医療情報室レポート
 

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2004年 3月 26日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:平成16年度診療報酬改定のポイント

中医協が先月13日に厚生労働省にて開催され、坂口厚生労働大臣から諮問のあった平成16年度診療報酬改定案について即日答申した。昨年12月の中医協総会において診療報酬本体の改定率は±0%とすることが決定し、議論が進められてきたが、急性期医療に係る診断群分類別包括評価(DPC)を巡り一時審議が中断することもあったが、最終的に診療側・支払側共に合意するに至った。
今回のレポートでは、改定内容のポイントとこの数年間の診療報酬改定の推移について振り返ってみた。
  


改定の主な項目

     ★外来

初診料 病院 250点→255点  
診療所 270点→274点  
外来診療料
(200床以上の病院の再診料)

68点→72点
 

包括する尿検査、糞便検査、血液形態・機能検査の範囲を拡大
 

     ★入院

有床診療所入院基本料
1群1への加算
40点(1日につき) 入院基本料1群1(看護職員10人以上)をとっている有床診療所で、医師が2人以上おり、夜間に看護職員を配置している場合に加算
亜急性期入院医療管理料 2,050点(1日につき) 亜急性期医療を必要とする患者について、一定の期間に在宅復帰を目指して実施する入院医療管理を評価。90日を限度に算定。
要件:一般病棟の病室単位で算定、看護配置は患者2.5人に対して1人、在宅復帰支援担当者を配置、退院患者の6割以上が在宅等へ退院等
ハイケアユニット入院医療管理料 3,700点(1日につき) 一般病棟よりも手厚い体制の治療室で重症度の高い患者に対して行う集中的な治療を評価。21日を限度に算定。
要件:常時患者4人に対して1人の看護師を配置、特定集中治療室(ICU)に準じる設備、8割以上の患者が重症度の基準を満たしている等
臨床研修病院入院診療加算 30点(入院初日のみ) 研修医のカルテの記載について指導医が指導・確認する体制が整っていることなどが要件
褥瘡患者管理加算 20点(入院中1回) 褥瘡のハイリスク患者に対して診療計画の作成や、必要な器具の整備などを行った場合に算定

     ★投薬

特定疾患処方管理加算
処方期間28日以上の区分を新設

45点(月1回)
 

糖尿病や高血圧性疾患などが主病の患者に対して28日以上の長期投薬を行った場合に算定。診療所と200床未満の病院が対象。
 

     ★小児

小児外来の時間外加算の評価見直し 乳幼児の時間外加算初診時102点→115点ほか
新生児入院医療管理加算 250点→750点
地域連携小児夜間・休日診療料の算定要件緩和24時間対応→夜間・休日の定められた時間に対応等
     ★精神

医療保護入院等診療料 300点(入院中1回) 医療保護入院および措置入院の患者に対して精神保健指定医が計画的な治療管理を行った場合に算定
特定抗精神病薬治療管理加算 10点(1日につき) 精神科急性期治療病棟入院料など、投薬関係の費用が包括評価されている病棟で非定型抗精神病薬を使った治療を行った場合に算定

     ★その他
 
手術料の施設の暫定的基準見直し 症例数と医師経験年数の基準を満たす施設は手術料に5%加算
症例数は基準に満たないが、医師経験年数の基準を満たす施設は減算の対象としない
症例数、医師経験年数とも基準に満たない施設は手術料を30%減算
その他、共通の要件として症例数の院内掲示、手術内容・合併症等についての患者への説明等を新設する。
180日超入院の除外
要件見直し
180日超入院を対象にした入院料特定療養費化の除外要件に、15歳未満の患者などを追加する。
リハビリテーションの評価の見直し 急性発症した脳血管疾患などの患者で、発症後180日以内の場合、リハビリ集団療法の月内算定回数の上限を8単位→12単位へ緩和

