医療情報室レポート
 

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2002年9月27日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:構造改革特区
 政府は6月25日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」を閣議決定し、その中で地域を限って規制を緩和・撤廃する「構造改革特区」の設置を打ち出した。
 「特区」の設置については、限られた地域で特例的に規制の緩和・撤廃を認め、経済活性化に弾みをつけることを狙いとしており、その成果次第では全国への展開も視野に入れられる。
 7〜8月に内閣官房の構造改革特区推進本部が実施した、全国自治体等への「構造改革特区」に関する提案募集では、最終的に426件もの提案が出されるなど各自治体は「特区」創設に意欲的とみられる。
 これを受けた小泉純一郎首相は、今月9日の経済財政諮問会議で「(各地からの)積極的なやる気や問題意識を阻害しないよう、できるだけ実現する方向で検討してもらいたい」と「特区」実現に強い意欲を表明しており、政府は秋の臨時国会にも関連法案を提出する予定だ。
 今回は、「構造改革特区」構想について取り上げてみた。

 

『特区』に関する主な動き  

6月25日 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」を閣議決定 構造改革特区の設置を決定。
7月23日 総合規制改革会議、「規制改革特区」構想を提言 同会議がまとめた「第2次中間取りまとめ」において、特区構想の具体化には通則法が望ましい等として「規制改革特区」構想を提言。
7月26日 「構造改革特区推進本部」初会合を開催 小泉純一郎首相を本部長として設置。同日、初会合を開催。
8月 1日 日医、「医療に関連する規制改革特区対策委員会」初会合を開催 「健康や生命、身体に関わる規制を外してしまう特区の考え方に反対していく」との基本方針を確認。
9月 6日 「特区構想」の一覧公表 構造改革特区推進室は、地方自治体等より提案のあった特区構想を取りまとめて公表。因みに医療関連特区の提案数は25件。(詳細は後述)
9月10日 「ふくおか健康未来都市構想検討委員会」初会合を開催 九大医学部長 桑野信彦氏を委員長に選出。初会合開催。
9月20日 「構造改革特区推進本部」第2回を開催 「特区」導入のための基本方針決定。(下記参照)臨時国会に特区実現のための基本法案(特区法)を提出する方針を固める。
10月上旬 「構造改革特区推進本部」第3回開催を予定 具体的な選定基準を盛り込んだ「特区推進プログラム」の決定を予定。
来年3月頃 経済財政諮問会議は、民間事業者からの「特区構想」提案が少なかった事から、第2弾の募集を行いたいとしている。


構造改革特区推進のための基本方針(要旨)  

 ○目 的

経済の活性化のためには、規制改革により、民間活力を最大限に引き出し、民業を拡大することが重要。
地域の特性に応じた規制の特例を導入する特定の区域を設け、当該地域において地域が自発性を持って構造改革を進めるために、構造改革特区を導入する。
特定地域の成功事例を示すことで、全国的な波及により国全体の経済の活性化が実現し、地域の特性が顕在化し、その特性に応じた産業の集積や新規産業の創出等により、地域経済の活性化にもつながる。
  

 ○取り組みの方針

@構造改革特区の選定や規制緩和の対象の決定は内閣官房で一元的に行う。
A地域の「自助と自立の精神」を生かすため、政府による地方自治体への財政支援は行わない。
B構造改革特区において講じられた規制の特例措置については一定期間後に評価し、その結果に基づいて(見直しなどの)必要な措置を講じる。
  

(9月20日 第3回構造改革特区推進本部決定)

「医療特区」構想の提案  

 構造改革特区推進本部の発表によると、全国の自治体、民間等から提案のあった「構造改革特区構想」は426件に及び、うち25件が、「医療特区」に関するもの。下の様な特徴的な提案も示されている。

主な提案 提案団体
混合診療の容認 千葉県、岐阜県、富山市、医)河北総合病院、医)ブレストピア、医)鉄蕉会亀田総合病院、東京大学医学部付属病院
外国人医師による診療 静岡県、神戸市、広島県沼隈町、医)河北総合病院、医)鉄蕉会亀田総合病院
温泉治療への保険適用 岐阜県、福島市、熱海市、別府市、北海道壮暼町


