医療情報室レポート |
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2001年11月30日
福岡市医師会医療情報室
TEL852-1501・FAX852-1510
特集:医療保険制度改革の行方
2002年度の医療制度改革は、厚労省の改革試案が公表された後、政府・与党社会保障改革協議会ワーキングチームにおいて検討され、29日に最終報告がまとめられました。
今回の改革論議には経済財政諮問会議、財務省、経済産業省が改革案や見解を公表するなど財政面からの圧力がかかる中、日本医師会は医療の専門家集団としての立場から、国民に不利益をもたらす改革には反対の姿勢を示し、会員の先生方のご協力のもと500万名もの署名を集め国民とともに負担増の阻止を訴えるなどこれまで以上に危機感をもって対処してきました。
この活動が最終報告にも少なからず影響を与えたものとなったといえます。
今回は、医療保険制度改革に対する日本医師会の見解と政府・与党社会保障改革協議会の最終報告についてお知らせします。
厚労省『医療制度改革試案』後今日までの経過 |
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○ | 9月25日 | 厚労省が政府・与党社会保障改革協議会に改革試案を提出 | |
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9月25日 | 日医、厚労省の医療制度改革試案に対する意見を発表 | |
○ | 10月5日 | 財務省が財政制度等審議会に「医療制度改革の論点」を提出 混合診療の拡大、若人にも伸び率管理制を導入、患者負担の一律三割、診療報酬の引き下げを明記 |
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○ | 10月9日 | 経済財政諮問会議で民間議員4名が「医療制度の抜本改革に向けて」を提出 | |
○ | 10月16日 | 日医臨時代議員会、医療制度改革案反対署名運動を展開することを表明 | |
○ | 10月18日 | 坂口厚労相、参院厚生労働委員会で老人医療費伸び率管理制度に「これに代わる良い案があれば固執しない」と答弁 | |
○ | 10月24日 | 日医、自民党医療基本問題調査会・厚生労働部会合同会議に出席し医療保険財政安定の独自案を提出、併せて伸び率管理制度について批判資料を提出 | |
○ | 10月25日 | 日医、政府・与党社会保障改革協議会ワーキングチーム(WT)のヒアリングに出席し意見陳述 | |
○ | 11月8日 | 経済産業省が政府・与党社会保障改革協議会WTに「医療改革についての考え方」を提出 | |
○ | 11月13日 | 日医連、21世紀の社会保障制度を考える議員連盟総会で「医療制度改革に関する5つの反対・5つの提案」資料を配付し、伸び率管理や患者負担増の阻止を主張 | |
○ | 11月14日 | 小泉首相、参院予算委員会で「診療報酬を下げることも考えてもらわないといけない」と引き下げの姿勢を示す | |
○ | 11月14日 | 日医、「患者負担増による医療保険改革阻止署名運動」で集めた500万名超の署名簿とともに衆参両院議長に請願書を提出 | |
○ | 11月15日 | 財務省の財政制度等審議会財政制度分科会、「平成14年度予算の編成等に関する建議」を塩川財務相に提出、次期診療報酬について「相当程度の引き下げを行うべき」と明言 | |
○ | 11月16日 | 政府・与党社会保障改革協議会WTが医療制度改革に対する中間報告をまとめる 給付率の統一、老人医療費伸び率管理制度は「さらに意見集約を図る必要がある」 診療報酬改定は「昨今の経済動向等に応じて判断すべきとの意見があった」と記述 |
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○ | 11月23日 | 大阪府地域医療推進協議会主催「医療制度改悪に反対する大阪府民1万人集会」に約2万人が参加 | |
○ | 11月26日 | 厚労省の社会保障審議会医療保険部会、「2002年度医療制度改革について」意見書をまとめ坂口厚労相に提出 | |
○ | 11月29日 | 政府・与党社会保障改革協議会が医療制度改革大綱をまとめる |
日本医師会『医療制度改革に関する5つの反対 5つの提案』 |
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5つの反対
1. | 老人医療費伸び率管理制度 <老人医療費伸び率管理制度は、憲法違反の疑いがある> |
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2. | 患者負担増 <これ以上の患者負担増は、家計破壊となる> |
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3. | 小手先だけの老人保健制度の見直し <財政的な辻つま合わせだけの改革で済まされる状況ではない> |
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4. | 保険者による直接審査支払・割引契約 <医療の平等性、公平性、フリーアクセスを国民から奪う政策には反対する> |
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5. | むやみな特定療養費の拡大 <公的保険のカバー範囲の縮小につながる特定療養費の拡大には反対する> |
5つの提案
1. | 高齢者医療制度の創設 <お年寄りが安心して医療を受けられる制度が必要> |
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2. | 被用者保険における保険料総報酬制の導入 <保険料徴収の平等化と合理化が必要> |
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3. | 薬価・医療材料価格の引下げ <厳しい値引き交渉が行われなくなった結果、薬価・医療材料価格は高止まりしている> |
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4. | たばこ税の引上げによる公費財源の確保 <社会保障に対する国の役割を果たすためにも公費財源の確保が必要> |
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5. | 一般医療保険の地域保険への一元化 <国民が公平かつ平等に医療を受けられる医療保険制度が必要> |
政府・与党社会保障改革協議会『医療制度改革大綱』 |
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「老人医療費伸び率管理制度」は見送り。 伸び率抑制のための「指針」を定め、老健法に盛り込むとともに指針を遵守できるよう診療報酬のあり方、公私病院の役割分担など有効な方策を検討し、実施する。 |
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将来の独立型医療制度の創設を視野に、現行制度の対象年齢を75歳とし、公費負担割合を引き上げる。 70歳〜74歳の患者負担は75歳以上と同様の取扱いとする。 患者負担は完全定率負担とし、一定以上の所得者には応分の負担を求める。 |
・ | 2002年度の診療報酬改定は引き下げの方向で検討し、措置する。(改定率は明記せず。今後の予算編成に向け別途協議) |
・ | 保険料率算定はボーナスも含めた総報酬制を導入し、政府管掌健康保険の保険料率を定期的に見直す。 |
・ | 総報酬制の下で、平成15年度から政府管掌健康保険の保険料を予定通り引き上げ、必要な時に7割給付(3割負担)で保険間の統一を図る。(「必要な時」の時期は明記せず。政府は2003年4月と明言、自民党は経済状況等を踏まえて検討する考え) |
<医療情報室の目> |
★医療の本質と国民の安心を担保した上での持続可能な医療制度の改革を望む
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※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
(事務局担当 百冨 TEL852-1501 FAX852-1510)
担当理事 江 頭 啓 介・入 江 尚