シニアに多い!? 関節が痛む偽痛風(ぎつうふう)
30~50代の働き盛りの男性に多く見られる「痛風」ですが、それとは別に、「偽痛風」という関節炎があることをご存じですか?関節が腫れて激痛におそわれる痛風と同じ症状をきたすためにその名が付けられましたが、偽痛風の主な発症年齢は60歳以上で、痛風と異なり女性にも多いことが特徴です。
では、痛風との比較から偽痛風についてお伝えします。一定値以上の尿酸が結晶となり関節内に沈着して起こる痛風に対し、偽痛風の多くはピロリン酸カルシウム結晶の沈着が原因です。その大方は特発性のもので、その他遺伝性や代謝性、外傷性や術後が原因で発症するものに分類されます。また、痛風は主に膝から下の部位に発症しますが、偽痛風は膝が最も多く、続いて手や股関節、脊椎に発症することもあります。
再発の恐れがあることは痛風と同じです。ただし、偽痛風の再発かと思えば、二度目は関節内注射などにより細菌が侵入する化膿性関節炎のケースもあり、これら関節炎の鑑別が非常に重要となります。というのも、偽痛風の治療には基本的に消炎鎮痛剤やステロイドの注射を用いますが、化膿性関節炎にステロイドの注射をすると、より悪化してしまうからです。また、痛風や偽痛風は正しく薬を服用すれば一週間程で治りますが、化膿性関節炎の場合は基本的に手術しなければ治りません。2~3日で症状が軽減しない場合は化膿性関節炎を疑った方が良いでしょう。
発汗が多い夏は、尿酸の排泄が少なくなることから高尿酸血症となって痛風を起こしやすく、尿酸値を下げる薬も度々処方されています。一方、偽痛風に関しては痛み止めはあるものの、発症の傾向や予防法、原因を排除する根本的な治療法は未だ明らかにされていません。発症した偽痛風は時間が経過するほど酷くなります。痛みを感じたら我慢せず、病院で受診するようにしましょう。
石橋整形外科 院長 石橋 裕一先生
取材記事:ぐらんざ