緩和ケアいろいろ
「緩和ケア」とは例えば、がんなどの病気になったとき、患者さんの体や気持ちの苦痛を和らげるためのケアのことです。
痛みや呼吸苦、けんたい感などの身体の症状から病気による不安、抑うつ、不適応などの心理精神の症状まで患者さんの病状を総合的に把握して診療します。
わが国では2007年のがん対策基本法の施行により、がん診療の初期から終末期に至るまで切れ目のない緩和ケアが提供されるようになりました。
当院の緩和ケア内科では、主に進行がんやがん末期の患者さんのケアを担当しています。がんの症状が厳しい患者さんには、緩和ケア病棟(ホスピス)への入院療養をお勧めしています。
患者さんの病状に余裕がある時期は、住み慣れたご自宅で療養しながら、緩和ケア外来を受診してもらっています。外来と入院の両面をカバーすることで、患者さんへの継続的な診療が可能となります。
ただし、仕事の都合や核家族化などで、自宅でのケアが難しいご家庭も少なくありません。当院では個別の事情も考慮して、自宅療養中の患者さんの短期入院にも対応しています。
緩和ケアといえば、がんの治療をイメージすることが多いかと思いますが、最近は、がん以外の病気の緩和ケアも重要なテーマになっています。
具体的に言うと、心不全、呼吸不全、肝不全、腎不全、神経難病など非がん疾患の終末期の苦痛を軽減しようというものです。中でも心不全の患者さんは今後、増加することが予測されています。心不全の診療では、薬物治療やリハビリがガイドラインで推奨されており、その中でいよいよ重症化した方への心不全緩和ケアが必要となります。非がん疾患の入院療養の時は、一般病棟や地域包括ケア病棟で対応しています。
当院はホスピス以外にも一般病棟や地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟などを有する地域に根差した一般病院です。これらの病棟では、がん診療をサポートする目的で医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなど多職種で構成する「緩和ケアチーム」を設置。身体症状から精神心理症状まで幅広いケアとサポートを行っています。
緩和ケアで大切なことは、苦痛緩和を十分に行いつつ、患者さんらしさ、ご家族らしさを追い求め、つねに自然体で臨むことだと思います。
原土井病院 山下 和海 先生
取材記事:ぐらんざ