自覚しにくい貧血。あなたは大丈夫?

 一般的に若い女性に多い貧血ですが、高齢になればがんが原因のこともあるので要注意です。さて、貧血は、赤血球、ことに酸素を運ぶ役目のヘモグロビン濃度が減った状態をいい、WHOでは、男性で13g/㎗未満、女性で12g/㎗未満と定義しています。しかし、生理的な低下を加味し、最近では男女を問わず高齢者は11g/㎗未満を貧血とすることが多くなっているのが現状。70歳以上の男性の3%前後、女性の6%前後が貧血とされています。※

 それでは高齢者の貧血にはどのような特徴があるのでしょう。高齢者は運動量が低下し一般的な自覚症状がわかりづらいとされます。他の病気のため症状が多彩になったり、高齢者に限ったことではないのですが、ゆっくり貧血が進めば体が慣れて、症状に気づきにくかったりもします。

 原因はどうでしょう。やはり多いのは鉄欠乏性貧血。現代においては栄養失調の頻度は少ないので、慢性の出血を想定すべきです。注意すべきは胃腸系のがんでしょうし、鎮痛剤による胃潰瘍、血液サラサラの薬による出血傾向は要注意です。鉄剤を飲むことで貧血は改善することが多いのですが、原因を突き止め、それに対処することの方が大切。その他、がんやリウマチなどの慢性疾患(炎症)では、体内の鉄を上手く使えず貧血を呈することもあります。また、腎臓が弱ってくるために腎臓で作られる造血ホルモンが十分に作られず貧血になることも。さらには、胃がんの手術後、数年経って貧血になったり、稀に血液の病気で貧血になることもあります。

 基本的にはバランスの良い食事を取りましょう。ただ、鉄欠乏性貧血になると普段の食事改善では間に合いません。一方で、鉄剤は鉄欠乏性貧血にしか効きません。鉄を控えた方が良い病態もあるので早めの専門医への受診、原因にあった対策が必要です。

※厚生労働省「平成27年 国民健康・栄養調査報告」より


浜の町病院 血液内科部長 衛藤 徹也先生


取材記事:ぐらんざ