医療情報室レポート No.249 特集 :令和3年をふりかえって

2021年12月16日発行
福岡市医師会医療情報室
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特集 : 令和3年をふりかえって

 令和3年の年明けは前年末から続く新型コロナウイルスの「第3波」が猛威を振るい、その後は4月に「第4波」、8月には過去最大の感染者を記録した「第5波」が起きるなど、今年も新型コロナウイルス一色に覆われた一年となった。政府が新型コロナウイルス対策の決め手としたワクチン接種は、当初国際的には遅れをとっていたものの、2月の開始以降、国内では急速に接種が進み、11月には国民の75%が2回目の接種を完了しており、先進7か国ではトップの接種率に至っている。本稿作成時点で国内の感染状況が落ち着いた状況が続いているのも、このワクチン接種が大きく起因しているものと考えられる。
 今夏、緊急事態宣言が発令される中、無観客という前例のない形で、1年延期となっていた東京オリンピック・パラリンピックが開催された。開催をめぐって賛否が分かれ、多くの困難がある中で開催された大会ではあったが、アスリートの活躍はコロナ禍の世界に大きな勇気と感動を与えてくれた。
 今回は、毎年恒例の特集である今年一年の出来事をまとめ、“令和3年をふりかえって”みた。

●令和3年の主な出来事

  医師会関係 厚生・行政関係 トピックス
1月
  • 日医会員数17万3,328人(2020.12.1付)、前年比565人増で8年連続増加。
  • 市医、「高齢者の新型コロナウイルスに係るPCR検査事業」を開始。
  • 政府、首都圏1都3県に2度目の「緊急事態宣言」を発令。その後、福岡を含む7府県に対象を拡大。
  • 厚労省、米ファイザー社と新型コロナワクチンを年内1億4,400万回分で正式契約。
  • 帝国データバンクが倒産動向調査結果公表。2020年の医療機関の倒産件数は前年比18件減の27件。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で1億人超、死者が200万人超。
  • イギリスで流行した新型コロナウイルスの変異種に国内で経路不明の感染例が初確認。(後にアルファ株と指定)
  • 米国、バイデン氏が新大統領に就任。
  • 大学入試センター試験に代わる「大学入学共通テスト」が初実施。
  • 第164回直木賞受賞作、西條奈加「心淋し川」。第164回芥川賞受賞作、宇佐見りん「推し、燃ゆ」。
2月
  • 市医、「新型コロナウイルス感染症会員相談ダイヤル」設置。
  • 市医、「福岡市医師会診療所」のサテライトを天神北地区に設置。
  • まん延防止等重点措置を新設した「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」、入院拒否者に過料を科す「改正感染症法」が成立。
  • 厚労省、米ファイザー社製の新型コロナワクチンを特例承認。
  • 医療従事者等を対象に新型コロナワクチン接種が国内で開始。
  • 厚労省の新型コロナウイルスの接触確認アプリ「COCOA」のアンドロイド版で不具合が発生。
  • 医薬品医療機器等法違反により「小林化工」に116日間の業務停止命令が出される。
  • 宮城、福島で震度6強の地震発生。
  • 2020年のGDP(国内総生産)、前年比4.8%減で11年ぶりのマイナス成長。
  • ミャンマー国軍が軍事クーデターで政権を掌握。
  • 東京五輪組織委員会の新会長に橋本聖子氏が就任。
  • テニスの大坂なおみ選手が全豪オープンで2年ぶり2度目の優勝。
3月
  • 市医、竹ノ内弘昌会員(早良区)、「第9回赤ひげ大賞」功労賞受賞。
  • 市医、定例会見動画(教えて!平田会長)の配信開始。(以降、奇数月に配信)
  • 市医、「新型コロナワクチン予防接種実施説明会」を開催。(会場参加114名、Web参加2,493名)(エルガーラホール)
  • 「緊急事態宣言」約2ヵ月半ぶりに解除。
  • 福岡県、医療従事者等を対象に新型コロナワクチンの接種開始。
  • 厚労省、初の実態調査となる「不妊治療の実態に関する調査研究」結果概要を公表。
  • 2020年の全国の自殺者数、前年比912人増の2万1,081人、11年ぶりの増加。
  • 2020年の全国の救急出動件数、前年比70万6,377件減の593万3,390件、12年ぶりの減少。
  • 東日本大震災の発生から10年を迎える。
  • 東京五輪の聖火リレーが福島県で開始。
  • 日本郵政と楽天が資本・業務提携での合意を発表。
  • LINEが中国の業務委託先関連会社から国内の個人情報データにアクセス可能な状態だったと発表。
4月
  • 日医、全会員に医師資格証(HPKIカード)を無料で配付する方針を決定。
  • 横倉義武前日本医師会会長、「旭日大綬章」受章。
  • 市医、寺坂禮治会員(東区)、「瑞宝中綬章」受章。
  • 市医、新型コロナワクチンのトライアル接種実施。
  • 新型コロナウイルス感染者が国内で50万人超。
  • 政府、3度目の「緊急事態宣言」を4都府県に発表。その後、福岡を含む6道県に対象を拡大。
  • 診療報酬上の特例的な対応として「感染症対策実施加算」が本年9月まで算定可能に。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で1億5,000万人超、死者が300万人超。
