医療情報室レポート 
 

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2001年1月26日  
福岡市医師会医療情報室  
TEL852-1501・FAX852-1510 

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特集:医療とIT革命 −その1−
“IT革命”言葉が一人歩きしている感を持つほど最近は頻繁に使われています。政府のIT戦略会議は「5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す」とした基本戦略をまとめ、 各分野におけるIT推進を唱っています。日常生活においては携帯電話やインターネットの普及がめざましく、海外との情報交換や電子商取引なども盛んに行われています。医療の分野においても、電子カルテや病院内のオーダリングシステム、インターネットを利用した情報提供や地域での医療ネットワーク構築など、着実にIT化が進んでいます。今回は次号と併せ、医療の分野におけるITについて特集します。

キーワード:IT(Information Technology)

日本では、「情報通信技術」と訳される。インターネットに代表されるように、大量の情報が短時間で何処でも、何処へでも送受信が可能となるなど時間的、経済的合理化が図られる。しかし、日本のインターネットの普及率は主要国の中でも最低レベルにあり、かつ高速通信網などの環境整備、法律を含めたルールづくりも遅れている。このため昨年7月、内閣に「IT戦略本部」が設置され、その下に識者で構成される「IT戦略会議」が11月27日に「IT基本戦略」をとりまとめたほか、11月29日には「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)」が成立した。
医療におけるITの一例

診療諸記録の電子保存
平成11年4月22日付厚生省局長通知により、定められた基準を満たす場合、診療録(カルテ)、調剤録、助産録、その他諸記録(日誌や手術記録、エックス線写真等)の電子媒体(コンピュータシステム等)による保存が認められた。※電子媒体に保存する場合の基準
1.真正性の確保(虚偽入力、書き換え等の防止、作成の責任の所在の明確性)
2.見読性の確保(必要に応じて見読可能な状態であること、直ちに書面で表示できること)
3.保存性の確保(法令で定める保存期間内、復元可能な状態で保存されること)
4.運用管理規定を定めること

電子カルテ
パソコン等による診療録の記入・保存方法。市販ソフトも多数開発されている。電子化により過去の診療記録や検査記録等が瞬時に閲覧でき、診療上の経過管理やレセプトへの反映等、医療の効率化が図られるとともに、患者さんへの診療情報の提供にも利用されている。

オーダリングシステム
診察室、検査室、レントゲン室、薬局など病院内をLAN(限られたエリア内にあるコンピュータ・ネットワーク)で結び、検査や投薬等の指示をパソコン等の端末により行う。電子カルテシステムや医事会計システム等とも連動させ、正確性、迅速性を図るもの。

画像遠隔診断システム
CT、MRI等の画像や病理組織画像を通信システムを用い遠隔の専門医に送信し、診断を仰ぐ。地理的、時間的効率化が図られる。※福岡市医師会成人病センターでは、CT撮影画像の読影をこのシステムにより専門医へ依頼し、ご紹介いただいた会員の先生へ結果を報告しています。写真による病変部位の特定など解りやすい読影レポートが電子ファイルで返ってきますので、将来的には会員の先生への電子情報による配信や、会員の先生が直接データを取得できるよう検討を進めています。

レセプト電算処理システム
紙媒体により請求しているレセプトを、フロッピーディスクやMO等の磁気媒体に収録したレセプトにより診療報酬の請求を行う。社会保険診療報酬支払基金では、2000年4月1日からレセプト電算処理システムによる参加医療機関受付体制を整備している。 介護保険では制度発足時から磁気媒体や電話回線を用いた通信システムにより請求することが原則とされている。
※日医は1月24日にオンラインレセプトコンピュータシステムを公表した。このプロジェクトの資金は医師会から出ており(日医総研は基本的にそう言う組織です)、医師会会員にその成果を還元する必要があります。したがって、医師会の先生方が自由に使えるようにする目的で、オープンソース、オープンプロトコルという考え方が導入されています。また、レセコン・電子カルテは医療を支える重要なインフラであるため、レセプト情報やカルテ情報は患者さん個人のプライベートな情報ではありますが、医学医療の発展に欠かせないと言う面では公共財という側面があります。したがって、レセコン・電子カルテシステムには高い信頼性が欠かせません。そして無駄なコストをかけずに高い信頼性を得る方法として、オープンソース方式は優れていると考えられます。
★オープンソース・オープンプロトコル:技術を独占するよりも、多くのユーザーと共有することでその発展を目指す動きの1つ。ソースコード(原プログラム)やプロトコル(通信規約)を公開して自由な利用を促進しようとするもの。

