転落対策 |
効果大、その後転落無し |
現在、別機種に更新。解消。 |
8 |
安心マットセンサー |
ベッドサイドでの転倒予防 |
日が浅く実績不明 |
痴呆者、Pトイレ使用者に使用中 |
9 |
血液製剤使用説明書・同意書 |
クレーム予防 |
効果的、クレーム無し |
継続中、現在、説明・同意書は多方面で実施中 |
10 |
処方箋記入方法の統一 |
指示受けミスの予防 |
効果あるも一部に不徹底 |
効果上がっている。ほぼ実施中 |
11 |
変更指示箋の作成徹底 |
指示受けミスの予防 |
効果的、一部口頭指示あり |
100%実施中 |
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項 目(平成16年追加分) |
期待する効果 |
評価(H15.12.2現在) |
評価(H16.9.7現在) |
12 |
当日検査メニューチェック表の配布
(各検査部門と患者本人用) (1月) |
患者・検査内容取違い防止 |
− |
効果大、100%実施中 |
13 |
毎年4月に伝票書き方の講習会を開く薬剤の記述を単位数表記に統一する
(1月) |
薬剤取違い予防 |
− |
未実施、今後予定する。 |
14 |
アルマール→ジェネリック(アロチノイル)に変更 (3月) |
薬剤取違い予防 |
− |
効果大、100%実施 |
15 |
センサーマットをベッドサイドに密接する(2月) |
転倒時の早期発見 |
− |
実施中、予防的効果は薄い。 |
16 |
内視鏡モニター上に朱色の「禁生検」札を置く (2月) |
バッファリン等服用患者の検査→生検移行時の注意喚起 |
− |
効果的、実施中。
更に、目立つ工夫をしたい。 |
17 |
放射線機器始業点検の確実な実行 (3月) |
検査機器の異常発見 |
− |
点検表により100%実施中 |
18 |
そ頚部点滴での頻回な訪室、滴下調節 (4月) |
施行時間管理、大量投与防止 |
− |
確認はやや困難。工夫する。 |
19 |
患者ネームバンドの採用 (8月) |
自己表現不可能な患者の確認 |
− |
効果的、2名に実施中。 |
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<医療情報室の目> |
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★医療事故の性質
医療事故は様々な原因・形態で発生するものである。医療事故から患者を守るためには、人的な原因であるか、システム全体に関わるものであるのか、事故の性質の違いを分析の上、応じた対策を進めていくことが必要である。
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★人的要因への対策
ヒューマンエラー等、人的な要因に起因する医療事故については、反省無く医療事故を繰り返す医療施設や医療従事者等の問題を解決することが急務である。日本医師会では今後、医師の再教育制度を創設し対応していく予定である。我々医療従事者が患者の安全を第一に考え、客観的な判断を下せるよう自覚していかなければならない。
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★システム・組織面への対策
その一方、組織やシステム全体への対策を講じるに当たっては、医療提供環境の充実を図り、人的・物的資源の不足を解決する必要がある。今回、成人病センターにおける医療安全の取り組みを紹介したが、患者取違い防止を目的として(シールなどの)備品をそろえるためには相応のコストが必要になる。人的資源の面でも欧米に比べ、日本では病院に勤務している医師や看護師などの従業員数が3分の1以下であると云われている。現状では、安全な医療提供環境のために求められるものは全て医療機関による自己負担であり、今後は国全体として対策費の議論が必要であると考える。
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※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
(事務局担当 立石 TEL852-1501 FAX852-1510)
担当理事 津 田 泰 夫(広報担当)・入 江 尚(情報担当)・大 木 實(渉外担当)・原 村 耕 治(地域ケア担当)
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