医療情報室レポート No.270 特集:令和6年をふりかえって

2024年12月20日発行
福岡市医師会医療情報室
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特集 : 令和6年をふりかえって

 令和6年は元日より能登半島地震、羽田空港で航空機の衝突事故、北九州市で大規模火災が連続して発生し、災害や事故で幕を開け、8月には宮崎県沖を震源とする地震で初の「南海トラフ地震臨時情報」が発令されるなど、全国を揺るがす災害が相次ぎ発生した。
 医療界においては医療・介護・障害の3つの報酬が同時に改定される、6年に一度の「トリプル改定」が行われた。また、医師の時間外労働などを規制する「医師の働き方改革」が開始され、夜間や休日の医療提供体制に縮小や撤退等が報告されていることから、今後、地域医療に大きな影響を及ぼさないよう引き続き注視が必要である。12月2日には健康保険証の新規発行を停止し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行するなど、医療を取り巻く環境は変化の多い一年であった。
 また政界では、約3年に及んだ岸田政権からバトンを引き継ぎ、9月に石破新内閣が誕生したが、発足からわずか8日で解散総選挙に踏み切り、30年ぶりに少数与党に転落するなど不安定な政権運営を余儀なくされている。
 今回は、毎年恒例の特集である今年一年の出来事をまとめ、“令和6年をふりかえって”みた。

●令和6年の主な出来事

  医師会関係 厚生・行政関係 トピックス
1月
  • 日医会員数17万5,933人(2023.12.1付)、前年比2,172人増。
  • 「第59回九州首市医師会連絡協議会」開催。(那覇市)
  • マイナ保険証について、全国27都道府県110議会が対策を求める意見書を可決。
  • 日医連盟、来年夏の参院選に組織内候補として日医常任理事の釜萢敏氏の擁立を決定。
  • 岸田首相、医療・介護・障害福祉の団体幹部にトリプル改定の方針を踏まえ、各業界での確実な賃上げを要請。

  • 国内初のRSウイルスワクチン「アレックスビー筋注用」が発売開始。

  • 帝国データバンクが倒産動向調査結果公表。2023年の医療機関の倒産件数は前年同数の41件。
  • 最大震度7を観測した「令和6年能登半島地震」発生。
  • 羽田空港の滑走路で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突。
  • 北九州市小倉北区の中心部で大規模火災発生。
  • 沖縄の米軍普天間基地の辺野古移設に向け、軟弱地盤の大浦湾側で工事着手。
  • 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型無人探査機SLIMが日本初の月面着陸に成功。
  • 豊田自動織機、エンジン認証試験で不正。
  • 第170回直木賞受賞作、河﨑秋子「ともぐい」と万城目学「八月の御所グラウンド」。第170回芥川賞受賞作、九段理江「東京都同情塔」。
2月
  • 市医、看護専門学校の准看護科と第2看護学科の学生募集中止を公表。
  • ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者嘱託殺人事件裁判、医師に懲役23年を求刑。
  • 電子処方箋の運用開始から1年。医療機関と薬局での導入率は約6%に留まる。
  • 韓国で大学医学部定員増の政府方針に反発した全国の研修医が大規模ストライキ。
  • JAXA、国産新型ロケット「H3」2号機の打ち上げ成功。
  • 日本の名目GDP(令和5年)、世界4位に転落。
  • 東京都庁常設プロジェクションマッピング、建築物投影としてギネス記録認定。
  • 将棋の藤井聡太氏、タイトル20期連続獲得の新記録を達成。
3月
  • 市医、「医療現場における問題事項調査」を実施。約5割がオンライン資格確認の運用開始済と回答。
  • 市医、「第11回慢性腎臓病(CKD)市民公開講座」開催。参加者343名(天神スカイホール)
  • 市医、市民公開講座「そうだったのか!子宮頸がん」開催。参加者約800名(市役所西側広場)
  • 市医、「本人の意向を尊重した意思決定のための相談員研修会(ACP研修会)」開催。
  • 市医、「有料職業紹介事業者の利用に関するリスクマネジメント研修会」開催。
  • 市医マスコットキャラクター「おっしょ医くん公式グッズ」販売開始。
  • 世界各地ではしかの感染が拡大。特に欧州での感染拡大が目立つ。

