認知症とは違う、老人性うつを知る
もしかして「うつ」かも…と思うことはありませんか?うつとは、憂鬱な気持ちが続いたり、生きるエネルギーが低下すること。食欲がない・眠れない・便秘を頻繁にするといった自律神経症状を伴うことも多く、正式な病名ではありませんが高齢者がなることを呼称して「老人性うつ」といいます。実は、認知症と似ているため間違われやすいのですが、認知症は一度患うと長く付き合うことになるのに対し、老人性うつは適切な治療をすればある程度の改善が望めます。そこで、2つの違いを確認してみましょう。
まず、老人性うつでも認知症と同じ記憶力の低下がみられますが、質問の受け答え方が異なります。認知症の方は的外れな回答をしたり言い訳をするのに対し、うつの方は答えない傾向にあります。それは関心がなかったり、答える気力がないため。自分なんて…と自己評価が低くなっていることが多く、重症化すれば自傷行為に陥ることもあるため、早期治療が大切です。
また、進行の速度にも違いがあります。アルツハイマー型の認知症であれば悪化に1~2年かかりますが、うつは1~2ヶ月と短期間。原因の多くは、仕事を辞めた、身内を亡くした、子供が独立した、病気を患ったなどの喪失体験が引き金になっています。
治療法は、まず環境を調整すること。何か一つ失くしたなら、前向きになれる別のものを見つけるのも良いでしょう。頑張ってなどの励ましは「もうできない…」と悲観的になりやすいので避けた方がベター。無理なく負担を減らすことも大事です。もう一つは薬による治療。症状が落ち着いたら薬を半分の量にするなど、様子を見ながら減らすのがベストです。稀に治療をしていたら認知機能を落とす薬の副作用がでてしまい認知症を合併したという例もあるので、治療の経過もしっかり病院で診てもらいましょう。
田北メモリーメンタルクリニック 院長 田北 昌史先生
取材記事:ぐらんざ