医療情報室レポート |
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2000年4月28日 特集:診療に関する相談窓口
その2
※ご質問や何かお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までお知らせ下さい。 担当理事 江 頭 啓 介・入 江 尚
-相談事例と問題点-
福岡市医師会「診療に関する相談窓口」が相談の受付を開始して4ヶ月になり ます。
これまで23件の相談が寄せられ、内容によっては医師(担当理事)との面談や、
福岡県医師会の診療情報提供推進委員会へ連絡する等の対応を行っています。
今回は「診療に関する相談窓口」にこれまで寄せられた相談事例の紹介と、相
談内容から考えられる問題点について検証しました。
福岡市医師会「診療に関する相談窓口」
開 設 日:平成12年1月1日
受付日等:毎週月・水・金曜日の15:00〜17:00(祝日等医師会休会日を除く)
電話番号:852−1539
対 応 者:専任看護婦1名(病院総婦長経験者)
相談状況:1月 4件、2月 9件、3月 7件、4月 3件(26日現在)
計23件
福岡県医師会診療情報提供推進委員会へ報告したケース:1件
(相談内容をそのまま掲載しました。) 実際に受けた相談事例
1)
対応に関するもの
○
長時間待たされた
子供が洗剤を飲んだので急いで病院を受診した。医師は飲んだ洗剤を持ってくるよう言い、再び家に帰って洗剤
を持ってくるまでの1時間半もそのまま放置した。洗剤を持ってきてから口腔内を診て心音を聴かれたが、洗剤を
持ってくる前にもできた処置ではないか。
○
医師からの暴言
腹痛を起こし、夜間のためかかりつけ医ではなく近所の救急病院を受診した。診察の際、時々同じ症状があった
ので以前にもらった薬の話などをしようとしたが取り合ってくれず、とても信じられないような暴言を吐かれた。
とてもショックを受けた。
2)
診療内容に関するもの
○
夜中に胸苦しさを覚え救急病院を受診、心電図、胸写を受けたが説明もなく「異常はない」と言われ帰された。
しかし症状が続くので他院を受診し、心筋虚血と診断され治療中である。救急病院に対し検査の説明を求めたい。
○
コンタクトレンズを購入に行ったところ、診察の結果網膜剥離と言われ「早急に手術しないと手遅れになる」と言
われた。充分な説明がないまま手術を受けたと感じている。
○
会社の健診を受けた内科で不整脈と言われ、その場で精密検査を勧められて、不整脈の原因や対策などの話はなく
心臓治療のための内服を受けた。何となく不審に思い他の病院の循環器科を受診した結果、異常はなかった。
精密検査を執拗に勧めたこと、要した費用や検査データを示しての説明がなかったことなど腑に落ちないことばか
りで、この医師が信じられなくなった。
3)
治療費に関するもの
○
以前より近所の産婦人科でホルモン剤をもらっていたが、途中からその薬が保険適用外になったとの説明を受け、
自費購入となり負担金が増えた。保険に関する説明を聞いても複雑で理解しづらい。
○
領収証がもらえない。明細を聞いても「保険でこうなってます。」としか言われず適正な治療費かどうか判らない。
相談内容より検証する問題点
○
医療の提供側と受け手との乖離
相談事例では、充分な説明がなかったとして苦情を訴えるケースが多くあります。医療側の説明を聞くと、充分説
明しているとの回答をいただきます。つまり、先生方が誠意を持ってよく説明していただいているということを前提
にしても、どうしても受ける側の患者さんと提供側である医師との間における医学知識の差、健康保険や診療報酬に
対する知識の欠如や理解不足、患者さんが求めているものと医療側が提供するものとの乖離があるため、患者さんか
らみるとある程度の不平不満が生じることが現実のようです。
今後取り組むべき課題
○
危機管理対策の一つとしてとらえる
相談があった事例などは日常診療の中で普通に起こりうるもので、特定の医師や患者さんにだけ起こる特殊なもの
ではないということを意識し、日常のリスクマネジメントとして、危機管理対策の一つとして対策を講じる必要があ
ると考えます。
○
担当者を置き対応する
常に起こりうるものとして対応していくため、施設規模の大小に関わらず担当者を置く必要があるようです。
担当者が配置されてあれば本会に相談があった事例についても事実関係の確認がスムースにできます。
○
接遇面の教育
患者さんと医師・医療従事者の関係も人対人の関係であり、それぞれの主観により行き違いが生じる可能性は否定
できませんが、多くのきっかけは対応に不満を持たれたり言葉遣いに憤り、最初から良好な関係の構築が阻害されて
いるようです。院内教育をお願いするとともに、本会でも相談窓口担当者となられる方を対象とした研修会を計画す
る予定です。
<医療情報室の目>
★日常診療における充分な情報提供と説明を心懸け、患者さんの同意を得る
相談事例からみて、日常診療で充分な情報提供と説明を行い、患者さんに納得していただくことが第一のようです。
また、診療に不満を持たれる例として接遇に対する不満をきっかけとして不信感を募らせることが多いようです。
患者さんを始め、身内の方々への言葉遣いや接し方について従業員への指導は欠かせません。特に、医師の言動は
患者自身に与える影響が大きいことから、思慮をもって対応しなければならないと考えます。
★カルテの記載はわかりやすく
万が一の場合(医療訴訟になった場合などは証拠保全などの手続きにより全面開示される可能性があります)に備
えるためにも、カルテ等は日頃より提供でき得る資料として整備することを心がけておく必要があると考えます。
特に説明した内容、患者さんの反応などを具体的に記載しておくことが大事です。
尚、カルテを記載するために十分な時間を割くことができない現状を訴え、診療報酬上の評価などについて、日医
を通じ要望していくことも今後必要になると考えます。
★
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