新型コロナウイルス感染症後遺症の治療

 世界的に猛威を振るった新型コロナウイルス感染症。しかし、後遺症に関しては、まだ分からないことが多いのが現状です。咳や痰、頭痛など罹患している際にも見られる症状は後遺症でも多く、全身状態に影響する倦怠感や集中力の低下、睡眠障害を引き起こすこともあります。

 後遺症に悩んでいる人は、比較的若い中年層や学生などが多い印象で、日常生活や社会生活に影響が出ている人もいます。傾向としてワクチン接種を受けた方が、後遺症は起こりにくいようです。

 研究により新型コロナウイルス感染症において、上咽頭は最初に感染がおこり、最後まで炎症が残る場所であることが分かりました。上咽頭は鼻と喉の境目にあり、風邪のひきはじめに「つーん」とする場所、水が鼻に入った時に痛い場所です。ここに直接薬液を塗る治療法、上咽頭擦過療法(BSPOT治療、EAT)があります。原因である上咽頭の炎症が取り除かれると、後遺症の改善がみられることがあり、登校や出勤ができない状態から社会復帰できた例もあります。

 嗅覚障害、味覚障害という後遺症は、報じられているほど多くない印象です。実は新型コロナウイルス感染症に限らず、風邪をひいた後に嗅覚障害が残ることは以前からよく知られています。上咽頭擦過療法や鼻うがい、漢方薬を含めた投薬治療を併用することで、これらも改善が期待できます。

 新型コロナウイルス感染症の多くは治癒できていますが、後遺症が残りつらい思いをしている人もいます。後遺症の一番のストレスは、以前までできていたことができなくなることです。倦怠感により起き上がることができない、思考が整理できない(ブレインフォグ)、集中力が低下するなどの症状は、理解が得られにくく精神的にも追い詰められてしまうので、家族や周囲の人がまずは理解を深め寄り添うことが大切です。

 後遺症治療もですが、まずは罹患しないことです。特に高齢者は重症化しやすいのでワクチン接種、うがい、手洗い、マスク着用を継続して行ってください。


医)西耳鼻咽喉科医院 西 総一郎 先生


取材記事:ぐらんざ