医療情報室レポート
 

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2002年11月29日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:健康日本21

 平成12年3月、国民の健康維持・増進を図る上で重要となる生活習慣や疾病等に関する課題について、2010年度を目途とした目標等を提示する「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」が策定された。
 また本年7月26日には健康増進法が可決成立し、健康に対する法的な取り組みが示されることとなった。
 疾病予防・健康増進を推進していくうえで、医師をはじめ医療関係者の果たすべき役割が大きいことはいうまでもなく、今後国・地方公共団体が取り組む諸施策に対して積極的に提言し、関わっていく必要がある。
 今回は、健康日本21の概略の紹介と特に医師(医師会)としてどう取り組んでいくかについて考えてみたい。
  


背景・目的・基本方針

 背 景

我が国の平均寿命は世界一の水準に達しているものの、急速な高齢化とともに疾病全体に占めるがん・心臓病・脳卒中・糖尿病等の生活習慣病の割合が増加し、これに伴って要介護者の増加も深刻な社会問題となってきたため、生活習慣病の予防、痴呆・寝たきりにならないための積極的な健康増進を国民自らが行うとともに、社会全体の取り組みとして実施していくことが重要となった。   


 策定の目的

21世紀の我が国を、すべての国民が健やかで心豊かに生活できる活力ある社会とするため、壮年期死亡の減少、健康寿命の延伸及び生活の質の向上を実現することを目的とする。
  

 基本方針

1.一次予防の重視   

従来の疾病対策の中心であった健診による早期発見又は治療にとどまることなく、健康を増進し、疾病の発病を予防する「一次予防」に一層の重点を置いた対策の推進
  

2.健康づくり支援のための環境整備   

健康に関わる様々な関係者がそれぞれの特性を生かしつつ連携することにより、個人が健康づくりに取り組むための環境を整備し、個人の健康づくりを総合的に支援
  

3.目標等の設定と評価   

保健医療上の重要な課題を選択し、科学的根拠に基づいて、取り組むべき具体的な目標を設定する必要がある。また、目標に到達するための具体的な諸活動の成果を適切に評価し、その後の健康づくり運動に反映できるようにする
  

4.多様な実施主体による連携のとれた効果的な運動の推進   

マスメディア等による広範な情報伝達手段や保健事業を活用した個別健康教育等の多様な経路により、それぞれの特徴を生かしたきめ細やかな情報提供を推進
現在実施されている老人保健事業と医療保険者等による保健事業とを相互に連携しつつ、効果的かつ一体的に実施
  


具体的目標の設定項目

健康日本21では、(1)栄養・食生活 (2)身体活動・運動 (3)休養・こころの健康づくり (4)たばこ (5)アルコール (6)歯の健康(7)糖尿病 (8)循環器病(脳血管疾患と虚血性心疾患を含む) (9)がん について具体的な運動目標を設定している。
 ※ここでは各項目について設定された中の一部を抜粋して紹介する。   

(1)栄養・食生活
 
項 目 対 象 現 状 2010年目標
食塩摂取量の減少 成人 13.5g 10g未満

朝食を欠食する人の減少
中・高校生 6.0% 0%
男性(20歳代) 32.9% 15%以下
男性(30歳代) 20.5% 15%以下

(3)休養・こころの健康づくり
 
項 目 対 象 現 状 2010年目標
ストレスを感じた人の減少 全国平均 54.6% 49%以下
睡眠による休養を十分にとれていない人の減少 全国平均 23.1% 21%以下
自殺者の減少 全国数 31,755人 22,000人以下

(4)たばこ
 
項 目 対 象 現 状 2010年目標
喫煙が及ぼす健康被害についての十分な知識の普及 肺がん・喘息・気管支炎・心臓病・脳卒中・胃潰瘍・妊娠に関連した異常・歯周病 27.3〜84.5% 100%

未成年者の喫煙
男性(高校3年) 36.9% 0%
女性(高校3年) 15.6% 0%

地方計画「健康日本21福岡市計画」

 ○市民の健康目標

福岡市計画では、市民が健康的な生活習慣を確立していくための分かりやすい健康目標として、全世代を対象とした「健康ふくおか10か条」と、世代別の健康目標をまとめた「世代別・疾病別健康目標」を提唱している。
  


