医療情報室レポート No.256 特集 :令和4年をふりかえって

2022年12月23日発行
福岡市医師会医療情報室
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特集 : 令和4年をふりかえって

 令和4年も新型コロナウイルスの流行は続き、年頭にはオミクロン株による「第6波」、7月にはオミクロン株の派生型BA.5による「第7波」が発生した。本稿作成時点で感染者の増加傾向が続いており、「第8波」への警戒や対応が続いている。
 本年2月24日、ロシアはウクライナへの軍事侵攻を突如として開始した。21世紀のグローバル社会において侵略による戦争が起きたことは世界中に大きな衝撃を及ぼし続けている。この戦争による死者は数万人にのぼり、また、数百万人が避難を強いられ、国際政治や安全保障を始め、経済面など全世界に様々な影響を与えている。
 また、7月8日には参議院選挙の応援演説中に安倍元首相が凶弾に倒れ、安全とされた日本で発生した凶行に国内のみならず、世界中に大きな衝撃が走った。
 今回は、毎年恒例の特集である今年一年の出来事をまとめ、“令和4年をふりかえって”みた。

●令和4年の主な出来事

  医師会関係 厚生・行政関係 トピックス
1月
  • 日医会員数17万3,895人(2021.12.1付)、前年比567人増で9年連続増加。
  • 県医会長の松田峻一良会員が逝去。
  • 県医、新会長に蓮澤浩明副会長(大牟田市)を選出。
  • オミクロン株の感染急拡大により政府は広島、山口、沖縄の3県に「まん延防止等重点措置」を発令。その後、福岡を含む32都道府県に対象を拡大。
  • 厚労省、5~11歳の小児への新型コロナワクチン接種を臨時接種に位置付けを承認。
  • 厚労省、医師が濃厚接触者を検査なしで陽性と診断する「疑似症(みなし陽性)」を自治体判断で導入可能とする方針を表明。
  • 帝国データバンクが倒産動向調査結果公表。2021年の医療機関の倒産件数は前年比6件増の33件。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で3億人超。
  • トンガの海底火山で大規模な噴火が発生。
  • 日向灘を震源とする地震発生。大分、宮崎で震度5強。
  • 航空自衛隊のF15戦闘機が離陸後に墜落。
  • 大学入学共通テストの試験会場前で受験生ら3人が刺傷。
  • 埼玉県ふじみ野市の民家で立てこもり事件が発生し、人質となった訪問診療医が殺害される。
  • 第166回直木賞受賞作、砂川文次「ブラックボックス」。第166回芥川賞受賞作、今村翔吾「塞王の楯」、米澤穂信「黒牢城」。
2月
  • 市医、新型コロナウイルスに関する「自宅療養の重要ポイント」を作成し、一般向けホームページに公開。
  • 新型コロナウイルス感染者が国内で500万人超。
  • 国内で1日の新型コロナウイルス感染者が初の10万人超、福岡県で1日最多5,600人の感染者が確認。
  • 米ファイザー社が開発した新型コロナウイルスの経口薬「ニルマトレルビル/リトナビルモルヌピラビル」が承認。
  • 福岡県、新型コロナウイルスの罹患後症状(後遺症)に関する診療相談窓口設置。
  • 福岡市で自宅療養中の60代男性が死亡。死亡確認まで1週間以上連絡取れず。
  • ロシア軍がウクライナへの軍事侵攻を開始。
  • 感染力の強いオミクロン株により、国内で新型コロナ感染拡大の「第6波」発生。
  • 北京五輪開幕。日本は過去最多となる18個のメダル獲得。
  • 将棋の藤井聡太氏、史上最年少で五冠達成。
  • 作家で元東京都知事の石原慎太郎氏が死去。
3月
  • 市医、常任理事会で「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議」を承認。
  • 市医、「第9回慢性腎臓病(CKD)市民公開講座」をWeb配信で開催。参加者71名。
  • 「まん延防止等重点措置」約2ヵ月半ぶりに全面解除。
  • 福岡市、小児(5~11歳)へのワクチン接種開始。
  • 2021年の全国の自殺者数、前年比74人減の2万1,007人。
  • 2021年の全国の救急出動件数、前年比26万386件増の619万3,663件、2年ぶりの増加。
  • 福島県沖を震源とする地震発生。宮城、福島で震度6強。
  • 東京電力管内で「電力需給逼迫警報」が初発令。
  • 北京パラリンピック開幕。日本は7個のメダル獲得。
  • 濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が米アカデミー賞の国際長編映画賞を受賞。
4月
  • 日医、かかりつけ医の在り方をまとめた「国民の信頼に応えるかかりつけ医」を公表。
  • 市医、西間三馨会員(勤務医会)、「旭日双光章」受章。
  • 海外で確認の小児の原因不明の急性肝炎が国内で初確認。
  • 厚労省、新型コロナウイルス感染後の罹患後症状(後遺症)に関する診療の手引きを公表。
