今回は日本医師会の新会長、植松治雄さんに、地域医療における医師会
の役割や、ご自身の健康法についてお聞きしました。
            (聞き手・・・福岡市医師会会長 樋口 正士)

植松 治雄んプロフィール】
 昭和6年8月8日 大阪生まれ
 昭和30年3月  大阪大学医学部卒業
 昭和40年7月  大阪市南区にて診療所
          開設
 昭和45年1月  堺市中百舌鳥町に植松
          医院を開設
 昭和59年4月  堺市医師会会長就任
 平成 2年4月  大阪府医師会会長就任
 平成 9年7月  厚生省医療審議会委員
 平成16年4月  日本医師会会長就任
 
 
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福岡市医師会会長 樋口正士  日本医師会会長 植松治雄さん

地域医療の中心にいる医師会に
  
福岡市医師会では市民向けの情報誌「はーとふるふくおか」を制作していますが
 、大阪府では日曜日の朝、健康情報番組「げんき情報局」という番組を流してお
 られるそうですね。また日本医師会では短波放送で全国民に情報の公開をされて
 います。このような医師会の広報活動について、お伺いできますか?

 大阪の番組は数分くらいの非常に短い番組なんですね。しかし、この番組の前に人気

コメンテーターの報道番組があるので、非常に視聴率が高く、いい広報になっていると
思います。

 番組の中では、色々な病気のお話をするわけですが、それ以上に「医師会」という名

前を市民に知ってほしいのです。
 
医師会では、公衆衛生事業として、学校検診、ミニドックや、各種がん検診など
 の活動を始め、急患診療(いまは三百六十五日の平日夜間・休祝日)、看護師養
 成の為の専門学校の運営などの活動を行っていますが、市民の方々がよくご存じ
 ないのですね。
 市民の方々は母子保健、学校保健、それから成人病検診、予防接種は、行政がやって
いると思っておられるんですね。行政サービスだと思っている。しかし、実際、これら
は医師会の協力のもとで行われているんです。そのことを、市民のみなさんにもっと知
っていただきたい。
 
医師会員は、開業医や勤務医の仕事だけでなく、多くのボランティアを行ってい
 るわけですが、市民の方々にもう少し認識してもらうためにPRに努力しなけれ
 ばなりませんね。
 今まではそんなものは、我々仕事として当然ということでやっ   
ていたのです。しかし、「医師会」というものをもっと認識して 
もらおうということと、より広報というか、実際行っている事業 
のことを伝えなくてはと思っています。 
 世の中に健康な人が8割いて、病気だったり要介護だったりの 
人が2割いて、どうしても医師会が行っていることは、健康でな 
い人ばかりを対象にしている。しかし、これからは医師会という 
ものを世間に認めていただこうと思うと、健康な人に対してどう
いうことができるか、あるいは健康増進のために何ができるか、
もっと広く言えば環境問題にもどう取り組むかというようなことなど、健康な人にどう 
発信して、どうアプローチできるかというものがなければならない。わたしたちが、い
わゆる弱者の方だけをみているのが当然というような態度では、医師会というものは世
の中で通用しないと思うんです。 
 
そうですね。我々医療人は健康ではない方々だけでなく、健康増進といった予防
 的なものもやっていたんです。しかし、もう少し視野を広げないといけませんね
 そうしないと、大部分の人は自分は健康で心配ないように思っているのですが、ある
日突然健康を害すと、医療保険や制度は大事なんだと思う。それまではそういうことは
思わないから、年金だけは多い方がいいなんていう話になってしまうわけです。
 そうならないためにも、地域での地道な活動で、市民と一緒に何かをやっていくとい
うことであれば、私たちの話を健康な人にも聞いていただけるということになってくる
と思うんです。
 例えば、各地域において、住民一人ひとりが「かかりつけ医」を持ち、医療のアドバ
イザーとして、生活面にまで及ぶ相談にも乗れるように使っていただく、そのような流
れを作る手助けもできればいいのではないかと思います。

健康へのかかわりは率先して 
  
現在、日本医師会では禁煙運動を推進なさっておりますが、福岡でも禁煙運動を
 拡大しています。会長は耳鼻科の先生でございますので、禁煙運動につきまして
 も一言お願いします。
 禁煙運動というのは、いま定着しつつありますね。全国どこの医師会でも、医師会の
建物を禁煙にしておられないところは、ほとんど無くなったでしょうね。こういうこと
を通じて医師会の健康への関わりというのが国民に広がっていくことは非常に大事なこ
とでしょうね。
 
医者の不養生などといいますが、ご自身の健康法は 
 何かございますか? 
 毎日バタバタしておりますが、一番はストレスを忘れて  
というか、ストレスを感じないということがいいんではな  
いでしょうか。唯一趣味といえば、三百点満点を何回も出  

したことのあるボウリングでしたが、最近は、全然やっていません。それもストレスをためないのにはちょうどいいのですが。 


ストレスをストレスとして感じないことですね。今日は本当にありがとうござい
 ました。


 大阪市出身の植松治雄さんは、戦後間もない旧制中学の頃、飢えや病気で死んでいく

人を見て「人々の健康を守りたい」と医師を志しました。そして、現在は「だれもが平
等に受けられる医療が大切」と訴えておられます。