  • 政府、福島第1原発の処理水を海洋放出する方針を決定。
  • 熊本地震の発生から5年を迎える。
  • ゴルフの松山英樹選手、マスターズ・トーナメント優勝、日本男子初のメジャー大会制覇。
5月
  • 市医、会員医療機関での新型コロナワクチン個別接種を本格的に開始。
  • 市医、福岡市の新型コロナワクチン集団接種会場(マリンメッセ福岡)に医師派遣開始。
  • 市医看護学校、近隣2校と連名で福岡市長へワクチン集団接種に関する提案書を手交し、集団接種会場に看護教員派遣。(6月~10月)
  • 厚労省、米モデルナ社製と英アストラゼネカ社製の新型コロナワクチンを特例承認。
  • 自衛隊、新型コロナワクチンの大規模接種センターを東京と大阪に開設。
  • 米食品医薬品局、12~15歳へのファイザー社製の新型コロナワクチン接種を許可。
  • 横浜市立大の研究チームがファイザー社製ワクチンを2回接種した人の約9割が変異株に対する抗体を持つとする研究結果を発表。
  • 建設石綿訴訟、最高裁が国とメーカーの賠償責任認定。
  • 愛知県知事の解職請求運動をめぐる不正署名容疑で事務局長ら逮捕。
6月
  • 日医、自治体や企業からの相談を受ける「新型コロナワクチン接種人材確保相談窓口」設置。
  • 市医、順次開設された新型コロナワクチン集団接種会場(市内7区の公共施設等、中央ふ頭クルーズセンター)にも医師派遣実施。
  • 10都道府県が対象の「緊急事態宣言」が沖縄を除き解除。
  • 医師の働き方改革関連の施策を盛り込んだ「改正医療法」、後期高齢者の窓口負担を2割に引き上げる「医療制度改革関連法」が成立。
  • 企業や大学等でのワクチン職域接種が開始。
  • 新型コロナワクチン接種、国民の約1割が2回接種完了、高齢者は約2割が2回接種完了。
  • 福岡市、64歳以下の市民に新型コロナワクチンの接種券等発送。
  • 警察庁、認知症か疑いによる行方不明の届出件数公表。2020年は前年比86人増の1万7,565人、8年連続過去最多更新。
  • 菅首相と野党党首による初の党首討論開催。党首討論は2年ぶり。
  • 国有地売却をめぐる財務省の公文書改竄問題で、国が遺族側に「赤木ファイル」を開示。
  • 菅原前経済産業相が選挙区内で違法な寄付をした公職選挙法違反の罪で略式起訴。
  • WHO、風評被害回避のため、新型コロナウイルス変異株にギリシャ文字を使う方針を示す。
  • 香港の民主派系新聞、リンゴ日報26年の歴史に幕。
  • 千葉県の路上で集団下校中の小学生の列にトラックが突っ込み、児童5人が死傷。
  • 長崎県の雲仙・普賢岳噴火から30年を迎える。
  • 陸上の山縣亮太選手、100メートルで9秒95の日本新記録を樹立。
7月
  • 市医、福岡地区小児科医会と連名で小児への新型コロナワクチンに関する要望書を福岡市に提出。
  • 「第52回九州地区医師会立共同利用施設連絡協議会(那覇)」をWebで開催。
  • 政府、4度目の「緊急事態宣言」を東京都に発令。
  • 新型コロナワクチン接種、国民の約2割が2回接種完了、高齢者は約7割が2回接種完了。
  • 新型コロナウイルスに対する中和抗体薬(ロナプリーブ)が特例承認。軽症者対象の治療薬は初。
  • 医療従事者への優先接種、全都道府県で完了。
  • 福岡市、深夜帯にワクチン接種可能な会場を設置。
  • 厚労省、新型コロナウイルス感染拡大関連の解雇や雇い止めが11万人超えと発表。
  • 東京五輪開幕。日本は金メダル27個を含む計58個のメダル獲得。ともに史上最多。
  • 広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」を巡る集団訴訟で、国が上告を断念。
  • 静岡県熱海市で大規模な土石流発生。
  • 第165回直木賞受賞作、佐藤究「テスカトリポカ」、澤田瞳子「星落ちて、なお」。第165回芥川賞受賞作、石沢麻依「貝に続く場所にて」、李琴峰「彼岸花が咲く島」。
  • 野球の大谷翔平選手、大リーグ球宴史上初めて投打の二刀流で出場。
8月
  • 県医、新型コロナウイルスの自宅療養者の相談に対応する「夜間・休日専用ダイヤル」設置。
  • 県医、中和抗体薬の投与(抗体カクテル療法)を市内の宿泊療養施設で開始。
  • 市医、自宅療養者への診療開始。
  • 市医、12歳から15歳の新型コロナワクチン接種実施登録医療機関を募集し、小児の個別接種体制を構築。
  • 福岡市三師会、福岡市長へ要望書提出。
  • 「第52回中四九地区医師会看護学校協議会(高松)」をWebで開催。
  • 新型コロナウイルス感染者が国内で100万人超。
  • 政府、4府県に4度目の「緊急事態宣言」を発令。その後、福岡を含む15道府県に対象を拡大。
  • 新型コロナワクチン接種、国民の約4割が2回接種完了、高齢者は約8割が2回接種完了。
  • 全国で1日あたりの感染者が初めて2万5,000人を超える。
  • 福岡県で1日最多1,253人の新型コロナウイルス感染が確認。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で2億人超。
  • 東京パラリンピック開幕。日本は史上2番目に多い51個のメダル獲得。