  • 診療報酬改定、改定率本体0.43%、薬価等-1.37%、全体で-0.94%。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で5億人超。
  • 改正民法が施行、成人年齢が18歳に引き下げ。
  • 円相場急落。約20年ぶりの円安水準。
  • 北海道の知床半島沖で26人が乗った観光船が沈没する事故が発生。
  • プロ野球の佐々木朗希選手、28年ぶりの完全試合達成。
5月
  • 日医、中川会長が次期会長選への不出馬を表明。
  • 医薬品の緊急承認制度などを盛り込んだ改正医薬品医療機器等法が成立。
  • 財務省、かかりつけ医の認定制や事前登録制などを提言した「春の建議」を公表。
  • ジェネリック医薬品大手の日医工(株)が私的整理の一つである「事業再生ADR」を申請。
  • 沖縄が本土に復帰して50年を迎える。
  • 米バイデン大統領が初来日。
  • 日米豪印4カ国の協力の枠組み「クアッド」の首脳会議が都内で開催。
  • 山口県阿武町が1世帯に新型コロナウイルス臨時給付金4,630万円を誤給付。
6月
  • 日医、任期満了に伴う会長選挙を実施。常任理事の松本吉郎氏が当選。
  • 日医、「日本医師会サイバーセキュリティ支援制度」の運用開始。
  • 県医、第2期蓮澤浩明執行部スタート。
  • 市医、第22回定例代議員会開催。平田泰彦会長による執行部、2期目を迎える。
  • 市医、ウクライナ支援団体との面談実施。
  • 福岡市内の医療機関で本会会員医師が刺傷される事件が発生。
  • 市医、福岡市医師会診療所および4か所のサテライトを湾岸サテライト1か所に集約。
  • 政府、医療機関にオンライン資格確認システムの導入義務化や健康保険証の原則廃止を明記した「骨太の方針」を閣議決定。
  • 政府、「内閣感染症危機管理庁」と「日本版CDC」創設の方針を決定。
  • 子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」設置法案が成立。
  • 警察庁、認知症または疑いによる行方不明の届出件数公表。2021年は前年比71人増の1万7,636人で、9年連続過去最多更新。
  • 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議、北欧のフィンランドとスウェーデンの加盟を合意。
  • 政府の審議会、小選挙区の「10増10減」など25都道府県、140選挙区の区割り案を首相に勧告。
  • 気温上昇に伴い東京電力管内で「需給逼迫注意報」が初発令。
  • 海洋冒険家の堀江謙一氏がヨットで世界最高齢となる単独無寄港の太平洋横断成功。
7月
  • 「第53回九州地区医師会立共同利用施設連絡協議会(大分)」ハイブリッド形式で開催。
  • 市医、ウクライナ特命全権大使との面談実施。
  • 第26回参議院議員通常選挙、自民党が63議席、公明党を合わせた与党で計76議席獲得。
  • 新型コロナウイルス感染者が国内で1,000万人超。
  • 政府、都道府県が発出可能な「BA.5対策強化宣言」を新設。
  • 厚労省、コロナワクチン4回目接種の対象に医療・介護従事者等を新たに追加。
  • 世界保健機関(WHO)、サル痘の感染拡大を受け緊急事態宣言を発表。
  • サル痘の感染者が国内初確認。
  • 安倍元首相、選挙応援演説中に銃撃され死亡。
  • オミクロン株の派生型「BA.5」により、国内で新型コロナ感染拡大の「第7波」発生。
  • イギリスのジョンソン首相が辞意表明。
  • KDDI、全国で電話音声やデータ通信の大規模な通信障害が発生。
  • 鹿児島の桜島で爆発的噴火が発生。
  • 第167回直木賞受賞作、窪美澄「夜に星を放つ」。第167回芥川賞受賞作、高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」。
8月
  • 日医、医師会立看護師等養成所の財政的支援等を盛り込んだ「地域医療を支える看護職の養成に関する要望書」を厚労省に提出。
  • 市医、市民病院将来構想に関する要望書を福岡市長に提出。
  • 福岡市三師会、福岡市長へ要望書提出。
  • 市医、「原油価格・物価高騰による医療機関への影響調査」を実施。県医へ医療機関の支援策に関する要望書を提出。
  • 「第53回中四九地区医師会看護学校協議会(都城)」Webで開催。
  • 国内で1日の新型コロナウイルス感染者が初の26万人超、福岡県で1日最多1万5,723人の感染者が確認。
  • 政府、自治体判断で新型コロナの発生届を65歳以上や入院が必要な人など4類型に限定可能とする「全数届出の見直し」の運用開始。
  • 福岡県、国から「BA.5対策強化地域」に指定。
  • 第2次岸田改造内閣が発足。日本医師連盟推薦の羽生田俊参議院議員が厚生労働副大臣に就任。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で6億人超。
  • 東京五輪の組織委員会元理事が受託収賄容疑で逮捕。
  • 名古屋市の高速道路でバスが横転、炎上し、9人が死傷。
  • 米大リーグの大谷翔平選手、同一シーズンで2桁勝利、2桁本塁打を達成。104年ぶりの快挙。
