水ぼうそう(水痘(すいとう))と 帯状疱疹

 水ぼうそうと帯状疱疹の原因ウイルスは、同じ水痘・帯状疱疹ウイルスです。このウイルスに初めて感染する子どもは水ぼうそうになり、感染した後にウイルスが脊髄の神経節に潜伏し、年を経てストレスや免疫低下を契機として再びウイルスが活性化して、その神経が支配している皮膚に症状を起こしたものが帯状疱疹です。そのため、基本的に過去に水ぼうそうにかかったことがある方が、高齢となり発症するのが帯状疱疹ということになり、80歳までに約3人に1人が発症します。

 2000年から10年間の小児科における一定点医療機関から報告される水ぼうそう患者数は年平均81.4人でしたが、2014年に水痘ワクチンが小児の定期接種に導入されてから減少傾向が進み、2020年では10.6人と急速に水ぼうそうにかかる子どもが減りました。しかしこれが、大人が水ぼうそう患者に接触することによるブースター(免疫再強化)の機会が減ることにつながり、全ての世代(特に20~40代)で帯状疱疹の発症数が増加する要因の中で大きなものの一つとなっています。このことは1997年から2018年に宮崎県で実施された帯状疱疹患者を対象とした大規模疫学調査で明らかになりました。

 子どもに接種する水痘ワクチンが帯状疱疹の発症予防にも効果があることが証明され、2016年にワクチンの効能・効果に「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」が追加されました。1回の皮下注射で発症予防効果は50~60%、効果の持続期間は5年程度とされています。費用は数千円~1万円前後で副反応は軽いですが、免疫機能に異常がある場合は接種できません。さらに、不活化ワクチンである帯状疱疹ワクチンが2020年に販売開始され、免疫が低下している場合も接種可能となりました。2回の筋肉内注射で発症予防効果は90%以上、効果の持続期間は10年程度とされています。副反応では80%の方に痛みがでて、費用は1回あたり2万円程度と比較的高額です。基本的には任意接種ですが、福岡県内では宗像市・大野城市・太宰府市・朝倉市・志免町・須恵町・粕屋町・筑前町・東峰村で助成制度があり、そのような自治体が増えることが期待されます。


桜坂なかやまこどもクリニック 中山 英樹 先生


取材記事:ぐらんざ