  • 厚労省、「新たな地域医療構想等に関する検討会」の初会合を開く。

  • 新型コロナの各種公費支援等の特例措置、ワクチンの全額公費接種が3月末で終了。
  • 2023年の全国の自殺者数、前年比44人減の2万1,837人。
  • 2023年の全国の救急出動件数、前年比103万6,049件増の723万2,118件。集計開始以来、過去最多。
  • 小林製薬の紅麹の成分を含むサプリメントによる健康被害が発生。
  • 日経平均株価が史上初の4万円台の大台。
  • 日銀、マイナス金利政策を解除。17年ぶりの利上げ。
  • 露大統領選でプーチン氏が5度目の当選。
  • 米大リーグのドジャーズが大谷翔平選手の通訳を違法賭博の疑いで解雇。
  • 北陸新幹線の金沢から敦賀間が延伸開業。
  • 西鉄大牟田線の新駅「桜並木駅」が開業。
4月
  • 日医、能登半島地震の被災地に派遣したJMAT(日医災害医療チーム)の活動紹介動画を公開。
  • 市医、「福岡市医師会医療DX推進会議」開催。
  • 医師の働き方改革が開始。
  • 医療、介護、障害福祉等のトリプル改定実施。
  • 「グーグルマップ」の悪評放置を巡り、全国の医師ら約60名がグーグルを集団訴訟。
  • 厚労省、マイナ保険証の利用促進に向け、5~7月を「集中取り組み月間」に位置付け。
  • 環境省、災害級の熱波に備えるため「熱中症特別警戒アラート」の運用を全国で開始。
  • 台湾東部沖でM7.2の地震発生。
  • 豊後水道を震源とする地震発生。愛媛、高知で震度6弱。
  • 自家用車で客を運ぶ「日本版ライドシェア」が東京などで開始。
  • 伊豆諸島沖で海上自衛隊のヘリ2機が墜落。
  • 裏金事件後初の国政選挙。衆議院3区(東京15区、島根1区、長崎3区)の補欠選挙で自民党が全敗。
5月
  • 日医、「医師の働き方改革」一般向け啓発動画を公開。
  • 日医、子宮頸がん(HPV)ワクチンのキャッチアップ接種などの解説動画公開。
  • 日医、国民向け小冊子「禁煙は愛2024年版」作成を公表。
  • 厚労省、マイナ保険証の誤登録が累計9,207件を報告。
  • 厚労省、出産施設が探せるサイト「出産なび」を開設。
  • 財務省、地域別診療報酬の活用等を提言した「春の建議」を公表。
  • 政治団体「つばさの党」代表ら3人を公職選挙法違反容疑で逮捕。
  • シンガポール新首相就任、約20年ぶりの首相交代。
  • 台湾で総統就任式、賴清徳総統が就任。
  • 日中韓首脳会談が約4年半ぶりに開催。
6月
  • 日医、任期満了に伴う会長選挙を実施。現職の松本吉郎氏が当選、第2期執行部スタート。
  • 県医、第3期蓮澤浩明執行部スタート。
  • 市医、「医療従事者を守る宣言」を定め、ポスター作成。
  • 市医、「新型コロナ対応記録誌」発刊。
  • 市医、第27回定例代議員会開催。菊池仁志新会長による執行部がスタート。
  • 「西区医師会創立40周年記念祝賀会」開催。
  • 診療報酬改定、改定率本体0.88%、薬価等-1.00%、全体で-0.12%。今回より6月開始。
  • 厚労省、出産費用の保険適用等を協議する「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」が初会合。
  • 福岡県、在宅医療・介護職員カスハラ相談センターを開設。
  • 自動車メーカーなど5社が国の認証試験で不正があったと発表。
  • 自民党派閥の裏金事件を受けた改正政治資金規正法が成立。
  • 子どもと接する仕事をする人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」の創設を盛り込んだ児童対象性暴力防止法が成立。
  • 天皇皇后両陛下が英国へ公式訪問。
7月
  • 「第55回九州地区医師会立共同利用施設連絡協議会」開催(熊本市)。
  • 市医、日医釜萢副会長を講師に「福岡市医師会学術講演会・第21回新しい医療講演会」開催。
  • 石川県奥能登地域の公立4病院、前年度決算で12億円超の赤字を計上。
  • 厚労省、新型コロナ「診療の手引き」を今後関連3学会が中心に更新する方針を表明。
  • 福岡市、7区の保健所を一元化した「福岡市保健所」を開設。
  • 20年ぶりの新紙幣発行。新千円札は日本医師会初代会長の北里柴三郎氏。
  • パリ五輪開幕。日本は金20個を含む計45個のメダル獲得。海外開催で過去最多。
  • 東京都知事選、現職の小池百合子氏が3回目の当選。過去最多の56人が立候補。
  • 第171回直木賞受賞作、一穂ミチ「ツミデミック」。第171回芥川賞受賞作、朝比奈秋「サンショウウオの四十九日」、松永K三蔵「バリ山行」。
8月
  • 日医、HPVワクチンのキャッチアップ接種推進に向けた地上波テレビCMの放映開始。
  • 福岡市三師会、福岡市長へ要望書提出。
  • 「第55回中四九地区医師会看護学校協議会」開催(防府市)。
  • 岸田文雄首相が9月の自民党総裁選に出馬しない意向を表明。
  • WHO、エムポックスの緊急事態宣言を発表。
  • 厚労省、医師偏在是正に向けた総合的な対策のパッケージの骨子案を公表。
  • デジタル庁、医師や看護師等の国家資格手続きのオンライン化開始を発表。