地域医療情報ネットワークシステム
イントラネットなどのネットワークを構築し、医療機関の診療情報や感染症情報、医薬品情報、病院の当直医情報や救急医療情報等の情報を共有し、効率化を図る。
※福岡市医師会イントラネットでは医療情報マップによる会員医療機関情報の掲載をはじめ、24時間救急診療実施機関(救急病院協会)案内などの地域医療情報を掲載しています。また、各区医師会イントラネットホームページでは、病院当直医情報や訪問診療・往診実施医療機関などの在宅医療関連情報、救急応需体制、感染症情報や校医名簿、介護保険関連情報など様々な地域医療関連情報が掲載されています。
その他にも、毎週週報にてお知らせしている各種通知、学術講演会の予定、医師会の行事予定や活動報告などの情報が閲覧できます。ITを身近に感じるためにも、是非福岡市医師会イントラネットページにアクセスして下さい。
★福岡市医師会イントラネットサービスは会員専用のため、閲覧のためにはID、パスワードの取得が必要となります。福岡市医師会電算課(TEL852−1505)に登録をお申し込み下さい。

ITによって何が変わる?

作業時間の効率化
インターネットで情報を取得する場合や電子メールで情報交換を行う場合など、ファクシミリに比べ非常に短時間で送受信が可能です。また、電話では相手の都合の確認も必要となりますが、その必要もありません。

情報のデータベース化
電子カルテに代表されるように、診療記録や検査記録が電子媒体により保存されるため、過去の記録の抽出や検索が容易に可能となります。また、経時データをグラフなど図表に展開し、視覚的に評価するなど活用方法も広がります。

情報の共有化
従来個人の知識・経験により提供・取得され、各個人の下で管理されていた医療情報を、イントラネットなどのネットワークを通して相互に共有することにより、医療機能の効率化や機能分化が推進されます。
今後は電子カルテ等を通じて、患者情報の共有化による診療機能の効率化も視野に入れたシステムづくりが課題となります。

ペーパーレス化、省スペース化
電子媒体による情報のやりとりでは、データそのものが移動するため、紙媒体が存在せず、省資源化が図られ、加工・修飾も効率的に行えます。
また、診療録の保存期間は医師法により5年間と定められており、その他の諸記録も医療法等関係法令に基づき2〜5年間の保存期間が義務付けられています。電子媒体による保存では、何十年分もの記録がシステムや磁気媒体に保存されますので、スペースが有効に活用できます。

<医療情報室の目>
★ITが医療を変えるか
「在宅で心電図を撮りデータを携帯電話により病院に送信し専門医の診断を受ける−」既に実施されていることかもしれませんが、情報化は時間的・空間的概念を飛躍的に短縮し、まさしく医療の効率化が図られるものとして注目されます。地域医療情報の共有化による医療機関連携は、これから地域医師会として目指すべき一つの方向性であると考えられます。また、電子カルテの普及に伴う患者個人情報の共有化が今後進むことが予想される中で、超えなければならないハードルもまた多く存在しています。
次回の特集では、IT化が推進される中で検討されるべき課題・問題点について、また推進の基盤となる現在の状況(医師会・社会全体)についてお知らせしたいと思います。

 ※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。
   (事務局担当 百冨 TEL852-1501 FAX852-1510)
 

担当理事 江 頭 啓 介・入 江  尚


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