  • 米軍、アフガニスタンから撤収完了。20年の軍事作戦に幕。
  • アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが首都カブールを制圧。
  • 感染力の強いデルタ株が猛威。
  • 千葉県で新型コロナウイルスに感染した妊婦の入院受入先が見つからず、自宅療養中に早産した男児が死亡。
  • 東京都の小田急線車内で男が刃物で乗客を切り付ける事件が発生。10人重軽傷。
9月
  • 日医、「令和4年度医療に関する税制要望」を公表。
  • 新型コロナウイルス感染者が国内で150万人超。
  • 新型コロナワクチン接種、国民の約5割が2回接種完了、高齢者は約9割が2回接種完了。
  • 「緊急事態宣言」全面解除。
  • 厚労省、医療用抗原検査キットの薬局販売を特例的に認める。
  • 菅義偉氏、総裁選への不出馬表明。
  • 厚労省、「2020年人口動態統計」を公表。出生数が前年比2万4,404人減の84万835人で統計開始以来過去最少。
  • 総務省、「統計からみた我が国の高齢者」を公表。65歳以上の高齢者人口は前年比22万人増の3,640万人で過去最多を更新。
  • デジタル庁が発足。
  • 中国の不動産「中国恒大」の経営危機が表面化。
  • アメリカ同時多発テロ事件から20年を迎える。
  • 横綱白鵬が引退。
  • 国内初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」開幕。
  • 台風14号、観測史上初めて最初に福岡県へ上陸。
10月
  • 市医、ラジオ番組「知って得する医療の話」放送開始。
  • 「第60回十四大都市医師会連絡協議会」をテレビ会議で開催(担当:神戸市医師会)
  • 「第58回九州首市医師会連絡協議会(福岡)」は令和4年に延期。
  • 岸田文雄氏第100代首相に就任、新内閣発足。
  • 第49回衆議院議員総選挙、自民党が261議席、公明党を合わせた与党で計293議席獲得。
  • 新型コロナワクチン接種、国民の約7割が2回接種完了。G7ではトップ水準。
  • 福岡市、新型コロナワクチンの2回接種完了が対象者の8割を超えたことを発表。
  • マイナンバーカードを健康保険証として利用する「オンライン資格確認」が開始。
  • 総務省消防庁、熱中症による救急搬送数(5~9月)が前年比1万8,618人減の4万7,877人と公表。
  • 新型コロナウイルスによる死者が世界で500万人超。
  • ノーベル物理学賞に真鍋淑郎氏が選出。
  • 秋篠宮家の長女眞子さまが小室圭さんと結婚し皇籍を離脱。
  • 東京、埼玉で震度5強の地震発生。
  • 熊本の阿蘇山が噴火。
  • 東京都の京王線車内で男が刃物で乗客を切り付ける事件が発生。17人刺傷。
11月
  • 市医、江頭啓介会員(城南区)、「旭日双光章」受章。
  • 市医、古川洸会員(博多区)、「瑞宝双光章」受章。
  • 「第121回九州医師会連合会総会・医学会」をハイブリット方式(会場参加+Web)で開催(担当:沖縄県医師会)
  • イギリス、米メルク社などが開発した新型コロナウイルスの経口薬「モルヌピラビル」を承認。軽症者向け経口薬の承認は世界初。
  • 衆院選の結果を受け、第2次岸田内閣が発足。
  • 厚労省、オンライン診療を初診から認める指針の改定案を大筋で了承。
  • 厚労省、子宮頸がんワクチン接種の積極勧奨を8年ぶりに再開することを決定。
  • 国立がん研究センター、2020年のがん診断登録数が前年より約6万件減少したと発表。
  • 厚労省、「令和元年度国民医療費の概況」を公表。前年度比9,946億円増の44兆3,895億円。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で2億5,000万人超。
  • WHO、南アフリカで検出の変異株を「懸念される変異株」に指定、オミクロン株と命名。
  • オミクロン株が国内で初確認。
  • 米中首脳、オンライン形式で初会談。
  • 政府、世界的な原油価格の高騰を受け、石油の国家備蓄の余剰分を初めて市場に放出。
  • 金融庁、今年8回のシステム障害を起こしたみずほ銀行に2度目の業務改善命令を出す。
  • 将棋の藤井聡太氏、史上最年少で四冠達成。
  • 野球の大谷翔平選手、大リーグMVPを満票で受賞。
  • 前福岡県知事の小川洋氏が死去。
12月
  • 日医、日本歯科医師会と日本薬剤師会の三師会で厚労省に令和4年度診療報酬のプラス改定を要望。
  • 医療従事者を対象に新型コロナワクチンの追加(3回目)接種が国内で開始。
  • 岸田首相、新型コロナワクチンの3回目接種をできる限り前倒しする方針を表明。
  • 令和4年度診療報酬改定、病院看護師の処遇改善と不妊治療の保険適用で報酬本体の改定率が微増となる見込み。
  • 新型コロナウイルス感染者が世界で2億7,000万人超、死者が550万人超。国内では感染者170万人超、死者1万8,000人超。
  • 今年の漢字は「金」に決定。
  • 今年の新語・流行語大賞は「リアル二刀流/ショータイム」に決定。
  • アメリカで史上最大規模の竜巻発生。死者100人超。
  • 真珠湾攻撃から80年を迎える。
  • 日本人初の民間人宇宙飛行士として実業家の前澤友作氏が国際宇宙ステーションへ渡航。