9月
  • 市医、「医療現場における安全対策調査」を実施。約4割の会員医療機関が暴力・ハラスメント等の被害があると回答。
  • 市医、「第9回地域包括ケア推進のための市民向け講演会」を3年ぶりに開催。参加者155名(アクロス福岡)
  • 多田秀敏元市医会長が逝去。
  • 新型コロナウイルス感染者が国内で2,000万人超。
  • オミクロン対応2価ワクチンが承認。1、2回目接種を完了した12歳以上を対象に接種開始。
  • 「全数届出の見直し」を全国一律で開始。
  • 福岡県、物価高騰を受け、医療施設等を支援するための追加補正予算を成立。
  • 厚労省、「2021年人口動態統計」を公表。出生数が前年比2万9,213人減の81万1,622人で統計開始以来過去最少。
  • 総務省、「統計からみた我が国の高齢者」を公表。65歳以上の高齢者人口は前年比6万人増の3,627万人で過去最多を更新。
  • 英エリザベス女王が逝去。
  • 安倍元首相の国葬が執り行われる。
  • 大型で強い台風14号、西日本を中心に大きな被害をもたらす。宮崎県で死者3名。
  • 台風15号の影響で、静岡県で大規模な停電や断水の被害が発生。
  • 静岡県の認定こども園で園児が送迎バス内に取り残され死亡。
  • 長崎駅と武雄温泉駅を結ぶ西九州新幹線が開業。
10月
  • 市医看護専門学校、地域に開いた文化祭「第1回ニコニコフェスティバル」を初開催。
  • 市医、「第58回九州首市医師会連絡協議会」を対面で主催。
  • 厚労省、6か月~4歳の小児への新型コロナワクチン接種を臨時接種に位置付けを承認。
  • 診療報酬に「看護職員処遇改善評価料」、マイナ保険証利用時の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」が新設。
  • 総務省消防庁、熱中症による救急搬送数(5~9月)が前年比2万3,152人増の7万1,029人と公表。
  • 物価高騰による商品値上げが相次ぐ。
  • 岸田首相、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し宗教法人法に基づく調査を指示。
  • 北朝鮮による大陸間弾道ミサイル発射実験が相次ぐ。
  • 韓国のソウル・梨泰院で雑踏事故。日本人2名を含む158名が死亡。
  • プロ野球、ヤクルトの村上宗隆選手、史上最年少で三冠王獲得。本塁打は日本人選手の最多記録を更新。
11月
  • 日医、「地域における面としてのかかりつけ医機能~かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けて~(第1報告)」を公表。
  • 江頭啓介元市医会長が「日医最高優功賞」受賞。
  • 「第61回十四大都市医師会連絡協議会」Webで開催(担当:千葉市医師会)
  • 「第122回九州医師会連合会総会・医学会」開催(担当:大分県医師会)
  • 国産初の新型コロナウイルス軽症者向け経口薬「ゾコーバ」が緊急承認。
  • 厚労省、新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の機能停止版を配信開始。
  • 愛知県の新型コロナワクチン接種後の死亡事案で県医師会がアナフィラキシー対応体制に課題があったとする検証結果報告。
  • 福岡市、小児(6か月~4歳)へのワクチン接種開始。
  • 福岡市長選、髙島宗一郎氏が4回目の当選。
  • 厚労省、「令和2年度国民医療費の概況」を公表。前年度比1兆4,230億円減の42兆9,665億円。
  • 米中間選挙、野党の共和党が議会下院で過半数の議席を獲得。
  • 政府の有識者会議、防衛力を5年以内に抜本強化することを提言。
  • 文科省、旧統一教会に宗教法人法に基づく質問権を初行使。
  • 1か月で3閣僚が交代、閣僚更迭相次ぐ。
  • 大阪市の病院がランサムウェアによるサイバー攻撃を受け、外来診療や緊急以外の手術が停止。
  • 皆既月食と天王星食が442年ぶりの同時発生。
12月
  • 市医、「常磐会」を3年ぶりに開催。
  • 市医、ウクライナ支援物資の手交式開催。
  • 感染症医療の提供を公的医療機関等に義務づける改正感染症法が成立。
  • 「第8波」さしかかり、県独自の「福岡オミクロン警報」発令。
  • 新型コロナウイルスとインフルエンザの同時検査キット、一般販売を初承認。
  • 厚労省、かかりつけ医機能の定義を法定化し、新たなかかりつけ医機能報告制度を創設する案を提示。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で6億5,000万人超、死者が660万人超。国内では感染者2,700万人超、死者5万4,000人超。
  • 今年の漢字は「戦」に決定。
  • 今年の新語・流行語大賞は「村神様」に決定。
  • 旧統一教会問題で悪質な寄付勧誘規制を柱とした被害者救済法が成立。
  • サッカーワールドカップのカタール大会、日本は決勝トーナメント進出、1回戦で惜敗。

