生活習慣病を引き起こす?味覚障害に要注意

 最近、「何を食べてもおいしく感じない」ことや「料理の味付けが濃くなった」と家族から言われることはありませんか。それは味覚障害のサインかもしれません。

 私たちが食べ物の味をキャッチするのは主に舌の表面の舌乳頭にある味蕾という器官です。食べ物を口に入れると、その成分が唾液中に広がり、味蕾の中の味細胞が感知。この信号が神経を通して脳に送られ、脳の味覚中枢が「甘味・塩味・酸味・苦味・うま味」という五つの味を認識します。この経路のどこかに異常が生じると味を感じる力が弱まったり、まったく感じなくなったりするのです。

 味覚障害には、さまざまな原因があります。一つは亜鉛の欠乏です。亜鉛は味蕾の中の味細胞の再生に必要なミネラル。消化器官系の疾患、薬の副作用などで亜鉛の吸収が阻害されると味細胞の再生力が落ち、味をキャッチできなくなるのです。

 このほか、唾液の分泌低下や虫歯、たばこなど口腔内の環境悪化も味蕾の機能を損ないます。また、糖尿病や脳梗塞などによる神経経路の異常で脳が味を認識できないといった全身性疾患が味覚障害を招くこともあれば、うつやストレスなど心因性の味覚障害もあります。

 一般に味覚障害は50代から増えてくると言われます。唾液の分泌機能の低下をはじめ口腔内のトラブルや全身性疾患、それに伴う薬の多用など加齢とともに味覚障害のリスクは高まってきます。

予防法は、第一にバランスのよい食事。そして口内環境を清潔に保つことです。牡蠣や牛肉など亜鉛を多く含む食品を積極的に摂るよう意識するとよいでしょう。

 味覚障害は放っておくと、気付かないうちに塩分や糖分を摂りすぎて生活習慣病を誘発する恐れがあります。全身性疾患が隠れていることもありますから、少しでも異常を感じたら早めに耳鼻咽喉科を訪ね、検査してみることですね。


ふじい耳鼻咽喉科クリニック 院長 藤井加奈子先生


取材記事:ぐらんざ