※ゴシック表記は福岡市医師会関係

※寺坂禮治会員の「禮」は実際には「ネ」(しめすへん)に「豊」になります。

医療情報室の目

 この一年の中で、新型コロナウイルスの新たな変異株が出現するたびに、感染拡大の波が国内外で繰り返し発生した。現在、国外では感染が再拡大している地域があり、南アフリカで検出された新たな変異株「オミクロン株」とともに、国内では「第6波」の到来に警戒を強めている。変異株の感染動向をいち早く察知するため、政府はこれまでにない徹底した水際対策を実施しているが、同時に、「第6波」が起きても病床の逼迫を防ぎ、自宅療養者の急増にも対応しうる医療提供体制の整備が各地で進められている。また、新型コロナワクチンの三回目接種と併せて、感染対策の有効な手段である経口治療薬の開発や承認申請も進んでおり、来たる年には新型コロナウイルスとの共存(ウィズコロナ)の世界により一層近づくことが考えられる。
 令和4年度は診療報酬改定が予定されており、新型コロナウイルスの本格的な感染拡大後、初めての改定となる。厚労省による第23回医療経済実態調査の結果から、新型コロナウイルス感染症への対応で医療機関の経営は大きな打撃を受けており、臨時的な対応であった診療報酬の一部手当や新型コロナウイルス関連の各種補助金等により、何とか収支を保った状態であることから、日本医師会を始めとする医療関係団体は診療報酬のプラス改定を要望している。しかしながら、財務省は補助金等を含めた収支結果を根拠に、増加する医療費抑制のため、マイナス改定実施への圧力を強めており、地域の医療提供体制維持のためには現場の実情に理解を求め、診療報酬での適切な措置が不可欠であり、プラス改定の実現は日本医師会の中川会長の双肩にかかっており、大きな期待が寄せられている。


編集
福岡市医師会:担当理事 立元 貴(情報企画担当)・牟田浩実(広報担当)・江口 徹(地域医療担当)
※ご質問やお知りになりたい情報(テーマ)がありましたら医療情報室までご連絡ください。

(事務局担当 情報企画課 上杉)