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特集:診療録等の電子保存について
診療録(カルテ)等については、これまでワープロ等のOA機器を用い作成した場合
でも保存は紙媒体で行うこととされていましたが、平成11年4月22日付厚生省局長
通知により、定められた基準を満たす場合、電子媒体(コンピュータシステム等)
による保存が認められることとなりました。
カルテの保存年限は医師法により5年とされており、その他の諸記録を含め保管場
所に苦慮されている医療機関には朗報ともいえます。また、将来的には医療機関相
互のネットワーク上での情報交換が可能になればそのメリットは計り知れないもの
でしょう。しかし反面、セキュリティの問題も存在します。
今回は診療録等の電子保存について、その対象、運用にかかる留意点、メリット等
についてまとめました。
○医師法に規定される診療録
○薬剤師法に規定される調剤録
○保健婦助産婦看護婦法に規定される助産録
○医療法に規定される診療に関する諸記録 等
(病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、検査所見記録、エックス線写真、
入院患者及び外来患者の数を明らかにする帳簿)
1.保存義務のある情報の“真正性 ”が確保されていること。
○故意または過失による虚偽入力、書き換え、消失及び混同を防止すること。
○作成の責任の所在を明確にすること。
“真正性 ”: |
正当な人が記録し確認された情報に関し、第三者から見て作成の責任と所在が明確であり、かつ、故意または過失
による、虚偽入力、書き換え、消失及び混同が防止されていること。
尚、「混同」とは、患者を取り違えた記録がなされたり、記録された情報間での関連性の記録内容を誤ることをいう。
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2.保存義務のある情報の“見読性 ”が確保されていること。
○情報の内容を必要に応じて肉眼で見読可能な状態に容易にできること。
○情報の内容を必要に応じて直ちに書面に表示できること。
“見読性 ”: |
電子媒体に保存された内容を必要に応じて肉眼で見読可能な状態に容易にできること。
尚、「必要に応じて」とは、『診療、患者への説明、監査、訴訟等に際して、その目的に応じて』という意味である。
また、「容易に」は、『目的にあった速度、操作で見読を可能にすること』を意味する。
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3.保存義務のある情報の“保存性 ”が確保されていること。
○法令に定める保存期間内、復元可能な状態で保存すること。
“保存性 ”: |
記録された情報が、法令等で定められた期間にわたって、真正性を保ち、見読可能にできる状態で保存されること
をいう。
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※ 法令に定める保存期間
診 療 録 − 5年間
調 剤 録 − 3年間
助 産 録 − 5年間
診療に関する諸記録 − 2年間
1.施設の管理者は※1運用管理規程を定め、これに従い実施すること。
2.運用管理規程には以下の事項を定めること。
1)運用管理を総括する組織・体制・設備に関する事項
2)患者のプライバシー保護に関する事項
3)その他適正な運用管理を行うために必要な事項
3.保存されている情報の証拠能力・証明力については、※2平成8年の高度情報通信社会推進本部制度見直し作業部会報告書
おいて説明されているので、これを参考とし十分留意する。
4.患者のプライバシー保護に十分留意する。
※1 については規程例が、※2 についてはその内容を含めた診療録等の電子媒体による保
存に関するガイドラインが福岡市医師会FAX情報サービスにて取り出せます。
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今回の電子保存が認められた措置は、電子媒体に保存したい施設が“自己責任 ”において実施することを妨げない
ことを確認したもので、電子媒体に保存することを強制するものではないとされています。
“自己責任 ”とは、当該施設が運用する電子保存システムの
“説明責任 ”、“管理責任 ”、
“結果責任 ”を果たすことを意味します。 “説明責任 ”:当該システムが電子保存の基準を満たしていることを第三者に説明する責任
“管理責任 ”:当該システムの運用面の管理を施設が行う責任
“結果責任 ”:当該システムにより発生した問題点や損失に対する責任
1.診療諸記録の保管・管理面
診療録で5年、その他の諸記録も2〜3年間の保存期間が各法により定められており、その量は各医療機関とも膨
大なもので、保管場所に苦慮しているところも多いと思います。
電子媒体による保存であれば、何十年分もの記録がシステムや磁気媒体に保存されることとなり、かつ、検索や抽
出が至極簡単に行えることとなります。
2.診療情報の相互利用
医療機関相互の連携を図る上で必須となる診療情報の提供が、電子保存システムによる電子化された情報を通信シ
ステム等を用い送受信することにより、時間的効率・情報の正確性の向上が図れます。
但し、相互利用を図る上ではデータの互換性、管理上の責任の所在を明確にすることなどが必要です。
<医療情報室の目> |
★病診、診診連携における情報交換に役立ってこそ電子保存の意義
電子保存により各医療機関の保管管理面の向上が図れることが1次的な機能向上とすれば、医療機関相互における
連携に情報交換として用いられることが2次的な機能向上であると考えられます。
しかしながら、電子保存された情報の相互利用を可能にするための最大のネックは、データの互換性と考えます。
データをいかに共通化・標準化するかが問題ですが、将来的に各医療機関に浸透し、ネットワーク上で相互にやり
とりできるようになることが本当の電子保存の意義と考えます。
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