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2002年3月29日
福岡市医師会医療情報室
TEL852-1501・FAX852-1510
特集:医療保険制度改革の行方
−その2−
政府は3月1日の臨時閣議で、医療制度改革関連法案を決定し今国会に提出しました。
可決成立した場合、診療所の定額制廃止を含めた負担月額上限の引き上げなどが平成14年10月から実施され、最後まで焦点となった被用者保険の一部負担割合3割への引き上げなどが平成15年4月から実施されることとなります。
診療報酬改定を含む今回の改革案は、患者負担増による国民への痛みと史上初の診療報酬マイナス改定による医療機関への痛みのみが示された結果となりました。
結果的に当面の財政の辻褄合わせに終わり、真の抜本改革への取り組みは先送りされたままです。
今回は、医療保険制度改革関連法案の内容と日本医師会・福岡県医師会・福岡市医師会の対応についてお知らせします。
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被保険者の療養の給付に係る一部負担金の割合について、3割とする(平成15年4月1日施行) |
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○ |
70歳以上の者については1割、一定以上の報酬を有する者については2割とする(平成14年10月1日施行) |
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○ |
3歳未満の者については2割とする(平成14年10月1日施行) |
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○ |
外来に係る薬剤一部負担金を廃止する(平成15年4月1日施行) |
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○ |
賞与に対しても標準報酬月額と同一の保険料率で付加する=総報酬制(平成15年4月1日施行) |
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○ |
政府管掌健康保険の一般保険料率を1000分の82とする(平成15年4月1日施行) |
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○ |
老人医療受給対象者を、75歳以上の者及び65歳以上75歳未満の者であって一定程度の障害の状態にある旨の市町村長の認定を受けた者とする(平成14年10月1日施行)
ただし、施行の前日に既に70歳以上である者については、75歳に至るまで引き続き老人医療受給対象者とする |
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○ |
一部負担金に係る月額上限制及び診療所に係る定額選択制を廃止する(平成14年10月1日施行) |
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○ |
老人医療費の伸びを適正化するための事項を内容とする指針を定め、当該指針に即した都道府県及び市町村の取り組みに対する必要な助言その他の援助に努めるものとする(平成14年10月1日施行) |
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1. |
医療保険各法に規定する被保険者及び被扶養者の医療に係る給付の割合については、将来にわたり100分の70を維持する |
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2. |
平成14年度中に検討を行い、基本方針を策定する |
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(1) 保険者の統合及び再編を含む医療保険制度の体系の在り方 |
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(2) 新しい高齢者医療制度の創設 |
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(3) 診療報酬の体系の見直し |
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3. |
おおむね3年を目途に検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずる |
(1)
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医療保険各法及び老人保健法の規定による保険給付の内容及び範囲の見直し |
(2)
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医療保険各法、老人保健法及び介護保険法の規定による給付に伴う負担の家計における合計額が著しく高額になる場合の当該負担の軽減を図る仕組みの創設 |
(3)
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社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険団体連合会による診療報酬の審査及び支払に関する事務処理の体制の見直し |
(4)
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政府が保険者である社会保険及び労働保険に係る徴収事務の一元化 |
(5)
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健康保険の保険者である政府が設置する病院の在り方の見直し |
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4. |
おおむね5年を目途に政府が管掌する健康保険事業及び当該事業の民営化を含む組織形態の在り方の見直しについて検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずる |
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5. |
検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずる |
(1)
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医療に係る事故に迅速かつ適切に対応するための専門家による苦情の処理体制の整備 |
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(2)
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医療及び医療に要する費用に関する情報の収集、分析、評価及び提供に係る体制の整備 |
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日本医師会・福岡県医師会・福岡市医師会の見解及び対応
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今回の制度改革や診療報酬改定については、国や保険者のマネジメント責任が明らかにされないまま、国民と医療機関に一方的な負担が課せられた。
制度改正として保険料率の引き上げ、総報酬制導入など、本来の保険料政策に立ち戻ることを基本にしたことは評価できるが、国から家計への財源負担シフトの流れをいつまでも続けることには反対である。さらに、診療報酬改定の具体的内容に列挙されている各種給付の特定療養費化による自己負担増についても、歯止めを考えなければならない。
診療報酬引き下げ改定についても、優秀な人材確保や情報化の推進等の財源確保が難しくなるとともに、加速する時間的制約のなかで、医療の質と安全を確保した医療提供が強いられることになった。
国民の大幅な負担増を回避するための財源確保に協力するという、天下国家を視野に入れた苦渋の選択をせざるを得なかったが、それも無視されるような議論が再開されている。<日医ニュース平成14年3月5日号より> |
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今回の診療報酬改定を含む医療制度改革案が、当面の財政赤字の修復にとどまるのみならず、更に事務における患者への対応に混乱を招き、今日まで築き上げてきた患者と医師の信頼関係をも著しく損なう重要な問題であることを指摘し、国民が安心して信頼できる医療サービスを享受でき、医療機関は質の高い医療サービスを提供できるよう「健康保険本人3割負担」の実施期間の延長を含んでの見直し及び「再診料・外来診療料の月内逓減制」の廃止について、坪井栄孝日本医師会長をはじめ坂口力厚生労働大臣、山崎拓自由民主党幹事長、太田誠一衆議院議員、吉村剛太郎参議院議員、松山政司参議院議員、武見敬三参議院議員に対し、いち早く要望書を提出、改善方を強く要望した。 |
<医療情報室の目> |
★民意とともに
今回示された改革の中ではっきり示されたのは、受診時の一部負担増、保険料増額に伴う家計負担増であり、当面の財源確保を患者(国民)にのみ求めたものといえます。
また、医療機関も今回の診療報酬マイナス改定で多大な痛みを受けました。しかしながらこれに対しての日医の見解、県医・市医の対応は、医療機関側の厳しい経営環境の中で、あえて患者の視点に立って真の安心と安全を確保するための医療サービスを提供しなければならないという強い使命感と信念からの見解・対応といえるのではないでしょうか。
しかし、医師会のこの度の行動が、いまだマスコミ等により自己利益のためと捉えられている嘆かわしい現状を考えるに、患者(国民)の意識に訴え理解を得るための方策が早急に求められると考えます。まず、私達医師会員個々が全員、日常の診療現場で患者さんに地道に理解を求めていくことが必要と考えます。
さらに、広報の在り方や情報公開などについて、民意を反映した方針を定めて実行していくことが、この危機を乗り越える重要な要素となると考えます。日医の思い切った行動を期待したいものです。
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※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
(事務局担当 百冨 TEL852-1501 FAX852-1510)
担当理事 江 頭 啓 介・入 江 尚
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