これはイボ?それはイボ?
「イボ」は誰でも聞いたことがある言葉だと思いますが、どんな病気ですか? と聞かれると詳しく答えるのは意外と難しいものです。一般的にイボと呼ばれているものの中には、医学的に見るといろいろな皮膚の病気が含まれています。人から人へ感染するものや、中には悪性のものもあるので注意が必要です。
「イボ」という言葉は皮膚に限らず“物の表面にできた突起物”一般を意味する俗語です。専門用語としては「疣贅(ゆうぜい)」という言葉が使われますが、俗語的にいうイボはあくまでも見た目の問題ですから、原因も性質も異なるさまざまな皮膚の突起物が含まれてしまいます。これらが、多様な皮膚病変がイボと呼ばれてしまう理由です。
とは言ってもその多くはウイルスの感染でできるイボ(疣贅)ですので、専門用語的にイボという場合はだいたいウイルス性疣贅と考えて良いでしょう。
そのウイルス性疣贅にも「尋常性疣贅」や「扁平疣贅」、「尖圭コンジローマ」など、見た目やできやすい場所が異なるさまざまな種類があります。原因のウイルスは「ヒト乳頭腫ウイルス」と呼ばれるものです。
一方、病名にイボがつくことから紛らわしいものに「水イボ(伝染性軟属腫)」や「としよりイボ(脂漏性角化症)」があります。水イボはウイルス感染でできるところはウイルス性疣贅と似ていますが、「伝染性軟属腫ウイルス」という全く別のウイルスが原因です。としよりイボは加齢性の変化でウイルスとは関係がありません。
また、イボのようにみえる皮膚病はその他にもたくさんあり、「ウオノメ(鶏眼)」や「タコ(べんち腫)」もそのうちの一つです。どちらも、履物が合わないなどのために、皮膚の一定部位に摩擦や圧迫などの異常刺激が繰り返し加わることにより固くなったもので、ウイルスとは関係ありません。
これら紹介した以外にもさまざまな皮膚病変がイボのように見えることがあります。イボと思っても医師の目で見るとそうでないものもたくさんあるので、気になるできものがあれば医師に診てもらうと安心です。イボの治療は診断に基づき、外科的処置、外用療法や内服療法などから、それぞれの患者さんに最も適していると思われるものを選んで行われます。
医)安川皮膚科医院 安川 晋輔 先生
取材記事:ぐらんざ