医療情報室レポート |
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2000年9月29日 特集:高齢者医療制度の概要
※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。 担当理事 江 頭 啓 介・入 江 尚
−各団体の提案−
医療保険制度抜本改革の大きな柱である高齢者医療制度の改革について、日本医師会はいち早くその必要性を訴え改革案を提示していました。 しかしながら厚生省での制度改革論議は遅々として進まず、本年度より実施するとした当初予定が先送りとなり、2002年度を目途に検討さ
れることとなっています。
今年6月、日医総研セミナーにおいて日医案をはじめ関係団体が改革案を提示し、意見交換が行われました。各団体の主張の違いが明らかにな
りましたが、意見が一致する項目もあり、今後議論が重ねられ、制度改革が進んでいくものと思われます。
今回は同セミナーにおいて発表された日医、経団連、連合、国保中央会の改革案を紹介します。
各団体が提案する改革案の概要
団体名
日本医師会
連合・日経連・健保連
経団連
国保中央会
制度の骨格
独立型
突き抜け型
独立型
一本型
特徴
高齢者健康保険制度
退職者健康保険制度
高齢者医療制度
各医療保険制度を一本化
財源
公費90%、保険料、自己
負担それぞれ5%
公費50%+保険料5〜6
%+現役の負担
公費(消費税中心)+
保険料
被保険者
75歳以上
加入期間が通算25年以上
(扶養家族含む)
年齢で区分(一定所得以
上は現役世代の医療保険
に残る)
全国民
保険者
都道府県
全国一本
市町村(広域連合)
国または財政調整措置を
伴う地方単位
一部負担
医療費の5%相当
1割(低所得者等は別途
手当する)
給付率を統一
当面の改善策等
・2002年から段階的に公
費を引き上げ、拠出金
を引き下げる
・2007年に介護保険と統
合
・医療保険の統合一本化
には20〜30年の長いス
パンが必要
・公費50%の中で高齢者
比率で財政調整
・入院後3カ月目に切れ
目を入れて介護と一本
化することもあり得る
・拠出金は段階的に廃止
すべき
・介護保険制度と一体的
に運営する
・改革は段階的に進める
が、ある程度思い切っ
て行うことが必要
・段階的措置として当面
は現在の保険者組織を
存続させながら財政を
一本化
・老人医療費を若人の3
倍程度に引き下げる方
策が必要
日医と連合・日経連・健保連−主張の相違点、共通点
★診療側と支払側との立場でこれまで様々な場面で主張が対立してきた両者ですが、高齢者医療制度については共通の認
識を持つ部分もありますのでそれらを簡単にまとめてみます。
○相違点
・制度の骨格…日 医 案:75歳以上の後期高齢者層を対象とする「独立型」
連合等案:被用者保険グループOBの高齢者を対象とした「突き抜け型」
・財 源 …日 医 案:公費負担率90%
連合等案:公費負担率50%
○共通点
・国民皆保険制度の維持
・社会保険方式を軸とする制度設計
・高齢者からの保険料、自己負担の徴収
・現役世代と事業主の協力
・介護と医療の統合
日本医師会の提案
○「75歳以上を対象とした独立型」採用の理由
・若年世代とのリスク構造の違い
・医療に対するニーズの違い
・医療の内容、目標、提供方法の違い
○公費の重点配分
・健康に対するリスクの高い後期高齢者のみで一つの保険集団を形成すると保険原理が機能しないため、
重点的に公費を投入し保険から保障へと制度の転換を図る
○独自の診療報酬支払い方式
・慢性期といえども画一的な包括支払方式ではなく、患者特性に応じた支払方式
寝たきり度により分類し基本給付額を決定
痴呆度、医療依存度に応じ「痴呆加算」「医療加算」を上乗せ
※急性期は出来高払い中心
○保険者は都道府県
・市町村間の規模の格差の是正、医療計画の策定主体として需給バランス調整機能を発揮
○2002年から段階的実施
・激変緩和措置、経過措置期間を置き段階的に実施
<医療情報室の目>
★高齢者医療制度を核とする日医の「2015年医療のグランドデザイン」
急速な高齢化の進展と激変する社会構造を考えるとき、医療制度改革も中長期的な展望に立って方策が検討される必要があります。
日医は総人口の減少と高齢化(特に75歳以上の後期高齢者の大幅な増加)が同時に進行する2015年をターニングポイントとして捉え、制
度設計や財源計画を検証し、「2015年医療のグランドデザイン」を提示しています。(概要は6月2日発行の医療情報室レポート25
を参照下さい。)
グランドデザインでは、高齢者医療制度の創設により医療と介護を統合し、人口構造、医療需要、サービス提供体制等を推計し、財
源負担構成や経済波及効果を予測しています。
日医はいち早く医療保険制度改革の必要性を訴え、独自に実態に即した数値を用い、真に必要なものは計上(ある程度の負担増)し、
具体案を示しています。その中で、国民皆保険を堅持しつつ、遺伝子治療や臓器移植、健康増進やアメニティなどについては健康への
自立投資という概念による別財源が提案されていますが、自立投資と混合診療との違いを会員に対してもう少し解りやすく説明される
ことが望まれます。
★社会保障有識者会議で坪井会長が提言
「社会保障構造の在り方について考える有識者会議」は、医療、介護、年金など社会保障制度全般の問題を横断的に検討する首相の
私的諮問機関であり、坪井日医会長はじめ関係閣僚、税、社会保障、財政学、医療、福祉などから幅広い人材が集められています。
坪井日医会長は8月30日、同会議にて「社会保障と医療」をテーマにレポートを行い、高齢者医療制度を含め日医の社会保障に対す
る考え方を示しました。厚生大臣は考え方に理解を示したと言われており、今後も積極的に日医の考え方が提案されることが期待されます。
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