診療報酬改定の主な内容

   ○この数年間の改定内容については次のとおり。
年度 診療報酬改定率 主な改正内容
本体 薬価 合計 診療報酬 健康保険法等
平成 9年度 1.25% -1.32% -0.07% 4/1〜
消費税率引き上げに伴う改正
入院では、療養環境の維持・整備等に係る課税コストを考慮して、入院料、入院時医学管理料、入院時食事療養費引き上げ
外来で、特定疾患療養指導料、診療情報提供料、処方料、処方せん料、静脈内注射料の基本的点数の引き上げ
薬剤情報提供料が新設
乳幼児加算が3歳未満に統一 等
9/1〜
被保険者本人一部負担1割から2割へ
老人外来一部負担1月1,020円から1日500円(月4回限度)へ 入院1日710円から1日1,000円へ
外来薬剤一部負担金新設 等
平成10年度 2.2% -2.7% -0.5% 4/1〜
診療所では初診料・再診料、病院では入院環境料・入院時医学管理料・療養型病床群の療養環境料・看護料等引き上げ
小児医療に対して指導料等の引き上げ
技術料を適正に評価するため、検査判断料・処方料・調剤料・手術料の引き上げ
診療報酬の合理化として、長期入院の是正、検査・画像診断の適正化、病衣貸与加算の廃止 等
4/1〜
老人入院時一部負担1日1,000円から1日1,100円へ
平成11年度 - - - 4/1〜
老人外来一部負担1日500円(月4回限度)から1日530円(月4回限度)へ 入院時一部負担1日1,100円から1日1,200円へ
7/1〜
老人薬剤一部負担の臨時特例措置
平成12年度 1.9% -1.7% 0.2% 4/1〜
入院基本料の創設等包括化の推進と逓減制の見直し
急性期特定病院加算、再診料における継続管理加算の整備
小児医療における外来・入院の各種加算の引き上げ
検査判断料、処方料、調剤料、手術料の引き上げ
介護保険施行を踏まえて在宅医療の整備 等
★介護保険施行
1/1〜
老人薬剤一部負担金廃止
老人一部負担金に定率1割(上限付き)の導入
  定率制又は定額制の届出
高額療養費制度の見直し 等
平成13年度 - - -







平成14年度
-1.3% -1.4% -2.7% 4/1〜
急性期入院医療の評価
療養病棟、有床診療所療養病床の入院基本料見直し
180日超入院基本料一部特定療養費化導入
特定機能病院における包括評価の導入
入院基本料 医療安全管理体制未整備減算、褥瘡対策未実施減算の導入
再診料・外来診療料に月内逓減制導入
在宅医療の見直し、小児医療の充実、精神医療の質の向上 等
生活習慣病指導管理料、慢性疼痛疾患管理料を新設
薬価基準、薬剤技術料、医療材料制度の見直し
施設基準の見直し 等
10/1〜
在総診引き下げ、外総診廃止
日本医師会が2002年8月20日に公表した「緊急レセプト調査最終報告」によると、2002年4月から6月の医科の医療費は昨年の同時期に比べて3.86%減である。
10/1〜
老人一部負担金定率1割実施
  (一定以上の所得者は2割)
前期高齢者制度の創設
高額療養費制度の見直し 等
平成15年度 - - - 6/1〜
再診料逓減制廃止
★4/1〜・介護報酬改訂(-2.3%)

日本医師会が2003年8月19日に公表した「第3次レセプト(診療報酬明細書)調査結果」によると、2003年4月から6月の医科の医療費は昨年の同時期に比べて0.21%減である。
4/1〜
被保険者本人一部負担2割から3割へ
平成16年度 0% -1.0% -1.0% 改定の主な項目 参照


<医療情報室の目>
★日医の見解
   日本医師会の青柳俊副会長は4月の診療報酬改定について、「採点は(当初要求していた)1兆2,500億円の改定財源が確保できなかったことでは50点以下だが、診療報酬本体の改定率がプラスマイナスゼロという中での作業結果としては基準点を超えると思う」との見解を示している。
 財源が制約された中で、初診料の引き上げや新規技術の保険導入、また、技術料や手術施設基準の見直し等従来の診療報酬体系を一部是正したという意味では評価できる点も多い。
 尚、日医のJPNが全国の都道府県・郡市区医師会長を対象に行った「今回の診療報酬改定は評価できる内容になったと思われますか」というアンケートに対して、「どちらともいえない」が43.0%を占め最も多く、「評価できない」が33.2%、「評価できる」と回答したのは22.6%であった。

★実際の影響
  今回改定の改定率は±0%となっているが、実際は減収の影響が出るのではという危惧の声がある。平成14年度改定の際は初のマイナス改定ということもあり、日医により各診療科におけるレセプト調査が行われ、翌年15年度にも引き続きレセプト調査が行われた。その結果、公表された改定率よりも実際には大幅な影響が出ることが解った。以上のことからも、本年度も前回同様、点数の置き換えを行う必要がある。
 また、我々医療関係者が数字を示して現場の声を訴えていくためにも、改定の度にレセプト調査を行い、分析して次回の診療報酬改定で是正していく必要があるのではないだろうか。

★社会保障制度の行方
  平成17年度には、制度創設5年目になる介護保険制度の改革の問題、翌平成18年度には次回診療報酬改定が行われる。
 次回改定には、高齢者医療制度等を中心とした医療制度改革案の提出が予想され、介護保険制度の改革を含め、来年には、激しい論戦が予想される。年金制度を含め、政府の社会保障制度改革案に、国民の不安は増大するばかりであるが、このような状況の中、今こそ我々医療関係者と国民が一体となって皆保険制度を堅持していく必要があると考える。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 立石 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 長 柄 均(広報担当)・江 頭 啓 介(地域医療担当)・入 江  尚(情報担当)


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