福岡における「特区」構想(福岡アジアビジネス特区)  

 福岡県と福岡市は、同市が整備を進める「アイランドシティ」の一部を「福岡アジアビジネス特区」とする構想をまとめ構造改革特区推進室に提出しました。構想の目的および概要については以下の通りです。

 ○「特区」構想の目的

博多湾における国際ハブ機能を形成しながらアジアにおけるビジネス展開を目指す欧米企業等の集積を促進するとともに、アジア企業の日本展開、さらにはこれと連動する国内企業の新たなビジネス活動の拠点を形成し、九州・西日本の経済活性化、ひいては日本経済再生に貢献する。
  

 ○「特区」を具現化するために具体的に行う事業

◆アジアビジネスで活躍できる人材の育成・供給(アジア九州ビジネススクール)、システムLSI設計開発拠点の構築(シリコンシーベルト福岡)、国際会議場の整備など、アジアビジネス拠点形成のための事業
◆ベンチャー企業が民民で資金、技術、販路等を調達できるシステムの整備など、ベンチャー育成のための事業
◆九大キャンパスの移転を契機として、アジアの知の拠点となる新しい学術研究都市づくりを推進する研究開発推進のための事業
◆博多湾国際ゲートウェイ機能の強化によるアジアにおける国際ハブ港湾形成のための事業
◆産業集積拠点の形成、光ファイバーの管路整備による高速通信インフラ整備、外国人が住みやすいまちの形成など、福岡アジアビジネス特区の拠点地域整備のためのプロジェクト
  

 ○規制の特例についての要望事項(抜粋)

【外国医師等の受け入れ条件等の緩和】
特区内の別途定める区域における病院において、現在医療に関する知識及び技能の取得を目的として入国している臨床修練外国医師等の受け入れ条件を緩和する。(臨床修練制度の適用拡大、処方箋の交付、報酬、許可の期間)
  

 ○アイランドシティ新事業計画に関する市民の意見・提案のとりまとめ

【福岡市等は今年5月、アイランドシティ新事業具体化に向け、市民からの意見を取りまとめた。(意見提出総数 1,796)
  



【まちづくりの方向性(目標像)について】
「特に重視すべき分野」として右の6つの分野から1つを選択。
市民の、環境や医療・福祉に対する関心の高さが伺える。

【リーディングプロジェクトについて】
住宅関連、産業集積関連、基盤関連の25項目の中から「特に重点的に取り組んでいくべきもの」として3つを選択。「先進医療・福祉特区の形成」が約11%と最も多く、上記の目標像と同じく、医療・福祉に対する関心の高さが伺える。


日本医師会の「医療特区」構想に対する見解  

 日医は、特区構想については「経済活動に限定されるのであれば、反対するものではない」としながらも、医療に関しては「国民の生命、身体、健康を守る観点から基本的に反対」との姿勢を表明しています。特に、総合規制改革会議が示した『中間とりまとめ』の中で「生命・身体・健康、公序良俗、消費者保護等に関する規制であるという理由によって対象外とすべきではない」と、特区で緩和する規制に選定基準が示されていることに強く批判しており、「医療安全について責任がはっきりしない。安全が確認できるなら法改正をして全国的にやればいい」としており、医療特区での規制緩和に反対の姿勢を重ねて示しています。


<医療情報室の目>

★医療特区と地域医療
 現在、特区制度の対象外にすべきものとして、外交・防衛など国の主権に関するものや、刑法に関するもの等が挙げられているが、「特区」の選定基準については上記に示すとおり、「生命・身体・健康、また公序良俗などに関する規制というだけで特例の対象外とすべきではない」とされている。しかし、医療に関しては、国民の生命・健康等に直接関わるサービスであるため、医師法や医療法等による衛生規制が定められており、「特区」で特例を設けることは、実質的に「国民の安全性」に地域差を生じさせることとなり、法の下の平等の観点からも不適当であるとはいえないだろうか。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 中道 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 長 柄 均・江 頭 啓 介・入 江  尚


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