医療情報室レポート
 

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2004年 2月 27日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:薬価制度

中医協は今月13日の総会で、坂口厚生労働大臣から諮問のあった平成16年度診療報酬改定案について即日答申した。今回の改定率は診療報酬本体が±0%であったことから大幅改定とはならず、医療の安全・質の確保の観点から小児・精神医療などの重点評価にとどまっている。また、平成16年度の改定では薬価・材料価格の改定も行われることとなっており、改定率については診療報酬本体±0%に対して、薬価は−1%となることが決定している。
しかし、薬価制度については不明な部分が多く、そのシステムについて我々医療従事者も知らないことが多い。
今回の医療情報室レポートでは、薬価基準のシステムや平成16年度薬価改定のポイント、また現状における問題点などについて焦点を当ててみた。
  


薬価基準のシステム

 ★新薬の価格設定
    新薬の価格の設定は、類似薬効比較方式を原則とし、品目によってはさらに補正加算が行われる。類似薬がない場合には原価計算方式により算定され、更にこのようにして算定された価格と海外の価格との間で調整が行われている。
厚生労働大臣は、医薬品の市場の実勢価格を調査し、原則的に2年に1回、薬価改定を行う。
薬価調査によって把握された個々の医薬品の価格を、「医療機関に納入した総額を納入した総量で除した数値(市場実勢価格加重平均値調整幅方式)」に当てはめ、新しい価格を決定している。

  薬価調査
    薬価基準価格は、医療機関が購入した医薬品の価格に基づいて定められるが、この医療機関が購入した医療機関の価格を販売側および購入側から調査することを薬価調査という。薬価調査には自計調査と他計調査があり、自計調査のうち薬価改定の前年の特定月に薬価基準収載全品目について全医薬品卸売業者と抽出された病院、診療所、薬局を対象に調査するものを薬価本調査と称して薬価算定の基本資料とされている。
 

  新薬の薬価算定
    新薬の算定については以下の方式で算定され、外国平均価格調整を行う要件に該当する場合はさらに調整が行われる。
 


国際比較

  我が国では医療費に占める薬剤費が高いことが指摘されている。
また、薬価や材料費について国際比較をした際、内外価格差が問題となっている。

 

平成16年度薬価改定

  中医協で決定した平成16年度薬価改定の主なポイントは次のとおり。
1.既収載品の薬価算定
  既収載品の薬価改定の原則
    市場実勢価格加重平均調整幅方式(調整幅2%)により改訂。
  既収載品の薬価改定の特例
    最初の後発品が収載された先発品について一定割合(薬価基準への収載時期に応じて4〜6%)の追加的引き下げを行う。
2.新薬の薬価算定
  新規後発品の薬価
    新規後発品の算定係数を現行の「先発品の0.8掛け」から「先発品の0.7掛け」に引き下げる。
今夏の後発品薬価追補収載から適用。
  類似薬効比較方式(U)の算定
    類似薬効比較方式(U)で算定される額が、同(T)で算定される額を超える場合、同(T)で算定される額を含めて一日薬価合わせをすることで「逆転現象」を解消する。
  規格間調整の加算
    すでに市販されている規格との調整(規格間調整)で薬価を設定する新薬で、従来品に比べ効き目が長持ちし、服用回数が少なくて済むなどの工夫がされている場合は、「市場性加算2」(3%)を準用して、薬価を引き上げる仕組みを入れる。
3.再算定
    市場拡大再算定について、市販後に集積された調査結果で、臨床的有用性が直接的に検証された場合、有用性加算2(5〜10%)の計算方法を準用して引き下げ率を緩和。
4.その他
    「外国平均価格調整」「規格間調整」「最低薬価」の不合理の是正や不明確な点の明確化。

<医療情報室の目>
★内外の価格差
  内外の価格差については、医薬品のみならず、上記資料の通り、医療材料についても問題である。
 内外の価格差の要因として、特に米国における薬価算定の原価計算方式は、製造原価でなく企業独自が設定した原価に基づいて算出していることにある。
 その原価は、研究開発経費などの投資部分を含めて設定されているが、詳細は企業秘密として明らかにされていないため、企業が自らの責任と判断で、有用性を加味した原価を設定してその評価を市場に委ねる方式をとっており、わが国は輸入品に限ってこのような薬価を認めている。
 海外の医薬品や医療材料については、このように言わば、海外の企業により設定されているという不合理な面があり、早急な制度の是正が必要である。
  <参考:日医雑誌(2003.11.15第130巻 論説と話題より)>
★薬価における逆ざや
  診療報酬に関しては消費税は非課税となっている。しかし、医療機関が医薬品を始めとして医療消耗品や医療機器などを購入する際には消費税の負担が必要である。
 現状では薬価差益はほぼ無くなっており、購入価格に消費税5%を上乗せすれば、所謂逆ざやの問題が発生する。
 診療報酬の請求や窓口負担では消費税が課税できないため、仕入れ時にかかる消費税は収入で回収することが出来ず、医療機関が負担することになっている。
 診療所など、一度に仕入れる量が少ない医療機関にとっては、逆ざやの問題は深刻で、消費税率を上げる議論が行われる一方で、医療機関に係る消費税の負担については適正な措置もなく、消費税の負担は医業収益に多大な影響を与え続けており、改善が望まれる。

★薬価と技術料
  マスコミでは医療は所謂「薬漬け」として取り上げられることが多く、また、厚労省を始めとして日本は、先進諸国に比べて医療費に占める薬剤費が高いと言われている。しかし、例えば、高脂血症の治療に使われる「メバロチン」は治療費の70%程を占めることになり、医療費に占める割合の中で、薬価そのものが占める割合が高いことはあまり報じられていない。
 医療費に占める薬価の問題が「薬漬け」なのではなく、医師の技術料の評価の低さと「薬価漬け」である現状にも注目する必要があるのではないだろうか。そして、技術料をあまりにも低く抑えているにもかかわらず、医師への処方に対する責任と期待が膨れ上がって来ていることが問題である。
 薬価の承認基準・過程の透明化や合理的価格ルールの確立と同時に適正な技術料の評価が必要であると考える。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 立石 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 長 柄 均(広報担当)・江 頭 啓 介(地域医療担当)・入 江  尚(情報担当)


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