 

※ゴシック表記は福岡市医師会関係

医療情報室の目

 ロシアによるウクライナ軍事侵攻に対し、本会では3月10日の常任理事会において「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議」を承認し、地域医師会として対応可能な人道的支援等に取組んできた。戦争は長期化の様相を呈しているが、多くの皆様方と同様に一刻も早い停戦と解決を望んでいる。
 新型コロナウイルスの初確認から3年が経過し、ウイルス特性の変化やワクチン接種の進捗状況などから、政府は国民の行動制限や経済活動の制限を見直し、医療現場の負担軽減として全数届出の見直しを行うなどWithコロナに向けた政策を進めてきた。感染症法上の分類についても「5類相当」への引き下げ議論が12月から本格化しており、来たる年にはインフルエンザ同様にウイルスと共存する世界がさらに加速することが期待されるが、充分な議論が必要である。
 政府は全国旅行支援や経済の回復を目指した施策を行っているが、その結果、感染者の増加からくる負荷が医療界に再び押し寄せてきている。更にこういうコロナ対応に医療界が注力している時期に、政府は「かかりつけ医制度」の問題を議論の俎上にあげてきている。財務省や健康保険組合連合会はかかりつけ医を登録制とし、患者は登録した一人の医師のみ受診可とすることを提唱してきたが、これは患者が医療機関を自由に選んで受診ができる「フリーアクセス」を制限し否定するものである。かかりつけ医機能は平時において各地域の実情に応じてその機能が発揮されるべきであり、今回の有事のみを取り上げ、議論するべきではないものと考える。日本医師会はかかりつけ医の登録義務化には反対の姿勢を示しており、厚労省はかかりつけ医機能の制度整備として「かかりつけ医機能報告制度の創設」と「医療機能情報提供制度の拡充」を柱とした具体案を示している。年内には方向性がまとまり、来年はかかりつけ医機能の定義を医療法に明記する法改正が進められる予定であるため、その動向を注視するだけでなく個々の会員の明確なアクションが必要となる。


編集
福岡市医師会:担当理事 牟田浩実(情報企画・広報担当)・江口 徹(地域医療担当)
※ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡ください。

(事務局担当 情報企画課 上杉)