動脈硬化の進行を遅らせるための「8割」の法則

 動脈は三層構造で、本来はとてもしなやかな血管です。その弾力が失われ、硬く内側に狭くなっていく症状を動脈硬化といいます。加齢による変化なので、誰にでも起こり止めることはできませんが、変化の速度を遅くすることはできます。そのためには、早期発見と正しい生活習慣が大切です。

 食事では、血管に良いとされる栄養成分が豊富な青魚を積極的に摂取し、野菜中心の食事でコレステロールを抑制しましょう。満腹まで食べる必要はないので、腹八分目を心がけてください。

 運動では、ウオーキングをおすすめします。「きついな」と思う歩数の8割程度が目安です。大切なのは、毎日続けることです。

 仮に血管が詰まっていたとしても、継続的な運動の作用により自然治癒力が働き、血の足りない所に毛細血管のバイパスを作り、日常生活では困らないようになることもあります。

 そして、喫煙や過度な飲酒は控えましょう。

 また、病気との関係もあります。特に糖尿病では、血管の弾力が失われ石灰化します。糖尿病により、白内障や腎臓に疾患を抱えることもありますが、それも血管が石灰化することに起因します。

 100m程度歩くとふくらはぎが痛くなり、3分程休むとまた歩けるという間欠性跛行という症状があります。歩行時は安静時と比べて筋肉が10倍程度の血液を必要とするので、太ももの血管が詰まったり狭くなったりしていることが原因で痛みが表れます。この場合、検査をすると高い確率で心臓など他の部位の疾患が見つかります。このように、大病を見つける入り口になるので、下肢の動脈は「血管診察の窓口」と言われています。些細なことから危険信号を拾ってあげることが重要ですので、かかりつけ医を持ち、わずかな体調の変化も相談できるようにしましょう。

 今は技術の進歩により四肢の血圧を同時に測りながら血管のしなやかさも計測できるABIという機械があります。動脈硬化は、気づかないうちに進行しますので、気になる場合は、現状を把握するためにも検査を受けてみてください。


医)貝塚病院 庄司 哲也 先生


取材記事:ぐらんざ