  • 本年4月に一般社団法人となった「全国有床診療所協議会」が第1回総会を栃木県で開催。
  • 宮崎県沖を震源とする地震で最大震度6弱を観測。初の「南海トラフ地震臨時情報」発表。
  • 中国軍機による日本の領空侵犯を初確認。
  • 福島第1原発事故で溶け落ちた燃料デブリの試験的取り出しの準備作業に着手したが、手順に誤りが見つかり中断。
  • 「令和の米騒動」と呼ばれる米の品薄が全国で広がる。
  • 首都圏を中心に闇バイトを実行役にした広域強盗事件が相次ぎ発生。
  • 福岡市早良区の国道でバスと軽乗用車が正面衝突、姉妹2人死亡事故発生。
9月
  • 市医、「訪問看護ステーション30周年記念式典」開催。
  • 市医、「第11回地域包括ケア推進のための市民向け講演会」開催。参加者388名(アクロス福岡)
  • 市医、大木實副会長「検視七千体記念慰労会」開催。
  • 市医監修、求人マッチングプラットフォーム「for-us」運用開始。
  • 「早良区医師会創立40周年記念祝賀会」開催。
  • 自民党総裁選で決選投票を制した石破茂元幹事長が新総裁に選出。
  • 厚労省、「2023年人口動態統計」を公表。出生数が前年比4万3,471人減の72万7,288人で過去最少。合計特殊出生率は1.20で過去最低。
  • 総務省、「統計からみた我が国の高齢者」を公表。65歳以上の高齢者人口は前年比2万人増の3,625万人。総人口に占める割合は29.3%で過去最高。
  • 能登地方で線状降水帯が発生。浸水や土砂崩れ等の被害で死者や行方不明者が出る。
  • 中国広東省深圳市の日本人学校に通う日本人男児が登校中に刺され死亡。
  • 気象庁、今年の6~8月の平均気温が過去最高の昨夏と並んで最も高かったと発表。
  • 米大リーグの大谷翔平選手、史上初のホームラン50本、50盗塁の「50-50」を達成。
  • 福岡ソフトバンクホークスが4年ぶりのパ・リーグ制覇。
10月
  • 日医、新会員情報管理システム「MAMIS(マミス)」の運用開始。
  • 日医、「全医療機関で2%以上の賃上げ」等物価高騰と賃上げへの対応を財務相、厚労相に要望。
  • 「第60回九州首市医師会連絡協議会」開催(大分市)。
  • 「第63回十四大都市医師会連絡協議会」開催(横浜市)。
  • 第50回衆議院議員総選挙、自民党が191議席、公明党が24議席で改選前から計64議席を失う。野党の立憲民主党は148議席と50議席増。
  • 高齢者らを対象とした自治体による新型コロナワクチンの定期接種が開始。
  • 国内初の経鼻投与の季節性インフルエンザワクチン「フルミスト点鼻液」が販売開始。
  • 厚労省、「令和4年度国民医療費の概況」を公表。前年度比1兆6,608億円増の46兆6,967億円。
  • 総務省消防庁、熱中症による救急搬送数(5~9月)が前年比6,111人増の9万5,137人で過去最多と公表。
  • 「日本原水爆被害者団体協議会」がノーベル平和賞受賞。
  • 東北電力の女川原子力発電所2号機が13年ぶりに再稼働。
  • 旧優生保護法下の強制不妊手術を巡る補償法が衆院本会議で全会一致により可決。
  • 58年前の静岡県一家4人殺害事件で死刑が確定した袴田巌さんの再審無罪判決が確定。
  • 郵便料金が30年ぶりの値上げ。
  • 宮崎空港で第二次大戦中に米軍が投下した爆弾とみられる不発弾が爆発。
11月
  • 県医、県シルバー人材センターと医療機関の人材確保で協定を締結。
  • 長柄均元市医会長が「旭日双光章」受章。
  • 市医、山田篤伸会員(南区)、「瑞宝双光章」受章。
  • 「城南区医師会創立40周年記念祝賀会」開催。
  • 「第124回九州医師会連合会総会」開催(熊本市)。
  • 厚労省、「美容医療の適切な実施に関する検討会」医療機関の報告・公表の仕組み導入等を盛り込んだ報告書を公表。
  • 内閣府、脳卒中や心筋梗塞の初期症状が現れた際「すぐに救急車を呼ぶ」と答えた人は76%にとどまるという世論調査結果を公表。
  • 福岡県、「介護DX支援センター」を開設。
  • 米大統領選でトランプ氏がハリス氏に勝利。
  • 福島第1原発の燃料デブリの試験的取り出しが完了。事故から13年半で初。
  • 自民、公明両党と国民民主党、年収103万円の壁の見直し等の総合経済対策に合意。
  • 兵庫県知事選挙、出直し選挙に臨んだ前知事の斎藤元彦氏が再選。SNSを駆使し支持拡大。
  • JAXA、「H3」4号機の打ち上げ成功。
12月
  • 日医、全国知事会と新たな地域医療構想をテーマとした意見交換会をオンライン開催。
  • 健康保険証の新規発行が停止。
  • 厚労省、HPVワクチンのキャッチアップ接種を最大1年間延長する経過措置を決定。
  • 厚労省、帯状疱疹ワクチンを令和7年度から65歳以上を対象に定期接種化を表明。
  • 厚労省、医師の偏在対策是正に向けた取りまとめ案を座長預かりで了承。
  • 韓国の尹錫悦大統領が「非常戒厳」を宣言するも、翌朝には解除。
  • 今年の漢字は「金」に決定。
  • 今年の新語・流行語大賞は「ふてほど(不適切にもほどがある!)」に決定。
  • 北九州市小倉南区で中学3年の男女が刃物で刺され、1人が死亡する事件が発生。