 ○世代別・疾病別健康目標

「世代別健康目標」は、@子ども期(概ね幼児期から中学生まで)A若者期(概ね高校生から20歳代まで)B成人期(概ね30歳代から65歳未満)C高齢者期(概ね65歳以降)に分け、各世代に応じた「運動」「メンタル」「食事」「健康管理」における主要な目標を示している。「疾病別健康目標」は、@糖尿病 A脳卒中についての健康目標を示している。
  


「健康増進法」の制定

7月26日に制定された健康増進法は、健康の増進の総合的な推進に関する基本的事項が定められるとともに、栄養改善、健康増進のための措置を講じることを目的としている。その中で、医療機関に関係する条項が次のとおり定められている。

(関係者の協力)   

国、都道府県、市町村(特別区を含む。以下同じ。)、健康増進事業実施者、医療機関その他の関係者は、国民の健康の増進の総合的な推進を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。(第5条)
  

(受動喫煙の防止)   

学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。(第25条)
  


医師会の取り組み

 健康教育活動・各種検診事業等の実施

<福岡市医師会が実施している事業>   

○健康教育活動:ふくおか市民糖尿病教室、ニコニコペース健康教室、“市民健康情報 はーとふるふくおか”の発行
        各区健康展・健康相談事業への協力
○各種がん検診:胃がん検診、大腸がん検診、乳がん検診、子宮がん検診、前立腺がん検診
○成人健康診査(ミニドック)
○産業保健活動:健康診断の実施、健康相談事業等への登録医師派遣
  

 日本医師会禁煙キャンペーン

<事業項目>   

日本医師会員喫煙意識調査・テレビによる禁煙啓発(からだ元気科)・テレビCM放映・禁煙啓発ポスターの作成(日医ニュース健康ぷらざ)・たばこ問題に関係するNPOの事業に対する協力、支援・たばこ問題に関する市民公開講座の開催(平成14年3月2日)・医療機関における禁煙、分煙の推進・禁煙啓発パンフレットの作成・禁煙啓発ビデオの作成・一般住民の禁煙教育に対する医師会の介入方法・若年者禁煙教育に対する介入方法・喫煙に関係する疾病発生の因果関係に関する調査研究
  


<医療情報室の目>

★かかりつけ医として積極的に関与を
 「健康日本21」は、“病気にならないための”一次予防・健康づくりに重点が置かれいるものの、その全てに医師が関わっていかなければ計画が画餅に終わることは明白である。従来より検診事業等を通じて疾病の早期発見に貢献してきたこと、更にかかりつけ医として住民の健康に関する相談に応じ、助言・指導を行ってきた事実からも、各地域の計画に対して医師(医師会)が積極的に発言・提言していくことが「健康日本21」運動を実のあるものとし、真に住民の健康に貢献するものとなると考える。
★医師とたばこ
 日本医師会は禁煙キャンペーンを実施している。たばこが健康に及ぼす影響が如何に大きいかは、万人の知るところではあるが、遅々として喫煙者は減少しない。特に未成年者・女性の喫煙は深刻な問題である。成人喫煙者に対して、“(身体に悪いから)たばこをやめなさい”と命令(指導)できる立場にあるのは医師だけである。  更に、喫煙が影響していると考えられる超過医療費が1兆3千億円、喫煙関連疾患による労働力の損失が5兆8千億円と推計されるデータ(医療経済研究機構の調査より)からも、禁煙推進運動を積極的に展開することが医療費削減はもとより日本の活力を再興すると言っても過言ではないように思う。医師の果たす役割は大きい。

 
◎タバコのために毎日日本で300人が死んでいる
 
厚生労働省はタバコのために毎年95,000人死亡(1995年)していると発表した。医療経済研究機構の推計による1999年度の直接喫煙による年間超過死亡数は、102,403人である。
◎タバコ値上げは一石三鳥
 
厚生労働省所管の研究機関、医療経済研究機構の発表によると、タバコを1箱1,000円にすれば喫煙者は1,780万人減り、死亡者も10万人から3万人に減少し、医療費も8,000億円削減され、税収は1兆円増えるとしている。喫煙によるコストは全体で7兆1,540億円にのぼり、現状のタバコ税収をはるかに上回る。また、タバコ値上げで未成年喫煙率が低下することも知られている。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 百富 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 長 柄 均・江 頭 啓 介・入 江  尚


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