「慢性腎臓病(CKD)」は早期発見&治療が鍵。
腎臓は“肝腎要”と言う通り、重要な臓器。その働きは多岐に渡り、体液の恒常性を保つためにミネラルを調整し老廃物を除去する尿を作ったり、血圧の調整もすれば造血ホルモンを作ったり。骨の発育に必要なカルシウムを吸収させる活性型ビタミンDを作る働きもあります。腎臓は大切な臓器なので予備能力が高く、多少機能を損なっても自覚症状はほぼ出ません。ただし腎臓が慢性的に悪くなった場合や何らかの病気で機能を失ったときは症状が色々と出てきます。
中でも私たち腎臓内科医が注視しているのは「CKD(ChronicKidney Disease)」いわゆる慢性腎臓病です。今や20歳以上の8人に1人がこの病気と言われており、悪化して老廃物が体に溜まり尿毒症になると、味覚障害などの感覚異常や心不全、意識障害をきたし、死に至る場合も。ここまで悪化すると、生きていくためには腎臓の働きを補う透析療法や、腎臓移植を行う必要があります。そのためCKDの自覚症状であるむくみや息切れ、倦怠感、貧血や全身のかゆみがあれば要注意です。また、腎臓はからだ全体の調子を整える臓器だけあり、色々な病気の影響を受けて悪化します。特に多いのは糖尿病。最近は高血圧で動脈硬化が進み、CKDに陥るケースも増えています。残念ながら腎臓は機能が失われると、現在の医学では治すことができません。しかし早期に治療を行えば、多くの場合は病気の進行を緩やかにし、場合によって進行を止めることができます。だからこそ腎臓の異常を示すサインを見逃さないことが大事。血圧や血糖値に異常がある人も予備軍なので、よかドッグなどで健診を受けて自分の状態を把握することが大切です。CKDを予防するには、バランスのとれた食事や運動をして糖尿病や高血圧など生活習慣病のリスクを減らすことが“肝腎要”。検尿で異常が出たときは放置せず、掛かりつけの医師や専門医にご相談ください。
よしとみ内科クリニック 院長 吉冨 亮太先生
取材記事:ぐらんざ