※ゴシック表記は福岡市医師会関係

医療情報室の目

 令和6年の福岡市医師会の活動としては、能登半島地震に対するDMATやJMATへの医師派遣などの「災害対策」、HPVワクチンの市民公開講座や定例記者会見を通じて各感染症への普及啓発を行う「感染症、予防活動」、本会監修による求人マッチングプラットフォーム「for-us」の運用開始等の「医療従事者対策」を中心に様々な取組みを行ってきた。来年も引き続きこれらの活動等により地域医療の安定化に努めていきたい。
 6月に行われた診療報酬改定は医療機関にとって厳しい内容で、大きな影響を受け続けている。30年ぶりの高水準となる賃上げへの対応として新設された「ベースアップ評価料」について、9月の福岡県医師会の調査では病院の約8~9割が届出する一方、診療所は約5割の届出で全国的にも同様の状況であった。地域の医療提供体制維持には医療従事者の確保が欠かせず、政府は12月の令和6年度補正予算案において病院と有床診療所は1病床当たり4万円、診療所は1施設当たり18万円が交付されるよう計上したが、この給付金の受け取りは「ベースアップ評価料を算定している医療機関」に限られており、日本医師会ではまだ届出していない医療機関においてはできる限り急いで「ベースアップ評価料」を積極的に算定するように呼びかけている。
 来年は国民の5人に1人が75歳以上となり、雇用や医療といった社会の広い領域に影響を及ぼすいわゆる「2025年問題」の年を迎える。かねてからこの問題への対策と協議を重ねてきたが、引き続き全人口に占める65歳以上の高齢者の割合が約35%となる「2040年」を見据えた議論が進められている。現役世代減少に対応した持続可能な医療提供体制の確立等を目的に「新たな地域医療構想」とも言われる考え方で、ポイントとしては入院医療の機能分化・連携の強化にとどまらず、外来医療や在宅医療、医療・介護連携なども含む医療提供体制全体の課題解決を図るための地域医療構想となり、全国民が適切な医療や介護を受けることができ、医療従事者も持続可能な働き方ができるよう今後の議論の行方を注視していかなれけばならない。


編集
福岡市医師会:担当理事 江口 徹(情報企画・広報・地域医療担当)
※ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡ください。

(事務局担当 情報企画課 上杉)