6歳から柔道を始め、シドニーオリンピックでは初出場ながらも銅メダリストに。
その後も数々の大会で素晴らしい成績を残されました。2005年の1月に現役引

退を発表し、10月にご結婚されたばかりです。


【日下部 基栄んプロフィール】
 1978年 福岡県生まれ。
 1998年 アジア大会3位、ハンガリー国際
     大会優勝。
 1999 福岡県警柔道部所属
 2000 シドニーオリンピック3位(銅メ
     ダリスト)、アジア選手権優勝。
     福岡女子国際大会優勝。
 2001年 フランス国際大会優勝、世界選手
     ミュンヘン大会3位。
 2002 フランス国際大会優勝、福岡女子
     国際大会優勝、アジア大会準優勝。
 2003 アジア選手権優勝。
 2004 アテネオリンピックに左膝靱帯の
     故障を押して代表出場するも3回
     戦で敗退。
 2005年 1月17日現役引退を表明、3月福岡
     県警退職。


柔道を始められたきっかけは何でしょうか。
  私の父は警察官なのですが、警察の機動隊の中に東福岡柔道教室という少年柔道
教室がありました。そこで兄が柔道をしていましたので、見に行っていました。小
さな女の子が男の子をどんどん投げ飛ばしていて、「かっこいい!私も柔道がした
い」と思っていたんです。でも、両親は大反対でした。実は当時、私はすごく病弱
だったんです。ネフローゼ症候群で、幼稚園もほとんど行けずに、1年間ほど入院
していました。腎臓が悪くて、小さい時から入退院を繰り返していて、学校に歩い
て行くのもだめだと言われていたくらいの病状でした。ですから、「柔道なんても
ってのほか」と反対されました。ただ、あまりにも私がやりたいと訴え続けるので、
「それなら、遊び程度でやらせておこう」ということになりました。ちなみに、私
が少年柔道教室で柔道を初めて見た時に、男の子を投げ飛ばしていた小さな女の子
というのが、後で考えたら、今の谷亮子先輩なんです。

実際に柔道を始められて、どうでしたでしょうか。

 小学校1年生の時に始めたのですが、初めて出た大会で
いきなり優勝したんです。当時は男の子を泣かすことが生
きがいの悪ガキでした(笑)。そして、柔道を始めてから、
いつのまにか腎臓病が治ったんです。ですから、両親も柔
道をすることを喜んでくれて。治ったといっても、この先
また悪くなるかもしれないという不安はありましたが、「
まあ元気そうだから」ということで、最初は「柔道には行
かなくていいよ」と言っていたのが、「毎日行きなさい」
とコロっと変わって、無理やりにでも行かされるようにな
ってしまいました(笑)。

オリンピックでメダルをとった時のお気持ちは。
 正直、初出場でオリンピックの重みというものを分かっていませんでした。シド
ニーの時は全くの無名で、『日下部基栄 メダル取れる確率2%』って書かれてい
たくらい(笑)。誰も私に期待していませんでしたから、プレッシャーもなく普通の
試合の感覚で望めました。先輩の谷選手がやはり注目されていて、私が出ているか
出てないかもみんな知らなかったのではないかと思います(笑)。ですから、楽しん
で柔道をすることができました。


帰国されてからの、メダルの重みというものはあったのでしょうか。
  帰国してみると、思ってもみなかったほど注目されていて、オリンピックの影響やメ
ダルの重みというものをすごく感じました。それから苦しくなってしまったんです。な
ぜか心から楽しんで柔道ができなくなりました。今思えば、
プレッシャーが出てきたんですよね。その時は、それがプ
レッシャーだということすら気づきませんでしたが。さら
に膝の故障も悪化して、状況は悪くなっていきました。 
 
膝の故障はシドニーオリンピック以前からだったの  
 ですか。
 シドニーオリンピックのちょうど1年前に左膝の前十字
靱帯を切ってしまいました。靱帯をつなぐ手術をしてしま
うと、まるまる1年柔道ができないんですね。そうすると
シドニーオリンピックに間に合わないので、途中手術とい
う応急処置で靱帯を糸で引っ張ってボタンでとめていたんです。その状態でシドニーオ
リンピックに出場しました。その後、ちゃんとつなぎ止める手術をしておけば違ってい
たのかもしれませんが、次々と試合が来ますし、やはり日本のトップを守りたいという
気持ちもあって、休みたくありませんでした。ですから、アテネオリンピックまで靱帯
が切れたままで柔道を続けていました。何回もひねってしまって、痛いっていう声が出
ないくらい痛いんです。相手と戦う前にけがとの戦いでエネルギーを使ってしまってい
ました。アテネオリンピックも出場できないと思っていたのですが、結局選んでいただ
きました。結果、無様な試合をしてしまいましたが。引退後、左膝の手術をしました。
今後は、いつか柔道教室を開いて、柔道の素晴らしさを子どもたちに伝えていくのが夢
です。

日下部さんの健康法を教えてください。  
 とにかく寝ることです。「よくそんなに眠れるね」って言われ
るほど寝ます。週に1回は丸1日寝たりも(笑)。ストレスがたまっ
た時は、ひたすら寝たり、温泉に行ったり、友だちと食事にいっ
て盛り上がったり。そして、「また明日から頑張ろう」と、気持
ちを新たにします。ストレスをためないことが、私にとっての健
康の秘訣なのではないかと思います。